表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/41

魔物の行進ー終戦編ー

 「はははは!弱い弱い!この程度の腕で、俺に挑むなんてな!」



 私は、男の刀をギリギリでいなしたり受け止めたりするが、圧倒的に経験が足りない私は徐々に押され気味になり、肩に攻撃を受けてしまう。



「はぁはぁ、まさかここまで実力差があるなんてね」



 傷を負った肩を押さえながら後ろに飛び退き男を睨む。



「相手の実力も分からない奴が戦場に立つんじゃねーよ!」



 男の刀が目の前に迫り、刀を盾にして受け止めようとした瞬間、男は刀を寸止めしお腹に正拳突きを放つ。

 フェイントに完璧に騙されたユキネは防御も間に合わずまともに正拳突きをくらい、城壁に身体を打ちつけられる。



「ガハッ!うっ…おえぇ」



 胃から上がって来た内容物を血と共に吐き出し目尻に涙が浮き出る。



「これにも対処できないのか……もう、飽きたな。お前、もういいや」



 男は冷ややかな目をユキネに向けゆっくりとユキネに歩いてくる。



 これが、神の申し子の力…ですか。ここまで、実力差があると逆に笑っちゃいますね。



 ユキネは口元を袖で拭い口の中に残った血を吐き出し、刀を構え直す。



「ちっ!しつけぇな。いい加減死ねよ!」



 男の姿が消え、気づいた時には私の体は宙を浮き攻撃されたと気づいた時には男の蹴りがお腹に命中し、城壁を突き破り地面に身体を打ちつけられる。



「嬢ちゃん!?」



「マスター!」



 フランとおじさんが、ユキネに近づき優しく身体を起こす。



「はぁはぁ、やっぱり神の申し子は強いですね」



 ユキネは口から血を吐き出しながらも笑顔を浮かべフランの肩をかり立ち上がる。



「あ?誰かと思ったらクラウスのおっさんじゃねーか」



 男はおじさん…改めクラウスを見つけると笑顔を浮かべ手を挙げる。



「そうか、嬢ちゃんの相手はお前だったか…ヒカゲ!」



 クラウスは、顔に怒りの表情を浮かべ大剣を構える。



「おいおい、せっかくの再会なんだからもっと喜んでくれよ」



「はっ!喜んでるぜ!お前をぶっ殺せるチャンスだからな!」



 クラウスが足に力を入れ走り出そうとした瞬間、とてつもない力で足をつかまれる。



「貴方達の過去の因縁なんてどうでもいいんですよ……邪魔、しないで」



 ユキネは、クラウスを押し退けヒカゲへと走り出す。



「お前はもういいって」



 ヒカゲは、振るわれた刀を軽く避けユキネの手首を掴み膝蹴りを鳩尾にめり込ませ、浮いた身体を上から踏みつける。



「誰を踏みつけてるんだ!お前ぇぇぇぇえ!!」



 フランの翼が激しく燃え上がり、周りの温度が上昇していき双剣に炎が宿る。



「フラン!!邪魔しないで!」



 今にも切りかかろうとしていたフランはユキネの怒号に足を止め唇を血が出るほど噛み締める。



「でも、マスター。このままじゃ……」



「こいつは私が殺す!」



「うるさい」



 ヒカゲが、ユキネの肩に刀を突き刺しクラウスを見つめる。



 ああ、そうか。もう、私はこの人の眼中に無いんだね。そっかそっか……。



          むかつくな



 ユキネが、小さくそう呟くとユキネの真上から白と黒の雷が降り注ぐ。

 ヒカゲは、いち早くその場から退避しユキネを睨みつける。



「私を無視して、ペチャクチャペチャクチャと……実に不愉快です」



 黒雪と白雪がパリンと音を立てて砕け、中から刃の部分が白、峰が黒色の刀と刃の部分が黒、峰が白色の刀が姿を表す。



「雰囲気が変わった?」



 ヒカゲは、刀を構え警戒の姿勢を見せる。ユキネがゆっくりと立ち上がり、仮面を投げ捨て刀を逆手に持ち直す。



