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エピローグ さよならの後に


出てくる人によって、時間が前後します。ご了承下さい。


―――――


 私、友坂美琴。塾の秋コースも終わり、受験勉強に集中している。我が家の雰囲気は最悪な状況になっているけど、私が大学に入学するまでは持って欲しいものだ。


 でもお父さんとお母さん、二人の仲が悪い分、二人共私には今迄以上に優しくしてくれている。


 お母さんは、チラチラとお父さんとの別れ話をちらつかせて、一緒に住もうなんて言って来るけど、この人に新しい男が見え隠れしている。


冗談じゃない。一緒について行っても碌な事が無いに決まっている。こんな人じゃなかったのに。


 お父さんは、浮気こそしていないが、昔からの職人気質の所為か、仕事以外何も見えない様だ。家庭より仕事を優先している。



 もうすぐ受験、私は地方の国立に行くつもり。勿論学費は払って貰うけど、バイトして自立する。それまでは、二人に良い子の顔をしてよう。


 裕也と一緒に居ればなんて事はもう思っていない。あの人は別に世界に行ってしまったと思っている。当分恋愛はいい。

 学校の男子が五月蠅くて仕方ない。あんた達の受験生だろうが言いたくなる。


 


 俺、金丸真司。親父が友坂さんへの融資が中止になった事で、何故かがっかりしていた。俺から見ると仕事の方は順調にしか見えないけど。


 面倒なのは、俺に付きまとっている女達だ。俺は友坂さんから振られて以来、本当に人を好きになるという形を間違えていたと気が付いた。


 俺だって真っ当な高校生男子だ。女性にだって興味ある。それを得る為に家の金を使っていたが、美琴さんに散々教えられた。


 それ以来、俺の家の財産を狙って来る様な女は、付き合う事を止めた。散々言うだけ言われたけど、そんな事は知った事では無い。


 そう言えば、ここ筑和大付属でも美人の誉れ高い鷹司理香子が突然四月に転校した。何処へ行ったのかなんて知らないけど、あんな高ピーな女何処に行っても通用しないだろう。


 美琴さんから振られて以来、付き合っていた女を整理して、勉強に打ち込んでいる。親父の家業を継ぐためには、法律の勉強をしなくてはいけないと今更ながらに分かったからだ。成績は元々悪い方ではない。何とかなるだろう。


 だからという訳では無いが、余計女子達が群がる様になった。面倒くさくて仕方ない。でもこんな俺を見て親父が嬉しいそうな顔に変わって来た。母親は相変わらずの馬鹿だけど。




 私、鷹司理香子。裕也さんから家の支援を引き換えに彼に近付かない事を約束させられた。


 お父様に話したら、結果が出ればいい。後は好きなようにしろと言われた。一体私をどう持っているんだろう。


家の道具にしかすぎないか。でも最初は私もそれでいいと思った。裕也さんを知るまでは。


 男なんかどれも同じだと思っていたのに。だからこそ、彼との関係を持ちたかった。高校生だけど彼の子供なら産んでもいいとまで思った。でもそれは全く出来ない夢物語で終わった。


 それ以来、私は、教室の中で彼を見ているだけ。何も話す事が出来ない。お昼も彼とは別々で食べている。周りの生徒がウザくて仕方ないけど、無視を決めている。


 もうすぐ、受験だ。都内の国立大に行きたかったけど、彼と藤原佳織は間違いなく同じ大学同じ学部になるはず。


 大学まで行ってもあの二人と顔を合わすなってまっぴらごめんだ。私は母方の実家である関西の国立大学に行く事にした。そうすればこの胸にしまってある思いもこれ以上汚れずに済む。



 


 俺と佳織さんは、目の前に迫った大学受験で一生懸命になっている。正月の挨拶もそこそこに二人で正月特訓にもでた。美琴も出ていたけど、お互いに完全に他人の様だ。


 もし、美琴があんな事をしなかったらどうなっていたんだろう。俺は本当に佳織さんを選んでいたんだろうか。


 でも、そんな優柔不断な俺だったから美琴が我慢いや見限ったのかも知れない。あの時、家の事なんか気にせずに美琴だけを選んでいたら、今いる俺の周りの景色も随分違っていたんだろうな。


