phase1 目覚め
どうして..
もう嫌だよ...
こんなの、辛過ぎるよ...
私は、もう...
あなたを忘れたいのに...
もう、あなたと関わりたくなんてないのに...
ねぇ、宗馬?私たち、どうしてまた、愛し合っちゃったのかな?
『あなたは必ず、今の私を好きになる』
「あ...」
朝日に、目が覚めた
ぼんやりしたまま手元の時計を見ると、時間は6時半を指している
...いつもの時間よりも大分早い
このまま用意して出れば、余裕で1時間以上の余裕を残して登校できるくらいの時間だ
まったく、何でこんなに朝早くに...
「って、あ~、そっか。カーテン閉めなかったんだっけ...」
窓の方を見やると、そこには開いたままのカーテンと、その奥の明るい日差し
外ではいつものように、朝のスズメが高く短い声でさえずっている
さわやかな朝と言えない事もないが、その眩しい光のせいでこちとらかなりの睡眠不足に陥っている
受験勉強中なのだからそれくらい当然なのだが、朝の貴重な睡眠時間を潰されたような心持になってしまい、正直気分は悪かった
改めて布団の中に入ればいいのかもしれないが、それもまた今更感があって悔しい
「でも、う~ん、なんだろうな...それとは別に、何かちょっとダルい気がする...」
でもまぁ、それは完全に自業自得か
というのも昨日は、勉強したままの体勢で、つい机に突っ伏して落ちてしまったのだ
おかげで節々が硬くて仕方がない
ああ、でも昨日歩美の奴に、強引に買い物につき合わされたのもあるかもしれない
まぁ、それについては、後で文句を言っておくことにしよう
「...それに、夢見も悪かったような気がする...」
どんな夢だったかは忘れたが、どうせまた悪夢だったのだろう
人の見る夢の、その殆どが悪夢だと言うし
その夢と体のダルさとが関係あるかは知らないが、とにかく気分は良くない
「はぁ、とにかく飯だ飯。せっかく起きたんだから、さっさと作っちまおう」
そう自分に言い聞かせるように、俺はイスから腰を上げる
こういう時は、むしろ体を動かしていたほうが楽になるものだ
カタン、とイスの脚がフローリングを叩く音と共に、俺は今日、初めての一歩を踏み出した
「あ~、何にしようか。米...は昨日食っちまったな...ちっ、じゃあトーストか...」
こういう時、誰かが飯を作ってくれたらいいのに、なんて妄想をしたくなる
両親なんてものがいないから、これまた当然なのだがやはり一々面倒臭い
こんなことを言うと、歩美の奴がいつも以上にやかましくなるかもしれないが、朝くらいは別にいいだろう
まぁ、どちらにせよ、朝飯を食わないことには昼まで持ちそうにないことは、この体が嫌味に腹を鳴らして教えてくれている
だったら、さっさと用意してしまおう
「トースト2枚にスクランブル。ツナとトマトとレタスのサラダ、あ~、ついでだからコーヒーを豆から入れるか...」
そんなことを一人ごち、すぐ側にある、整頓されたシステムキッチンに足を踏み入れて、そのコンロにボッと青い色の火をつけた