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穏やかな時間の中で動き始める事


 私、藤原佳織。今、小広間でお父様を目の前にして座っている。


「佳織、葛城の男の子とは、上手く行っているか?」

「はい、まだ三回程しか会っていませんが、私の気持ちははっきりと伝えております」

「三回か。八月の半ばに会ってからもう一ヶ月半が経つぞ。向こうの気持ちはどうなんだ?」


「はい、今あの方は友坂美琴という女性と私のどちらを選ぶか迷っております」

「友坂?あの友坂家の娘か。何故、佳織があの子と比較されなければいけない。あの家には十分な支援をした。

金丸との関係も絶った。あの子は今後生活に困る事も無い。他の男を探せばいいでは無いか」


「お父様、祐也さんと友坂さんは、長い間恋人同士でいました。そんなに簡単に友坂さんを切れるような祐也さんではありません。

まだ、私達は十六才です。高校卒業前には、彼の心の中は私だけにしてみます。お待ちください」


「そうであればいいが。葛城の血と中務の血を引く男子だ。他にはいない。必ず、佳織と結ばれ男子を生む事が重要だ。分かっているな」

「はい、心得ています。必ず祐也さんを私の夫にして見せます」

「期待しているぞ」


 お父様からの言い付けは絶対だ。友坂美琴さんを祐也さんから遠ざける事等些細な事。でもそれでは、私が友坂さんに負けたままになる。それは私の気持ちが許さない。何としても私の魅力で彼の心を掴んで見せる。


 


「祐也、今日初めての講義だったんで、ちょっと緊張しちゃった」

「初めては仕方ないさ。それより帰ってからきちんと復習と予習しておくんだぞ。特に予習は絶対だ」

「もう、分かっている。ねえ、それって一緒に出来ない?」

「無理言うな。もう午後七時過ぎだぞ。これから俺んちでやったら午後九時近くなってしまう」

「それはそうだけど。でも土日は一緒でしょ。後、もうすぐ中間考査だよね。考査ウィークは一緒に勉強しよう」

「勿論、そうするよ」



 次の日、学校に美琴と登校すると上野が声を掛けて来た。

「おはよ、葛城」

「おはよ、上野」


「なあ、随分前だけど、プールで会った藤原さんって凄い美人の子、あれ以来会った?」

「まあ、ちょっとだけ」

「えっ、ほんとかよ。やっぱりなぁ。あの時、凄く葛城に迫っていたからおかしいと思っていたんだけど。今でも続いているのか?」

「ああ、まあな」


「凄!ところで最近友坂さんともより戻した感じじゃないか。二人と付き合っているの?」

「いや、藤原さんからは、会いたいと言われた時だけ会うって感じ。こっちからは連絡しない」

「そうだよなぁ。でもいいなぁ。俺もあういう人と。痛!」

 上野が後ろからクラスの子に頭を叩かれた。


「上野君、馬鹿な事言ってないで。二人とも先生いるわよ」

「「あっ!」」


 この後、先生から思い切り注意されてしまった。上野があんな事言うからだ。




 お昼になり、私は2Aの祐也の所に直ぐに行った。勿論祐也は自分の席でお弁当を机の上に置いて待っていてくれる。


「祐也、お昼」

「おう」


 学校では、家で祐也と話している事なんて言えないから他愛無い話をする。授業の事とかだ。でもこうして居ると幸せだけど、二人共ボキャブラリが少ないのを感じる。近藤さんは、多方面に色々な話をしてくれた。あれ、なんで近藤さんの事なんて…。


「美琴?」

「あっ、ごめん」

「ご飯を口の中でもぐもぐしながら随分考えていたけど?」

「あははっ、なんでもないよ。ちょっと塾の予習厳しいなって思って」

「それ?でもしないと身につかないよ」


「おっ、二人とも仲良いな。また勉強の話か。ほんと勉強以外も興味持てよ」

「上野か、そんな余裕無いよ。今の内からやらないと」

「そうだな。勉強は葛城に任せておくか。俺は勉強と遊びの両党使いで行くよ。おっと、この位にしないと友坂さんに…、あっ、睨まれている。じゃあな」

 

 私と祐也が話している所に上野君が入り込んで来たから、睨んだら…。まあいいや。



 そして放課後になると祐也と一緒に塾に行く。午後四時から午後七時まで二教科、日によって違うけど、祐也と一緒に勉強出来る。そして私を家まで送ってくれる。もう、昔と同じだ。あれ以外は。



 木曜日、美琴を家に送った後、家についてお母さんと一緒に夕飯を食べているとスマホが鳴った。藤原さんからだ。

『葛城です』

『祐也さん、佳織です。今度の土曜日お会いしたいのですが』

『また、いきなりですか』

『だって、祐也さんの傍にいないのであなたの予定が見えないのです。では会って教えてくれますか?』


『えっ?!』

『やっぱり、祐也さんは私の事を好きでは…』

『わ、分かりました。会って教えます』

『嬉しいです。では、三子玉改札に午前十時にお待ちしております』

 ふふっ、これで祐也さんがとても身近に。


 はぁ、やられた感じだな。


「どうしたの、祐也」

「藤原さんと今度の土曜日会う事になってしまって。それに俺の予定を教えろって」

 まあ、佳織さん。流石だわ。これからどうなるか楽しみ。



 俺は、夕飯を食べ終わった後、少しゆっくりしてから部屋に戻った。美琴に話しておかないと。


 あっ、祐也からだ。

『美琴』

『俺だ。ごめん。今度の土曜日、藤原さんと会う事になった。それに俺の今後の予定を教えろと言われて』

『えっ?今後の予定。それって』

『ああ、多分、俺と会う日をあらかじめ決めるつもりだろう』

『嫌だよ。あの人に祐也を取られたくない』

『いや、取られるとかって話じゃないし。どうにでもなるよ』

『じゃあ、明日塾無いでしょ。一緒に予定考えよ。私の予定が優先だよ』

『分かった』


 どうしたものか。藤原さんの事は俺が会いたくないって言ってもお父さんの実家からも言って来るだろうし、そんな事でお母さんの立場を悪くする事でも出来ないし。取敢えず会うだけはするか。


 美琴に決めちゃおうかな。でもそうすると…あれしないといけないし。益々不味くなる。風呂でも入って考えよ。


――――― 


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひフォローとご評価★★★★★を頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします。




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