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高校生最後のプールも賑やかです


 今日は八月三日、プールに行く日だ。俺の家の最寄り駅から一時間は掛かる埼玉県にある遊園地に併設されているプールだ。もろオンシーズンなので混んでいるのは覚悟している。


 今午前七時半。この時間でもう日差しが暑い。佳織さんが午前八時前には、来ると言っていたでの早めに来ている。

 

 駅に着いて、まだ来ていないので、ほっとして駅構内にあるベンチで日差しを避けていると駅のロータリーの一般車が乗降出来る位置に大きな黒い車が停まった。ドアを開けて出て来たのは佳織さんだ。


 俺はすぐに駅から出てそこに行くと

「おはようございます。裕也さん」

「おはよう、佳織さん」


 今日は長い艶やかな髪はそのままに彼女は白をベースとして花柄のワンピースに小さなひさしの付いた帽子、それにオレンジ色のかかと付サンダルだ。


 肩から大きなバッグを掛けているので

「バッグ俺が持ちますよ」

「ありがとうございます」


 俺はそれを受け取って肩に掛けると二人で改札に向かった。それを見ていたのか、黒い車がロータリーを出て行った。


 まだ朝早い所為か、電車は空いていた。

「俺がそちらに行った方が良かったみたいですね。こんなに朝早く来て貰って」

「そんな事は無いです。こうして祐也さんと一緒に居れるのですから」


「上野達とは、午前九時半に遊園地のチケット売り場前で待ち合わせているから大分早く着くかもしれない」

「待っていればいいだけです」


 去年のプールの時の事を話したりしていると、あっという間に遊園地の最寄り駅についた。そこから五分も掛からない。


 二人でそこに歩いて行くとまだ上野も小山内も来ていなかった。まだ待ち合わせ迄三十分ある。

「ちょっと早すぎたかな」

「いいではないですか」

 それだけ祐也さんと二人だけで居れる時間が長いです。



 十分位して上野がやって来た。

「早すぎると思ったんだけど葛城が先だったか」

「上野さん、お久し振りです」

「えっ、あっ、お久し振りです、藤原さん」


 上野が俺のTシャツの裾を引っ張って、

「葛城、これって?」

「はい、私は祐也さんとお付き合させて頂いています」

「えっ、葛城、ほんと?」

「ああ、佳織さんとは付き合っている」

「ふうん。去年、葛城に積極的だったから、どうなのかなと思っていたんだけど、やっぱりそうか」

「まあな」

「後で色々教えてくれ」

「構わないよ。今日教えるつもりで居たから」

 えっ、祐也さん、私の事をお友達に正式に紹介してくれる。嬉しいです。


 更に、十分して小山内がやって来た。

「みんな早いね」

「琴吹、お久し振りです」

「佳織、久しぶり。その雰囲気だと上手くいったんだ」

「はい、百パーセントでは無いですが」

「どういう意味?」

「まあ、それは後で、取敢えずチケット買おうぜ」

「そうだな」



 四人で一塊になってカウンタでプールの入場券を買った。ゲートはもう開いているので、そのまま四人で入り、右に曲がってプールの施設のゲートをくぐって中に入った。


「更衣室で着替えたら、ここで待合せな」

「「はい」」



 ふふっ、やはりここでしたか。裕也さんの家の最寄り駅から郊外のプールがある所を探せば簡単に見つかった。まさか区のプールで四人で競泳する訳でもないでしょうから

ここしかない。


 少し待ちましたが、予想通り来てくれました。後は偶然を装うって合流するのみ。



 俺と上野は、更衣室で着替えながら

「葛城、藤原さんとの馴れ初め、教えてくれ」

「まあ、色々長いんだが、簡単に言うと彼女と何回か会っている内に気が合って付き合いだしたってとこだ」

「偉く端折ったな」

「細かい所は昼の時にでも話すよ」

「そうか、楽しみにしている」


 男の準備なんて簡単だ。この程度の会話だけで着替えが済んだ。後は貴重品を防水バッグに入れるだけだ。


 二人で更衣室の外に出て待って十五分。やはり女性は着替えに時間が掛かる。更衣室から出て来た佳織さんは、長い髪の毛は小さくまとめ、去年とは少し違って白の生地に紫の花が描かれている水着でパレオを腰に巻いている。そして手にはラッシュガードだ。


