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俺に声を掛けて来る人


 私、鷹司理香子。三月までは、筑和大付属高校に通っていた。二年の時、金丸と言うお馬鹿な男が、校内で二人の女子と付き合っているくせに、他の高校の女子とも付き合い始めたと、彼の仲間に自慢していた。


 名前は友坂美琴という。初めは全く興味のない話だった。だけど、少ししてその友坂と付き合っているその高校の男子の名前が葛城祐也だと知った。



 父からは、中務の家となんとか縁戚筋になりたいが伝手がない。藤原家は自分の娘を養女に出す事で中務家と縁戚を持つ考えで既に話が進められているという。


 だから、今更私を中務の養女にという話を持ち出しても意味がないが、中務家には今子供がいない。養女と言うからには養子を迎えるはずと言っていた。


 中務家は男子が一人いて結婚し、一人の男子を生んだが事故に遭い死亡、その後その妻は元の家の姓に戻ったと聞いている。その名前は葛城。


 だがその女性は、いっさいの縁戚から消息を絶って、実家である葛城家、元夫の中務家とも疎遠にしている。


 中務家が、養女の相手に迎えるのは、間違いなくその女性の子。その子が成人し、中務の養子となり藤原の娘と縁を結ぶ前に、なんとかその男子と関係を持てば、我が鷹司家の復興が約束される。と父から聞いていた。しかし行方が分からないという。


 だから、私は、直ぐに父にこの事を話し、調べて貰った。名前は祐也、葛城祐也、その母は葛城家の人間、その元夫は中務家の一人息子。間違いなかった。そして高校は都立巻島高校、ここ筑和大付属から見れば十近く偏差値が低い高校だ。



 だけど、父に私がその高校に転校して、葛城祐也と関係を持てと命令された。はっきりって行きたくなかったけど、父の命令は絶対だ。


そして中務と葛城の血を引く、祐也とかいう男子と関係を持ち、中務と葛城そして鷹司の血を引く男子を産めば、落ち込んでいる鷹司家を再興する事が出来る。


 だから私は決断して、この都立巻島高校に転校して来た。転入試験は簡単な物だった。試験は満点で彼、葛城祐也のいる3Bに入る事が出来た。


しかし、彼と話すタイミングが無い。登校して直ぐに友人と話し込む。昼も友人達と学食で話している。放課後は直ぐに塾に行ってしまう。


 だけど近付くきっかけは中間考査に有った。案の定、葛城裕也は優秀で、私に次ぐ二位だった。容姿は普通だが、友人に優しく、いつも笑顔が絶えない男子だ。私と関係を持つ人間なら今はそれで十分だ。いずれ結婚すればいい所も一杯見つかるだろう。


 考査後に話をするきっかけは出来た。後は彼とどう落とせばいいかだけだ。次のきっかけは体育祭。丁度いい。




 中間考査結果が発表された翌日のLHR、担任の先生が

「来月六月二日は体育祭です。今日は、体育祭の実行委員と誰がどの種目に出るか決めて下さい。早速だけど実行委員をしたい人誰かいませんか?他薦でもいいですよ」


 俺は、委員とかいう役割が好きじゃない。やりたい奴が勝手にすればいいじゃないかと思っていると、なりたい奴が手を上げたりしている。まあ、好きにやってくれればいい。


 決まった実行委員が前に出ると

「皆、出たい種目有るか?」


 俺は、早めに楽な種目を選ぼうと

「はい、玉入れと綱引き」

「分かった葛城。他の人は?」


 俺の言葉に隣に座っている上野が、

「葛城、随分控えめだな」

「ああ、元々運動苦手だし」

「去年までは、リレーだって出てたし、足速かったじゃないか」

「もう、昔の話だよ。それより上野は何に出るんだ?」

「俺か、俺は…玉入れと綱引き」

「俺と同じじゃないか」


 そんな話をしていると実行委員が

「葛城、リレーが一人足りない。出てくれ。去年まで出ていたから問題ないだろう」

「えっ、いや」

「出ろよ、リレー」


 周りを見ると出ろよって顔している。仕方ないか

「分かったよ。出る」

「よし、ついでに二百も出てくれないか?」

「はぁ?なんで」

「出る奴が少なくてさ。頼むよ。葛城の足に期待しているから」


 俺は上野の顔を見ると仕方ないという顔をしている。

「分かった。でも四種目は出れないだろう」

「綱引きを辞めればいい。あれは一人いなくても何とかなる」


 丸め込まれた感じだな。


「良し、これで決まったな。明日から、種目ごとに練習するぞ」

「「「おーっ!」」」



 ふふふっ、これは上手く行きました。私は早速、放課後、葛城君が帰る前に

「葛城君。私もリレーに出るんだ。頑張ろうね」

「あっ、はい」


 何故か皆の視線が痛い。なんで鷹司さんは俺に声を掛けるんだ?



 翌日の放課後、塾に行く前の三十分位、リレーのバトンタッチの練習に参加した。校庭の端にバトンタッチの練習の為に集まった。


「葛城君、昨日聞きました。去年までリレーに出ていたそうですね。私にバントタッチを教えて下さい」

「俺でなくても…」

「いえ、上手い方に教えて貰いたいのです」

「他にも上手い奴は…」

「葛城さんで」


 なんでこの人こんなに絡んでくるんだ。仕方なくバトンの握り方や助走時の手の出し方や渡し方等を教えたのだけど…。やたら

「こうですか」


 とか言って、俺の手を掴んで来る。なんか変な感じだ。


 バトンの練習が終わって、塾に向おうとすると

「私も帰ります。駅まで一緒に行きましょう」

「………………」

 なんか嫌だな。


「葛城君は私と話すのが嫌なのですか?」

「そう言う訳じゃないですけど、昨日初めて口をそれも考査結果の話だけをした人が、急に色々話しかけて来たら、おかしいと思うでしょ」


「えっ、済みません。この学校は転校してまだ二ヶ月も経っていなくて。話す人がいなんです。だから丁度昨日話しかけられたので、その流れで色々教えて貰いたいなと思いまして」

「そうなんですか」


 そんな話をしながら駅まで来ると彼は

「俺、用事が有るんで」


 そう言って塾の方に歩き出した。今日はこの位ですね。体育祭迄のもう少し仲良くならないと。


――――― 

作品中に出てくる鷹司家は、現在の鷹司家とは全く関りが有りません。あくまで作品中の事です。ご了承お願いします。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひフォローとご評価★★★★★を頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします。




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