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変っていく生活


 私は、ファミレスのバイトに来ている。祐也も来ている。でも前とは様子が大きく変わった。


 学校が終われば、いつも一緒に来ていたこのバイトもばらばらで来るようになった。いや私は一緒に来たいのだけど祐也が私を避けている。


 バイトが終わっても、祐也は急いで帰ってしまう。前なら私を家まで送ってくれたのに。



 来週の木曜日は終業式。夏休みの約束も何もしていない。バイトだってどうするんだろう。寂しい。家に帰っても何もやる気が出なかった。


 お母さんが心配して声を掛けてくれたけど何でもないと言って部屋に閉じ籠ってしまう。

祐也から嫌われたなんて言ったら、あの馬鹿な父親は、大喜びするのだろうけど。あいつとはもう会わないと決めた。


 バイトは続けるしかない。事業は融資をして貰う前より上手くいっている様だけど、いつどうなるかも分からないし、大学の費用はなるべく自分で出したい。


 でも、祐也と会えないのは寂しい…。



 

 俺は、今年の夏休みをどうするか考えていた。夏休みの宿題は勿論だが、他の日をどうするかだ。


 バイトは続けた方が良いだろう。我が家は母子家庭でお母さんが生活を支えてくれているけど、去年の九月から始めたバイト代も大分貯まった。


このままなら塾の夏合宿も行けるし、来年四月からバイトを止めて受験に集中しても塾代にお母さんを困らせる事はない。大学入学時の足しにもなる。


 でも、美琴もバイトを続けている。あいつを見るのが辛い。裏切られた気持ちで一杯だけど、幼稚園から今迄ずっと一緒で、好きという気持ちが直ぐに消える訳はない。


 美琴は今でも二週間に一回会っているんだろうか。食事をしたり映画を見たり、偶にはあっちもしているんだろうな。もう、俺の事なんか頭の片隅にもないんだろう。


 仕方ないや。俺はイケメンでも無ければ金持ちでもない。今はバイトと勉強を頑張らないと。


「葛城君、どうしたの?」

「あっ、柏木さん」

「なんか、最近元気ないね。それに友坂さんとも距離が有る感じするし」

「何でも無いです」

「ふふっ、悩みなら先輩として相談乗るよ?」

「ありがとうございます。でもいいです」

「そうかぁ、残念だなぁ」


「柏木さん、早く配膳して」

「あっ、薬丸さん。済みません」


 柏木さんが配膳カウンタに乗っている料理を手に持って客席に行った。いつも優しくて綺麗な人だ。あっ、美琴が来た。俺は直ぐに厨房の中に入って注文順の料理を作り始めた。


 葛城君、最近友坂さんを避けているような感じがするが、二人の間に何か有ったのかな。この前の友坂さんのミスといい、どうしたんだろう。



 

 もう一人で登校して何日になるんだろう。毎日美琴と一緒に登下校するのが当たり前だったのに。教室に入ると上野が、


「葛城、夏休みどうするんだ?」

「何も決まっていない。夏休みの宿題と塾の夏合宿に行こうと思っている位だ」

「お前の頭の中は勉強ばかりだな。プールとか一緒に行かないか?」

「いいな。いつ行く?」

「二人だけで行くのは寂しいから後二人位誘ってみるよ。小山内と誰かって感じだ」

「了解、決まったら教えてくれ」

 上野と小山内なら気楽でいい。もう一人って誰かな?



 しかし、塾の夏合宿とか言っても、今から入れるのか、それにどこの塾がいいんだ。全く分からないや。


 俺は、昼休み、上野達と学食でお母さんが作ってくれたお弁当を食べながら

「なあ、誰か塾の夏合宿とか行く奴いないか?俺、行きたいんだけど塾の事全然知らなくてさ」

「葛城、塾行く必要あるの。頭いいから要らないんじゃない?」

「そんな事ない。学力なんて気を抜けば直ぐに落ちる」

「流石だな。駅前に可愛塾がある。俺も春先から通っているんだ。夏合宿は行かないけど、聞いてみれば、ちょっともう締め切ったかも知れないけど」

「おう、ありがとう」


 今日は金曜日でバイトがない。帰りに寄ってみるか。



 俺は、学校の帰りに駅前のビルの中に有る可愛塾の受付に来ていた。カウンタの中の人に

「あの、ここで夏合宿とかしています?」

「夏合宿?ああ、夏季集中講座ね。夏期特訓合宿って言うの。ところで君はここの塾に通っているの?」


「いえ、初めて来ました」

「あら、そうなの。夏期特訓合宿は、塾生が対象なのよ。それに今からだともう締め切っているから。九月からのコースからなら入れるわよ」

「そうですか。済みません、九月からのコースは考えます」

「じゃあ、はいパンフレット持って行って」

「ありがとうございます」


 やっぱりいきなり来てすぐに夏期特訓合宿に参加するのは無理か。九月からのコースはバイトも有るし、お母さんと相談するか。



 家に帰るとまだお母さんは帰ってきていない。部屋で一人で居ると玄関の音がした。俺は、一階に降りて

「お母さん、お帰り」

「ただいま、祐也」


 お母さんの夕食の手伝いと言ってもテーブル拭いり、お皿を出したりと言事ぐらいしか出来ないけど、ちょっと手伝って、夕食になった。食事しながらお母さんが、


「祐也、美琴ちゃんとは上手くいっているの。最近我が家に来ないし、何かったの?」

「あっ、うん。ちょっとね」

「ちょっとねって?」

「美琴に振られた」

 えっ、私は持っていたお茶碗を落としそうになった。


「振られたって?美琴ちゃんに誰か祐也以外に新しい人が出来たって事?」

「うん、相手は友坂家に融資してくれている金丸って人の息子。背が高くて、イケメンで金持ちで頭がいい。俺なんかが敵う相手じゃ無いって事さ」

「えっ、美琴ちゃんがそんな事で祐也を振ったの?」

「現実だよ。二週間に一回、映画に行ったり、食事したり、それにあれも。もう俺の出る幕はない。

そんな事よりお母さん、俺、九月から塾に通いたい。でもバイト出来なくなっちゃうと、大学行くのにお母さんに迷惑が掛かるから迷っている」


 美琴ちゃんが、お金で動くとは思えないんだけど。確かにあの子の家の事を考えたら、いきなり生活差感じさせる事を一杯出されたら…。でも想像出来ないわ。祐也をあれだけ好きだったのに。


「祐也、バイトは止めても良いわ。今のバイトだって美琴ちゃんの付き合いでしょ。祐也の大学の資金というか、学費や生活費はあなたが心配する必要無いのよ」

「でもお母さんに申し訳ないよ」

「ありがとう、でも祐也の学費は、もう十分にあるわ。あの人の保険金は手をつけてないし、学資保険にも入っているし、学費が高い大学でも奨学金制度も有るし、それに母子家庭だから区からの学費補助も受けれるのよ。あなたが大学の事で悩む必要は一ミリもないから。思い切り九月から塾に行きなさい」

「ほんと!ありがとうお母さん。俺絶対国立受かって見せる」

「楽しみにしているわ」


 次の土曜からの月曜の海の日迄の三連休は、部屋と図書館で過ごした。美琴どうしているのかな?


本当は会いたい。でもあいつと会っているのかな。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひフォローとご評価★★★★★を頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします。


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