美琴との関係
俺は家に帰ると夕飯を食べながら、お母さんに今日の出来事を伝えた。
「あらっ、それはそれは。ハプニングではすまない事だわね」
佳織さんが意図的なのか本当に事故なのか分からないけど、少し面倒だわ。
「でも、俺には不可抗力だよ」
「いいわ、過ぎた事。今から元に戻す訳にもいかないし」
「祐也、美琴ちゃんとはどうなの?」
「うん、一年もあんな状況だったのに、もうあいつと会わないから全て水に流して元通り付き合ってくれというのは、流石に俺の受容キャパを超えている。
だから会いはするけど、これからだよ。また最初からとは言わないけど信頼を積み重ねて行くしかない」
「佳織さんの事はどうするの?」
「どうもこうも、今時点で俺はあの人と結婚する気なんか全くないし、そもそも俺の気持ちの中では白紙状態。
美琴と二股を掛ける気なんて、さらさらないし。美琴共もう前の関係ではないから。今は、二人共同じ位置付けだよ」
「そう、それなら美琴ちゃんと体を合わせるの止めなさい。そうしないと、美琴ちゃんがいるのに佳織ちゃんとも付き合っている様に見えるわよ」
「そ、それは……」
「美琴ちゃんと良く話しなさい」
「分かった」
俺は、夕飯を食べ終わり、少しダイニングでお母さんと一緒に居た後、お風呂に先に入った。
そして自分の部屋でゆっくりしていると美琴から連絡が有った。
『祐也、私。ねえ、明日も祐也の部屋に行っていいんだよね』
この意味はお母さんが止めろと言った事をやるという事を意味する。でも外で話せる内容じゃないし。話をするにしてもあの話をするようなところじゃないし…。俺の部屋しかないか。
『うん、いいよ。待っている』
『じゃあ、明日いつもの時間に行くね』
『分かった』
翌日は日曜日だけど、美琴は午前七時には来た。
「お母さん、おはようございます」
「おはよう、美琴ちゃん。裕也はまだ部屋だから」
「はーい」
昨日祐也に言ってあるのに。前なら美琴ちゃんにお母さんと言われてとても嬉しかったけど、一年もの間、祐也を苦しめて来た子だと思うと、何とも言えない感じになる。
このお盆に祐也を夫の実家に連れて行かなくてもあの内容からしていずれ、分かる事だったんだろう。
祐也が自分に正しい選択をしてくれるのを願うしかない。
私は、祐也の部屋のドアを開けてそっと覗いた。まだ夏真っ盛りだ。また凄い格好で寝ている。タオルケットははがれてTシャツのお腹の部分はめくれて、トランクスだけになっている。
私は、横で洋服を脱いで下着だけになると、タオルケットを祐也と私の体の上に掛けた。随分、忘れていた匂い、祐也の匂い。私だけの祐也の匂いだ。嬉しい。
少し、寝てしまった。誰かが私に髪の毛を撫でている。目をゆっくりと開けると
「美琴、目が覚めた?」
「あっ、寝ちゃったんだ」
「うん、可愛い寝顔だったよ」
「もう、祐也の馬鹿」
私は彼の胸を両手で軽く叩いた。彼はそのままにさせてくれている。そろそろ、私の背中に彼の手が伸びて行くはず。そしてまた夢の中に入っていける。
えっ、ブラを取ってくれない。彼はジッと私の顔を見ているだけだ。
「どうしたの祐也?」
「美琴」
「なに?」
心の中にさざ波が立った。
「美琴、お前は俺にとって大切な友達だ。でも友達だ。もうこういう関係は止めよう」
「どういう事。私達、もう元に戻れるんじゃないの?だから一昨日だって…してくれたんじゃないの?」
「ごめん、昨日会った藤原佳織さんの事だけど。彼女共友達の関係になった。あくまで友達の関係だ。
美琴も俺にとって大切な友達だ。だから美琴とはして、彼女とは何もしていない状況では、俺が二股かけている様にしかならない。
だから、関係がはっきりするまで美琴とこういう事をするのは止めようと思っている」
「えっ、じゃあもう抱いてくれないの?」
「そうじゃない。美琴を選んだらまたこういう事も出来るけど…」
「祐也、私を選んでくれない事も有るというの。その藤原さんとかいう人を選ぶ事も有るの?」
「そ、それは…」
「祐也、私が一年間も祐也を傷付けた事は本当に謝ります。謝って済む様な事では無いかもしれない。
でも、だからって私を捨てる様な事はしないで。私は祐也しかいないの。この体だって祐也しか知らないの。お願い。私を捨てないで。私を抱いて」
「ごめん美琴、それは出来ない」
「そんなぁ」
私は、どうすればいいの。裕也しかいない。裕也しかいないのに。どうして。
でも、私は祐也の部屋を出る気にはならなかった。もしここを出たら最後、祐也は私と会ってくれなくなるかもしれないという考えが頭の中一杯に広がったからだ。
私は、祐也のベッドの中で彼に抱きつきながら、ゆっくりと自分でブラを外した。そしてそのまま彼の体に思い切りくっ付けた。もしかしたらという気持ちが有ったから。
彼は私の体を優しく抱きよせながら、体を優しく撫でてくれた。でもそれ以上は何もしてくれなかった。
「美琴、する訳にはいかないけど、学校の登下校もお昼も土日の勉強も一緒にしよう。俺はバイトを終わらせて塾に行く事にするけど、こうしていつでも会える」
「やだ。裕也が私を抱いてくれなきゃ、やだ。安心できないの。分かって。心が安心出来ないの」
「美琴…」
結局昼過ぎまでこうしていた。そう言っている内に
グルルルル。
「あっ」
美琴のお腹が鳴った。
「美琴、お昼一緒に食べようか。俺は美琴と一緒だよ」
いつの間に泣いていたんだろう。美琴の目が涙で濡れていた。
「分かった。でも今日だけは一日こうさせていて」
「分かった」
俺だって、健全な高校男子だ。美琴の素敵な肌をずっと付けられていたらしたくなる。でもそれでは、俺が自分自身を貶めることになる。だからしてはいけなんだ。
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