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プールにはハプニングが付きもの


 俺は、上野から言われた場所に来ていた。家から一時間位掛かる埼玉の遊園地のある駅だ。


 距離が遠いので早めに出たけどやはり早くて二十分前には付いてしまった。五分位して上野が現れた。


「葛城、おはよ」

「おはよ、上野」

「小山内達はまだ来ていないようだな?」

「ああ、二十分前からいるけど、見当たらない」

「そうか、しかし小山内の奴、美人だなんて言っていたけど、どんな子なのかな?」

「さぁ?」


 そんな他愛無い話をしていると改札から小山内が出て来た。近くに飛んでも無い子がいる。


 色白で背中の中程まである艶やかな髪の毛、大きな瞳にしっかりと筋の通った鼻、プリンとした可愛い唇、それを際立たせる綺麗な輪郭。


そして大きな胸に括れた腰、大きすぎないお尻。まるでテレビの中から出て来た様なモデルのプロモーションだ。身長は小山内より少し高い。


 確かに、凄い美人を連れて来るとは言っていたけどここ迄とは。上野も開いた口が塞がらないでいる。


「二人共なんて顔しているの?」

「あっ、いや」

「小山内、凄い美人だな」

「私の親戚で、夏だからって声掛けて一緒に来た藤原佳織ふじわらかおりさん」

「藤原です。初めまして」

 緩く腰を曲げて挨拶して来た。


「……………」


「どうしたの二人共?」

「あっ、いや。初めまして上野小五郎です」

「初めまして葛城祐也です」


「じゃあ、中に入ろうか」

「うん」


 先に小山内と藤原さんが歩いているけど、後姿だけでもモデルさんって感じだ。小山内より少しだけ背が高い。小山内は百六十センチだから百六十五センチ位か。



 チケットを買って遊園地の中に入り、左に曲がってプールの方に行く。更にゲートをくぐると

「ロッカールームで着替えたらここに集合しましょう」

「「分かった」」



 俺と上野はロッカールームで着替えながら

「凄い美人とは聞いていたけど、本当に凄いな」

「ああ、俺も驚いた。タレントでもあんな人見た事ない」

「なあ、ナンパとかされないかな?」

「分からん?」



 上野と一緒に着替え終わって、ロッカールームの外で待つ事十五分。女性はやっぱり時間が掛かる。やっと出て来た…けど。


 小山内は、前から見ているから知っている。プロポーションも良くて顔も整っている。でも藤原さんは、…出て来た時、ロッカールームの前に居た男性だけでなく女性も一斉に彼女の方に視線が行った。なにこれ?


髪の毛は後ろで束ねてそのままに、白いセパレートとビキニの間位の水着、パレオを着けているけどラッシュガードは着ていない。また上野と一緒に見てしまった。


「ふふっ、佳織ってスタイル抜群でしょう。私も自信あるけどこの子には敵わないわ」

「そんな事無いですよ。琴吹も素敵」

「佳織に言われてもねぇ。さっ、この二人には、見せてあげたからラッシュガード着ようか」

「はい」


 周りの男の人がロッカールームから出て来た女性に何か言われているけど…。分かりますその気持ち。



「どの辺にしようか?」

「空いているのは、あそこは?シート敷けるだけ空いている」

「監視台から少し遠いけど良いか」

「決まった」


 四人で決めた場所に行って、サンダルを脱いで軽く柔軟体操をした。

どうしても藤原さんに目が行ってしまう。見てはいけないけどやっぱり揺れる…。視線が離れない。


「さて、取敢えず流れるプールに入りますか」

「そうですね」


 藤原さんと小山内はラッシュガードを脱いでプールに入った。小山内が泳げるのは知っていたけど、藤原さんも泳げるようだ。


 四人で適当に遊んでいると上野が、

「あれやらないか?」


 見ると定番ウォータースライダーだ。

「いいんじゃない。佳織やる?」

「勿論です」

「じゃあ、行こう」


 上野、小山内、藤原さん、俺で歩いているけど、周りからの彼女への視線が半端じゃない。後ろを歩いている俺が恥ずかしくなる。


「最初は一人ずつやるか」

「そうだな」


 五分程待って俺達の順番に。上野、小山内、藤原さん、俺の順番で二回ほど滑った後、小山内が飛んでも無い事を言いだした。


「ねえ、せっかくだから、ペアでしない?佳織いいよね」

「はい」

「「ぺ、ペア?」」


 上野と一緒にハモってしまった。

「どうやって決める?」

「私と佳織、上野君と葛城君がじゃんけんして勝った方、負けた方が組む」

「そ、それはいいけど」


 じゃんけんの結果は、俺と藤原さんが組むことになった。何故か俺達がじゃんけんした後に彼女達がやっていた。どういう事?