 でもそんなタラレバなんて何も意味をなさない。あの時の失敗を二度と繰り返さない為にも俺はお母さんと佳織さんを幸せにする。


「ふふっ、やっと私も入れて貰えましたね」

「えっ?もう読まないで下さい」

「読んでいませんよ。裕也さんの心の声が私の頭の中にコピーされてくるんです。運命ですから」

「そんな事言うと、えい!」

「きゃっ!」


 俺は佳織さんをベッドの押し付けてキスをした。もう慣れっこになってしまった。


「これだけは読めないみたいですね」

「ふふっ、読みたくありません。だって…。好きな人からは自由にされたいんです」



 大学は佳織さんと同じ都内の国立大学に合格した。美琴はともかく、鷹司さんはここに入学すると思っていたけど、来なかった。


 佳織さんに聞いた所、彼女は関西の国立大学に行ったらしい。俺が最後に引導を渡した時の顔は今でも忘れられない。でも仕方ない事だ。


 面白い事に同じ学部に金丸真司が入学して来た。最初のイメージしかなかった俺は、まるで別人を見ている感覚だ。


 イケメンで真面目で勉強一筋、成績も優秀らしい。だから相当にもてたが、全員相手にしていない。あの時勘違いしなければ、なんて勝手な思いが今更ながら出てくる。


 美琴は縦山国立に行ったと風の噂で聞いている。新しい幸せな人生を歩んで欲しいものだ。


 上野と小山内は都内も公立大学に一緒に入学したらしい。あれだけ仲が良いのに付き合っていないなんて本当だろうか。


 俺の事は、二学期の終り位に一通りの事を話した。とても驚いていたけど、二人から言われた言葉が、


「まあ、頑張れや。俺達は気楽に生きるから」

 と言っていた。そこでふと思った。俺達?やっぱり付き合っているんじゃないのか?





 それから二年の歳月が過ぎ、俺は中務祐也となった。だけど住まいは今のまま、中務の家に入るのは大学を卒業後だ。


 そしてそれから更に二年後、佳織さんが二十二才になった時、中務家に養女として迎いいれられた。その翌日、正式に結婚し、俺の妻となった。


 式は本当に身内だけ。藤原家の両親と佳織さんの兄と姉。中務のお爺ちゃん、お婆ちゃん。それにお母さんの兄、葛城家の統領だ。

 式が一通り終わった後、正式に俺は中務家の次期当主となる事が決まった。



 それから少ししてお爺ちゃんに我儘を言って鷹司の家の状況を調べた。まだいくつかの事業は展開していたが、相当に酷い状況に陥っていた。


 中務の傘下で事業コンサルティングをしている人達と立て直しを検討した結果、不採算部門の売却、事業打ち切りと得意分野への集中投資をすれば今後数年で持ち直す事が出来ると判断した。


 その事業立て直しプランを持って鷹司の統領、理香子さんのお父さんにアポを取って会いに行き、こちら側のプランを示した。

 最初は難色を示していたが、何回かの打合せの後、合意に持って行く事が出来た。


 合意書の調印の時、何故か理香子さんが居た。一段と美しさを増して、以前の様な雰囲気は無くなっていた。


 だが、俺を見る眼差しだけは過去を見ている気がした。俺はあくまで仕事で来ただけなので、言葉も交わす事なかったが、彼女は何か話したかったようだ。


 後の話だが、美琴は縦山国大を卒業して、一人で暮らしているらしい。


 何も思う事はない筈なのに…もう昔の話なのに。過ぎた事は仕方ないのに…。何故、彼女の事を今更ながら思うのか。そんな事分かり切っているのに。


幸せな人生を過ごして欲しいものだ。何で今更美琴の事を言ったのかって。それは…。いいじゃないですか。



 更に二年経って佳織さんは可愛い男の子を産んでくれた、これにはお爺ちゃん、お婆ちゃんだけでなく藤原のお義父も大変喜んでくれた。


 その後も男子二人を産んで、これで中務、葛城、藤原の家は安泰となったが、佳織本人が、どうしても女の子が欲しいと言って、仕事の合間をぬっては、…努力させられている。栄養剤飲もうかな。





 おわり。


――――― 

この作品を最後まで読んで頂いた読者の皆様、本当にありがとうございました。


如何でしたでしょうか。

恋愛と家を題材にした作品でした。

最初は友坂美琴との関係から、祐也の運命を左右した家問題に発展しました。

題名と違ってはいないのですが、話としては大分広いと感じられた読者様もいらっしゃると思います。あらすじをもっと先が見える様にした方がいいと思いました。

これで一応当初の設定をクリアした感じです。

この作品、私のチャレンジ第二作でもあるので、色々なご意見を頂きましたが、なるほどという思いと共にとても感謝しています。今後作品製作に役立てたいと思います。


最後までお読み頂き、面白かったとか、なにこれとか、まあいいんじゃないと思われた方、ぜひフォローとご評価★★★★★を頂けると嬉しいです。


これからも宜しくお願いします。


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