一学期末考査と友達
もう祐也の家の最寄り駅のホームで待っていても彼は乗る時間を変えたのか、会う事は出来なかった。
学校に行ってもクラスが違うから祐也がどうしているか分からない。お昼に行っても教室で食べる事は無く、学食で上野君達と一緒に食べていた。
どうすればいいのか全く分からない。誤解なのに。確かに私の気の緩みでも有った。最初なら、会う事も毛嫌いしていたのに徐々に会う事に抵抗が少なくなっていた。
そこにあの事件が起きた。心のどこかであいつに同情心が有ったのは事実だ。
でもこれがいけなかったんだ。中華屋なんて、なんで行こうとしたんだろうか。映画だってそうだ。何で行ったんだ。
今から思えば反省ばかりだ。もう考査ウィークに入っているけど、頭の中は祐也の事ばかりでちっとも勉強に身が入らない。
どうすれば誤解を解けるの。どうすればまた前と同じ様に祐也と会う事が出来るの?
俺は、美琴と別れてから、登校時間を変えた。お昼もお母さんが作ってくれたお弁当を上野達と一緒に学食で食べる様にした。
上野は事情を知っているから他の友達が俺に美琴の事を聞いて来ても上手く話を外してくれる。
考査ウィークに入った。考査範囲の勉強をしながら美琴の事が浮かんでくる。とてもあれだけで諦めきれるものではない。
でも美琴が俺とあいつを二股しているなんて…。美琴はそんな事が出来る子じゃなかったのに。
今は俺の頭の整理が出来ていない。だから一学期末考査に集中してこれが終わったらもう一度、自分自身でよく考えようと思っている。別れたくない、それが俺の本音だ。
一学期末考査が終わった。俺は何とか五位を維持したのだが…。美琴は十五位と落ちた。美琴が俺の方を見たが、直ぐに教室に戻った時、上野が
「葛城、ちょっと良いか?」
「ああ」
上野は俺を人がいない、非常階段の踊り場に連れて来ると
「葛城、あの録画を見せた張本人の俺が、こんな事言うのはおかしいが、あの録画のお陰で友坂さんとの仲を壊してしまったんじゃないか。俺はそんなつもりであれを見せたんじゃないのだけど」
「いいんだ上野。俺もあの録画だけで全部信じた訳じゃない。でもあの後、二回も最初の中華屋と美琴が言い訳したラブホ街の傍にある中華屋に行ったんだけど、美琴の言った言い訳が起きている様な事は全くなかった。
それだけだ。はっきり言って辛い。でもこれが現実だと受け止めるしかない。顔も普通、金も無い俺が、あいつに敵う物なんて何もないんだ。
そういう意味では俺に早く教えてくれた上野には感謝している。もう触れないでくれると嬉しい」
「…そうか」
その後、二人で教室に戻って普通に授業を受けた。美琴との事は整理出来ないけど、現実を受け入れるしかない。
一学期末考査の結果は当然だと思った。勉強が全く頭に入ってこない。机に向って教科書を開いても一ページも進まない毎日だったんだから。でも祐也は凄い。五位を維持した。私なんか十五位まで落ちたのに。
祐也の心の中にもう私の居場所は無くなったんだろうか。考査結果を見ていると祐也の姿が目に入った。視線が合ったとたんに私を避ける様に教室に戻って行った。
本当は話かったのに。仕方なく教室に戻ろうとした私に小山内さんが声を掛けて来た。
「友坂さん、お昼一緒に食べようか?」
「ありがとう」
昼休みになり、小山内さんが、
「校舎の裏庭のベンチで一緒に食べない?」
「うん」
校舎裏で食べるなんて大体想像がつく。二人で校舎裏に行くと誰も居なかった。二人でお弁当を広げながら
「友坂さん、葛城君と何か有ったの?」
私は上野君からあの録画を見せて貰っているけど、簡単に信じる気にはなれなかった。何か理由があるんじゃないかと。
でも私が邪推しても全く事は進まない。だから本人に聞く事にした。友坂さんとは四年以上の付き合いだ。何か教えてくれると思った。
「何もない。ただ私が悪いだけ」
「えっ、でもあれだけ仲が良かったじゃない。将来は結婚するって公然と言っていた仲でしょ。何も無くないでしょ」
友坂さんは、何も言わずお弁当を食べていた。でも…。お弁当の上に涙が落ちて来た。
「私が悪いの。祐也が誤解するような事ばかりした私が悪いの」
「誤解?」
友坂さんは、お弁当を横に置くと下を向いて顔に手を当てて泣き始めた。声を出さない分だけ涙の量が多く感じた。彼女の背中をさすりながら
「もし出来るならその誤解とやらを教えて。友坂さんとは四年以上の付き合いだよ。その友坂さんが葛城君と今の状態になるんなんて何も無い訳ないでしょ。教えて。偶には私に頼ってよ」
彼女の涙が段々止まって来た。そして涙だらけの顔で私に語ってくれた。
金丸真司とかいう男のお父さんに頼まれた事。
そのお父さんは家の事業に融資して貰っている事。
真司は、暴漢に襲われた時、自分を救う為に反対にやられて大けがをした事。
そしてその後、映画や食事に行ってしまった事。
その最後の食事の時に誰かに撮られた。
事実とは違うけど、そう思われても仕方ない録画を見て事実を証明しようとしたけど上手くいかなかった事を話してくれた。
多分、あの録画だ。でもあれはどう見てもそう思いたくなる録画だ。友坂さんの言っている事が事実だとしてもあれを復すのは難しい。
「友坂さん、事情は理解したわ。私も考えてみる。それと早くお弁当食べよ。お昼時間無くなってしまうよ」
「うん」
何とか友坂さんもお弁当を食べ終わり、一緒に教室に戻ったけどどうすればいいのか分からない。
取敢えず上野君に相談する事にしよう。あの録画を撮った時の状況をもっと知りたい。
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