二年生になり変わった事がある
祐也と私は、一学年末テストも二人で上位五位以内に入った。このまま行けば十分に同じ大学に行ける。国公立ならお金が少なくて済む。家の事も心配も少なくて済む。
春休みは宿題の出ない日。バイトのシフトは変わらないがその分、昼間はずっと一緒に居られた。
バイトも七カ月も経つと貯金も大分貯まって来た。元々少ないとはいえ、親からお小遣いは貰っている。それも普段は使わないから金銭面では精神的に楽になった。
久しぶりに祐也と一緒にデパートのある街に行って映画を見た。今流行りのアニメだけどやっぱり映画はテレビとは違う。
お昼はいつもの〇ックにした。バニラシェイクを頼む訳では無いのでここでも十分だ。
お昼を食べ終わった後、二人久しぶりにSCに入っているPBショップを見て回った。
普段は制服だし、普段着は土日位しか着ないので、あまり気にならないけど、偶にはこういう高いお店を見て、他の安い店で同じ様な組み合わせにして買う。
まあ、今時のお金の無い女子高生なんてこんなものよ。今日はウィンドウショッピングだけ。そろそろ春物欲しいけど仕方ない。
あいつと会う時に着て行く服もほとんどが〇〇ムラとか〇〇クロとかで買った物を組み合わせて着て行くだけにあいつの有名なデザイナーのとんでもない洋服には不釣り合いだろう。
でもそれであいつが自分に似合わないからと私を諦めてくれると良いのだけど。もっともあいつが着ている服に合う洋服なんて買えないけどね。
一階の高級ブランド店が並ぶエリアを駅に行く為に通るけど、目ん玉飛び出る値段のものだけだ。
それでも見ながら歩いていると、この前あいつが着ていたゾニアとかいうブランドの洋服店が有った。
「うわっ、これどんな人が着るんだろう?
ジャケット一着三十五万とかなにこれ。あいつこんな値段の洋服を上から下まで揃えたの。歩く諭吉さんじゃない」
「どうしたんだ美琴」
「あっ、ごめん何でもない。くだらない事思い出しただけ」
「そうか」
いつもなら言うのにな。
一学期の始業式の時、昇降口の先の掲示板に載っているクラスと生徒の振り分けを見た。
「「あっ!」」
「祐也とクラスが違う」
「俺が2A、美琴は2Bか」
「葛城、今度は一緒のクラスだな」
「上野か。ああ、宜しく。」
「友坂さんとは別居だな」
「あははっ、こればかりは仕方ないよ」
「別邸は小山内と一緒だから安心だけどな」
「友坂さん、宜しくね」
「小山内さん、こちらこそ」
残念だけど、仕方ない。でも勉強をしっかりしていれば来年のクラス分けではまた美琴と一緒になる。
始業式も終わって教室に戻ると席替えが行われた。上野とは、列が一つ離れたが同じ一番後ろなので話しやすい。
クラスの係も決められたが、幸い俺はどれにも選ばれなかった。これでバイトには影響がない。
今日は授業が無いから午前中で終わった。2Bに行こうとすると丁度終わったらしく、美琴が教室から出て来た。
「祐也、帰ろうか」
「うん」
ふふっ、この時間祐也の家にお母さんはいない。だから学校の帰りにそのまま祐也の家に行った。
明日も入学式。一杯一緒に居られる。
そんな事を思って祐也の部屋で楽しい事をしている時、スマホが鳴った。当然無視、電源を切って楽しい事を続けた。
はぁ、また出ないよ。この前は一回で出てくれたのに。仕方ない夕方掛けてみるか。
最近、二人共余裕が出て来たのか、祐也がネットで変な事を調べた事も有るのか、一段と気持ちがいい。
一瞬気絶するかと思う位の時もある。祐也と一緒になった時は最高だ。ずっとこのままで居たい。
そんな楽しい事も流石に二回もすると祐也がばてた。
「美琴、バイト有るからこの位にしよ」
「うん、ふふふっ、明後日はバイト無いから」
「そ、そだな」
最近、美琴は元気がいい。ちょっと怖い。
私達はバイトに行く為、着替えてから私のスマホの電源を入れると直ぐに掛かって来た。画面を見るとあいつだ。
「祐也、あいつから」
「出るしかないんだから。仕方ないよ」
「分かった」
はっきり言って出たくない。
『はい』
『友坂さんですか。金丸です』
『…………』
『あの、今度の土曜日会えませんか?』
『用事があります』
せっかく祐也といい事しようと思っているのに、冗談じゃないわ。
『じゃあ、次の土曜日』
『二十二日ですか』
祐也に聞こえる様に言った。祐也は仕方ないという顔で頷くと
『良いですよ』
『そうですか。じゃあいつもの場所で』
『分かりました』
俺はスマホを切ると後ろから父親が
「真司、友坂さんの娘さんと会うのか」
「うん」
「上手くいっているのか」
「なんとかなりそうだよ」
「なんとかなりそう?」
「うん、彼女の気を引こうと思って、髪型変えたり、洋服変えたりしている。この前会った時、ちょっと進展有ったかも」
はぁ、そんな事してもあの子が真司を好きになる訳無いだろうに。この馬鹿息子が!
友坂美琴さん、お願いだからこの馬鹿息子の心をあなたの力で矯正してやってくれ。
別に息子を好きになってくれとは言わない。人の心や物事が金だけでは動かないという事を教えてやってくれ。頼む。
「まあ、いい。真司、言っておくが力ずくで何とかしようなんて考えたら勘当するぞ」
「お父さん、俺だってそんな事するのは嫌いだよ。俺の魅力で彼女の心を引くつもりだ」
「そうか、がんばれ」
いつの事になるのやら。
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