 小山内もオレンジのセパレーツとビキニの間位の大きさの水着で手にはラッシュガードを持っている。


 周りの男性だけでなく、女性も注目している。

「祐也さん、どうですか今年の水着は?」

「とっても素敵です」

「ふふっ、葛城君、聞いたわよ。夏の宿題も一緒にやったんですって」

「いや、まあ。佳織さんそんな事まで話したんですか」

「いけませんでしたか」

「おい、葛城、どこまで進んでいるかしっかり教えてくれよ」

「ははは、ま、まあな」


「それでは行きましょうか。何処に座りましょう」

「あそこは?」

「監視台から近い方が良いんじゃないか」

「では、あそこしかないですね」


 監視台の真下だ。


「流石にそこは?」

「では祐也さん決めて下さい」

「じゃあ、あそこで」

「上野君が言った所と同じじゃない」

「じゃあ、そういう事で」



 監視だから離れているとはいえ、五十メートル位だ。大分端だけど。そこにシートを敷いて、みんなの荷物を置いて準備体操を始めた。


 簡単に準備体操を終えてからプールに入ろうとしたところで

「祐也さん」


 声の方を向くとなんと鷹司さんがいた。どうしてここに?

「偶然ですね。私も一緒に居たいのですが」

「鷹司理香子さん、お久し振りですね」

「藤原佳織…。ふふっ、久しぶりね」


「祐也さんは私達と一緒なのです。邪魔しないで下さい」

「邪魔はしないわ。でも傍に居てもいいでしょう。ねっ、葛城君」

「鷹司さん、良くここが分かりましたね」

「偶然です。葛城さんと私は運命で結ばれていますから」

「何ですって!」


「ちょっ、ちょっと二人共。ここでそんな事で言い争わないで下さい。周りの注目の的です」

 佳織さんや小山内さんの二人だけでも目立つのに鷹司さんの容姿は人目を引く。


 肩までの髪の毛を小さくまとめて、ビキニに近い赤の水着だ。大きな胸と括れた腰、大きすぎないお尻とその美しいだ。


 こんな人まで加わったら、後が大変になる。…けど、一人で来たのかな?


「鷹司さんは一人で来たのですか」

「はい、偶々です」

「そうですか。上野、小山内どうする?」

「鷹司さんの無謀さには恐れ入ったけど…。偶々会っただけの様だし。一応同じクラスの人だからな」

「そうね。佳織が良いなら私も良いわ」

「私は反対です。最初から一人で来たんです。他の場所で一人で楽しんでください」

 

 佳織さんは鷹司さんの意図が分かっているだけに俺に近寄らせたくないんだろう。しかし、この人がここに何の理由も無く来るとは思えない。


 でもなぁ、同じクラスだし。一人だけにするのは、確かに彼女の容姿を見れば、不安だ。仕方ない。


「鷹司さん、傍に居るのは構いませんが、学校と同じ様に俺に意図的に接して来ないで下さい。それを守れるなら傍に居てもいいです。これでいいか上野、小山内」

「俺は構わない」

「私もそれでいいんだけど」


 佳織さんの鷹司さんを見る目が相当にきつい。


「佳織さん、鷹司さんは俺達と同じのクラスの人だ。偶然とはいえ、一人で他の場所に座って貰うのは気が引ける。今の条件で傍に居させてやってくれ」

「祐也さんがそれで宜しいと言うのであれば」

「鷹司さん、そういう訳だ」

「ありがとうございます。葛城君、上野君、小山内さん、…藤原さん」


 俺達は、この状況で流れるプールに入った。


――――― 

プールでの出来事は次話で。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひフォローとご評価★★★★★を頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします。





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