仕方ないからと思いつつゆっくりと階段を登ってもやがて着いてしまったスタート台。


「男の方が、先に座って下さい。後ろに女の人が座って、前の人のお腹に腕を回してしっかりと手を結んで下さい」

「こうですか?」

「はい、大丈夫です。それではスタートします」


 ふふっ、男の方の体に触れるなんて。でもこの人さっきから話していてもとても優しさを感じる。私がこんな事思うなんて変な人(男性)だな。ぎゅーっと掴んじゃおー。



 うぉ、右や左に曲がる度に藤原さんに押さえつけられている胸が俺の背中の上でよれている。不味い。不味いぞー。


 ザブーン。



「きゃーっ、面白かった。葛城さん。どうでした?」

「はい、俺も楽しかったです」

「じゃあ、もう一回行きましょう」

「えっ、だって上野達がまだ…」

「琴吹達なら問題ないですよ。さっ、行きましょう」


 また、俺の背中に…。この人わざとやっていない?さっきより締め付け強いんだけど。



 結局、藤原さんと三回も一緒にウォータースライダーをやる事になってしまった。



「葛城君、どうだった?佳織と一緒にスライダーして?」

「どうだったと言われても」


 ふふっ、葛城さん、顔が真っ赤。もう少し弄ろうかな。


「えーっ、勿論楽しかったです。こうやって彼のお腹をぎゅーっと絞めて滑りましたもの」

 いきなり藤原さんが俺の後ろに回って、お腹に腕を回して、胸を背中に押し付けて来た。


「へーっ、佳織の大きな胸がギュウギュウに押しつぶされている。これは葛城君、さぞ気持ち良かったでしょ」

「あ、あの。藤原さん」

「なに?」

「そろそろ、腕を解いてくれると」

「じゃあ、もう一回」


 もう一度ぎゅーっされて、俺のメンタルはゼロに近くなった。参った。あっ、上野の奴、腹抱えて笑っている。


「上野、お前もやって貰ったら?」

「いや、俺は遠慮しとく。小山内ので充分だ」

「ちょっと、上野、それどういう意味?」

「い、いやそれは…」


 上野が小山内からポコスカ叩かれている。そんな事言うからだ。

「そろそろ休みませんか。もう正午を回りました」

「そうだね。じゃあ、シートに戻って交代で食べ物買いに行こうか」

「「「うん」」」



 先に上野と小山内が買いに行った。俺と藤原さんがシートに座りながら話していると、後ろから影が覆った。振り返ると、金髪と茶髪の軽そうなお兄さん達が立っていた。


「ねえ、君。俺達と遊ばない」

「そうだよ。こんなボケ男より俺達と遊んだほうが楽しいぜ」


 いきなり藤原さんが立った。

「おっ、話分かるじゃないか。さっ、行こうぜ」


 金髪の男が彼女の腕を掴もうとした瞬間。


 ビュン、ドサッ。

 グエッ。


 いったい何が起こったんだ。俺と同じくらいの金髪男が宙に舞い上がったと思ったらそのまま落ちて来た。痛そ。


「愚か者は何処にでもいるものですね。女性だと思って軽く見ているとそうなるのですよ」


 もう一人の男が

「何だと」


 なんと、彼女の胸を掴もうとして


 ビュン、ドサッ。

 グエッ。


 この男も体が宙に舞い上がったと思ったらそのままコンクリートに。痛そ。


 あっ、監視員が来た。

「やばい、逃げるぞ」

「ああ」


 二人共腰を押さえながら逃げて行った。監視員はそれを見て、俺達と視線を合わせて顎を引いて大丈夫と確信した後、引き返していった。呆れていると

「あらーっ。佳織に手を出す男が居たなんて。可哀想に」

「琴吹、女性の嗜みです」


 いやいや、自分の身長より大きい男を投げ飛ばすなんて…。これも女性の嗜みなの?



「小山内も出来るの?」

 俺が聞くと


「佳織程強くないけどね」

 俺、小山内から一メートル以内に近付くの止めようかな。


「あははっ、葛城君にはしないわよ」

「上野知ってた?」

「ああ、小山内が怖い事は知ってた」

「怖いとは何よ。怖いとは」

 また上野が小山内にポコスカ殴られている。可哀想に。


 その後、俺と藤原さんが昼食を買いに行って皆で楽しく食べた。少し休んだ後、波が来るプールに行ったんだけど…


「ふふっ、葛城さん、手を繋いで波が来たら跳ねましょう」

「えっ?!」


 振り向くと上野と小山内が笑っている。こいつらグルか。



 跳ねたのはいいけど、よろめいたと言って俺の方に体を傾けて来た。飛び跳ねた時に体重を掛けられたので、そのまま


 ドブーン。


「ぷはっ。びっくりした」

「ふふっ、葛城さん、もう一度」


 この人わざとやってない。


 その後も四人で楽しく遊んで駅で別れた。四人で一緒に電車に乗って小山内と藤原さんが先に降りて次に上野が降りた。


 楽しかったけど、疲れたな。




「佳織、どうだった?」

「ふふっ、聞いていた通り素敵な人ですね。お爺ちゃんも喜びます」

「でもなんで、葛城君の事知ってたの?」

「琴吹、それはまた後で」

「ふーん。でも葛城君、好きな人…がいるけど」

「もう知っています。でも上手く行っていないんでしょ」

「それはそうだけど」


 いくら小山内家と藤原家が親戚とは言え、何故佳織が葛城君に会いたいなんて言って来たのか、この時は全く知らなかった。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひフォローとご評価★★★★★を頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします。




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