「さあ、行こうか〈黒雪・白式〉(くろゆき・びゃくしき)白雪・黒式(しらゆき・こくしき)〉」



 ユキネが、刀の名前を呼ぶと黒雪に白い雷が、白雪に黒い雷が帯電し周りの冒険者に向かって放電する。



「武器が変わった所でお前は俺には勝てねぇよ!」



 ヒカゲが、刀に炎を灯し地面を力一杯蹴りユキネに斬りかかる。



「遅い」



 ヒカゲの刀がユキネに当たるその瞬間、ヒカゲが血を吐き吹き飛ぶ。



「今、蹴ったのか?」



「全然、見えなかった」



「あは…楽しいね」



 ユキネの口元が三日月型に歪み、その場から雷の音と共にユキネの姿が消える。

 次の瞬間、ヒカゲが血だらけの状態で宙を舞い雷の音と共に地面に落下する。



「ぐそっ!なんだ、こいつ…!」



 ヒカゲが、立ち上がると同時にユキネがヒカゲの頭を上から地面に叩きつけ顔面を蹴り、吹き飛ばす。



 残り時間は 10分、冒険者側の戦力は残り68%。勝ちはもう無いかな。


 ユキネは視界の端の時間を見てため息を吐き、後ろから振るわれたヒカゲの刀を目も向けずに受け止め、首を後ろに傾けニヤリと笑う。



「まあ、いいや。君だけでも殺そうかな」



 刀を上に弾き、回し蹴りを放ち吹き飛んだ先に先回りをし背中を蹴り上げ空へと蹴り飛ばす。



「くそ!くそ!この俺がお前みたいな雑魚に負けるかぁ!」



 ヒカゲは、空で受け身を取り手の平をユキネに向け魔力を溜める。



「ははははは!!味方も敵も関係ねぇ!全員纏めて消し炭になりやがれ!〈烈火の雷〉」



 ヒカゲが放った炎が雷を纏い、地上へと降り注ぐ。

地面に当たった炎が弾け次々と爆発を起こし雷を周りに撒き散らす。



「……最終的にどんな手を使ってくるかと思えばこの程度ですか」



 ユキネは冷たい視線をヒカゲに向け雷の音と共に姿が消える。



「これが本当の雷って奴だよ。覚えて死んでいって下さい」




 ユキネが、両方の刀を振り下ろすとレビルレイを覆い尽くすほどでかい雷がヒカゲを飲み込み、とてつもない轟音と共に大爆発を起こす。



 ユキネは、雷が消えるのを見届けるとその場で気を失い地面へと落下する。



「あの高さから落ちたらいくら嬢ちゃんでも信じまうぞ!」



「くっ!冒険者達が邪魔でマスターを助けに行けない!」



 フランとクラウスが、周りの冒険者を斬り殺しながらユキネを受け止める為に走り出す。



「お嬢様!!」



 魔導砲が爆破すると共にカエデが城壁から飛び降りユキネをギリギリで受け止める。

 カエデはその場で体勢を崩しユキネを庇いながら地面を滑る。



「お嬢様!」



「……ん」



 ユキネの目が微かに開くのを確認したカエデはホッと安堵しユキネを背中に乗せる。

 その瞬間、ダンジョンマスター側に声が鳴り響く。



『タイムアップです。今回の魔物の行進の結果を発表致します。ダンジョンマスター側、残戦力51%。冒険者側、残戦力59%。冒険者側の戦力が50%を下回っていませんでしたので、冒険者側の勝利です。ダンジョンマスターの皆様、お疲れ様でした』



 声が止むと、ダンジョンマスター側の魔物達が一斉に山へと撤退を開始する。



 カエデは、城壁の上の魔導砲をじっと睨んだあとフラン達に指示を出し、山を駆け上がって行く。




「陛下、今回の魔物の行進も我々の勝利でしたね」



「勝利……か。魔導砲は破壊され、冒険者達もほぼ虫の息。これが、勝利と呼べるのか」



 陛下と呼ばれた男は、手を強く握り締め手すりを強く叩く。



 こうして、ユキネの初イベント戦は敗北として幕を閉じた。

ユキネ・ホワイトベル

レベル 変化なし

ランク 変化なし

所有スキル

NEW

【憤怒】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