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変らない気持ちに強引に入ってくる感情

 

 真司に助けて貰った日、私は家に帰ってから考えた。もしあの時、いつもの〇ックに行っていたら。もしあいつの言う通り前に行った喫茶店に行っていたら。

私がトドールに行こうなんて言っていなかったら。もし、あのまま私が連れ去られたら。


 そう思うとどんどん悪い方向に考えが行ってしまう。もう会わなければこんな気持ちにならなくて済む。でもあいつは言った。

『友坂さん。大好きな人を守るのは当たり前です』


 普段なら何馬鹿言ってるのよと気にもしない言葉が、何故か引っ掛かっている。


 そしてあいつの父親が

『あなたにお付き合いしている人が居るというのは聞いている。だから真司と付き合ってくれとは言わない。でも何とかあなたの力で真司の頭の中を入れ替えさせて欲しい』


 この言葉の意味は重い。どうすればいいか分からなくなっている。勿論両親に話したら悪い方向に考えが行くに決まっている。


 そう、今日は心を落ち着かせて明日祐也と話すしかない。


 

 次の日、午前九時には祐也の家に行った。心の中は混乱したままだけど。

インターフォンを押して彼の家にあげて貰うと、彼のお母さんがまだ寝ているから部屋に行ってあげてと言われたので、いつもの様に彼の部屋に行って軽くノックしてから部屋に入った。


 例によって飛んでもない格好で寝ている。私はそっと彼の頬を人差し指で触ると反応しない。

 私は洋服を脱いで下着だけになるとそっと彼の横に寝て、はだけている毛布を掛けた。


 暖かい。祐也の匂いが一杯。そのまま祐也に抱きついて…眠りに入ってしまった。


 うん?柔らかい物が唇に当たっている。ゆっくりと目を覚ますと

「えっ?!」

「美琴、いつ来たのか分からなかったよ。でも良く寝ていたね」

「もう、祐也の馬鹿」


 思い切り彼の胸に顔を埋めると彼は私の頭をゆっくりと撫でながら私の頭を自分の胸に押し付けた。


 祐也が何を心配しているのかちょっとだけ分かった気がした。そのままにさせていると

「昨日は大変だったな」

「うん」


 何故か涙が出て来た。分からない。昨日経験した不安な気持ちが出て来ているのか、それとも自分の心の隅ににじみ出て来ている感情に不安を覚えているのか分からない。


 涙を流しながらずっと祐也の胸に顔を埋めていた。不安が込み上げてくる。


「美琴…」


 どうしようもなく収まらない感情は、祐也に言ってしまった方がいい。


「祐也、聞いて」

「うん」


「今、気持ちがぐちゃぐちゃしていて分からない。

昨日、暴漢に襲われて怖い思いをした。もしあいつが私を助けなかったらどうなっていたかと思うと恐ろしくて…。


あいつが私に、大好きな人を助けるは当たり前って言われて、何も無かったら馬鹿じゃないのって笑い飛ばしたけど、今度だけは私の心届いてしまった…。


そしてあいつのお父さんが私に、息子と付き合う必要はない、でも私の力で息子の頭の中を入れ替えさせて欲しいと言われた。この言葉の意味を考えると恐ろしくて…。


祐也、分からない、分からない、分からないよ。私の心の中がぐちゃぐちゃになっている。私はどうすればいいの。

抱いて、祐也、抱いて。そしてこの感情を全部心の外に追い出して」

「分かった」



 あら、二階が賑やかね。お買物でも行ってこうかしら。



「祐也、もっと激しく。もっと思い切り…」


 何度も気絶しそうになった。二度目が終わって、祐也は息を切らしている。でも、心の底に何かが残っている。


「祐也、ありがとう。朝から疲れちゃったね」

「うん、構わないけど。どう少しはすっきりした?」

「うん、大分すっきりした。お母さんに聞かれちゃったね」

「最初の方で外に出て行ったみたいだよ」

「気を使わせちゃった」

「構わないさ」


 俺は美琴の言葉が引っ掛かっていた。あいつの言葉が心にまで届いてしまったという言葉が。


 

 次の朝は、いつもの様に祐也の家の最寄り駅のホームで待合せて、一緒に学校に行った。昇降口で履き替えて別々の教室に入る。祐也は2A、私は2B。


「おはよう友坂さん」

「おはよう小山内さん」


 席替えで彼女とは隣同士になった。私がバッグを机の横に引っ掛けて椅子に座ると、急に頭の中に、あいつの事が出て来た。

 あんなに怪我をして学校行けているんだろうかって。前は気にもしなかったのに。



 お昼は2Aの裕也の教室に行って二人で食べた。いつもと同じように。


 そして放課後は二人でバイトに行って、終わったら私の家まで送って貰った。もう大分陽が伸びでやっと夜の帳が降りてくるような季節だ。


 毎日、こうして過ごしている内にあいつの事は徐々に消えて行った。


 GWは五連休だけど、直前の月曜日にバイトに行った時、五連休の前半三日間出てくれないかと言われた。時間は午前十時から午後二時までだ。


 特に用事が入っていない私達は勿論出る事にした。バイトが終われば祐也とずっと一緒に居られる。


 GWのバイトが終わる頃にはあいつの事はもう忘れていた。


 でもGWも思い切り二人で楽しんだ最後の日、あいつからスマホに連絡が有った。


「友坂さん、会って頂けませんか?」


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひフォローとご評価★★★★★を頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします。




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