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藤原さんと俺の関係


 春休み、藤原さんの家に行った。目青にある大豪邸だった。俺の家と比較してだけど。


 大きな門があり、その鉄格子が内側にゆっくり開いて中に入って行く。真直ぐの道と右に曲がる道が有り、右に曲がると玄関の前には円周状の大きな車留めがあり、そこでいったん車を降りた。


 それから玄関に入ると大きなホテルのロビーの様な部屋が有った。俺がポカンと見てると

 背が高く、目が大きく、鼻ががっしりとした、眉毛の濃い男の人が現れた。傍にもう一人体格のいい人が居る。


 その人の前に藤原さん、ややこしいので佳織さんと呼ぶけど、彼女がその男の人の前に出ると


「お父様、来て頂きました。葛城祐也さんです」


 男の人がジッと俺を見た。眼光が鋭く、俺の体を射貫く様な視線で見ている。


「初めまして。葛城祐也です」

「佳織の父、藤原基輔ふじわらもとすけだ」

 この男が葛城と中務の血を引く者か。もっとがっしりとして腰が据わっている男と思っていたが。


「お父様、そんなに睨まなくても」

「いや、睨んではおらん。裕也君を良く見ているだけだ。佳織、客間に通しなさい」

「分かりました」



 佳織さんのお父さんはそのまま、戻って行った。俺は客間って言ってもとても大きい。二十畳はある様な客間だ。

「ごめんなさいね。お父様は、祐也さんが来るのを楽しみにしていたんですけど」

「ちょっと、驚いた。それにこの家大きいね」

「ここは、お客様をお迎えする建物です。私達の住居はこの後ろにある日本家屋です。後で行きましょう」

「えっ?!」


 驚いた。ここお客様用なの?



 少しして、お手伝いさんなのか、妙齢の女性が紅茶とお菓子を持って来た。その人がテーブルに置くと

顕子あきこ。後は私がやります。下がりなさい」

「はい、かしこまりました」


 その人が居なくなると

「顕子は、私の学友です。代々のお手伝い親子の娘です」

「……………」

 俺、来るところ間違えた?


「ふふっ、祐也さん、気にしないで下さい。ここは、兄と姉が継ぎます。顕子も兄と姉がいます。顕子の兄は私の兄の学友、顕子の姉は私の姉の学友です。いつも側に居ます。顕子は私が嫁いだ後は、どこかに嫁ぐでしょう。それだけの話です」


 益々、居心地が悪くなって来たぞ。

「大丈夫ですよ。私達は中務の家で暮らすのですから」


 なんか俺が佳織さんと結婚する事が前提で話をしている。


「祐也さん、良いでは無いですか。それより、紅茶をどうぞ」


 ティーポットから淹れられた香ばしい香りがカップから漂っている。


「落ち着きましたら、私のお部屋に案内しましょう」

「えっ?!」



 それから俺達は一度玄関を出て、右回りにこの建物の右側の道と言っても大型トラックが通れる位の道。

 鉄格子の門をこちらの建物の玄関に向わずに真直ぐ来ればこっちの道って事か。


 裏までと言うかどっちが表か裏か分からないけど、歩いてくると中務の家と同じくらいの家が建っていた。母屋の横にもう一軒ある。


「あれは、お手伝さんの家です。ボディガードの方は先程の建物の中に部屋が有ります。お父様は、向こうの建物で執務をされています」

「はぁ」


 話が大きすぎて全然ついていけない。


 母屋の玄関を通って、長い廊下を歩いて右に曲がり少し歩いて左に曲がった。広いの一言。


「ここが私の部屋です」


 佳織さんがドアを開けると、柔らかく優しい匂いが漂っていた。佳織さんの匂いだ。

そしてなにこれ?俺の部屋をイメージしていたのが間違いだった。どう見ても十五畳はある。

 部屋に入ると勉強机に縦二メートルはある本棚が横に四つ。左の壁には観音扉の洋服ダンスが二つ、引き出し型の洋服ダンスが二つ、更にウォーキングクローゼットの様な長い棒が並んで洋服が一杯かけられている。真ん中にローテーブルと高級そうなソファが有るけど、ベッドが無い。


「あの…」

「ふふっ、ベッドですか。それはあのドアの向こうです。お見せしても宜しいですが、その時は覚悟を決めて頂く必要が有ります。見られますか?」

「……………」

「ご遠慮なさらずとも良いのですよ」

「い、いえ」


 あの部屋は、私だけのプライベートな空間、祐也さんがあの部屋に入る時は心が決まってから。


「如何ですか、私の部屋は?」

「如何と言われても大きすぎて…」

「直ぐに慣れます」

 慣れないよ。こんな大きな部屋。


「慣れますよ。裕也さん」

 考えるのは止そう。



 それから、俺達は、四月以降の予定を決めた。場所は都度柔軟に決めるという事で。


―週二度、土曜日と日曜日は会う事。土曜日は自由だけど、日曜日は勉強に向ける事。

―GWの時は同じ塾のコースに入って一緒に勉強する事。

―双方の学校の中間考査前と学期末考査前の考査ウィークの時は会わない。

―考査結果は見せ合って、出来なかったところを二人で見直す。

―夏休みの宿題は、一緒に行う。

―夏の旅行は海と山に行く。但し仕えの者と一緒。当たり前だけど。


 これを決め終わったところで佳織さんが、

「必ずこの間に祐也さんの心を掴みます。楽しみにしていて下さい」


 と言われてしまった。なんて返せばいいのか分からず苦笑いしただけだけど。もうここまで来ると俺の気持ちでは無く既定路線みたいになっている。


 どんな方法で、佳織さんは俺の心を掴むのか知らないけど、俺はこの人にはまだ心は向いていない。あくまで家同士の関係で、今いるだけだ。



 私は祐也さんが帰った後、お父様に呼ばれた。理由は分かっている。


「佳織、葛城と中務の血を引く者と思って期待していたのだが、肝も座っていなく、心構えも無く、自分の立ち位置も分かっていない男の様だが、間違いないのか?」

「はい、既にDNA鑑定は済ませております。裕也さんで間違いありません。いずれその血が現れて来るでしょう。来なければ、現れさせるまでの事」

「その言葉楽しみにしているぞ」

「お任せ下さい。お父様」


――――― 


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひフォローとご評価★★★★★を頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします。




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