魔物の行進ー開戦編ー
「全員、散開!カエデ、クオン、メルティは私と一緒に来てください」
ユキネは、後について来ていたビートン達に指示を出しカエデから飛び降り、冒険者達が集まって居る荒地に着地する。
「子供?」
「油断するな!山から来たと言う事はこいつも魔物だ」
「こんにちは、冒険者の皆様。恨みは無いのですが、死んで下さいませ【風刃】」
ユキネが、刀を横振るうと前方で武器を構えていた冒険者の腰から上が宙を舞う。
頬っぺたについた血を舐め取り悪い笑みを浮かべカエデ達と一緒に冒険者の真ん中へと突っ込む。
「陛下!このままでは我々は敗北してしまいます!」
「あの、子供ただの魔物ではないな…おい、あれの準備は出来てるか?」
「はっ!魔力充電は完了しております。いつでも発射できます」
陛下と呼ばれた男は、少し考えた後手を上に上げる。
「高出力魔導砲用意!!はなてぇぇぇぇ!!」
レビルレイを囲む城壁の上からでかい大砲が現れ何重にも魔法陣が銃口に集まり、レーザーが放たれる。
「!? カエデ、メルティを連れて影に!クオン!」
ユキネは、クオンの上に跨りクオンの持っているスキル【神速】をクオンと同時に発動する。
ユキネ達の姿が消え、レーザーの射程外へと一瞬で移動する。
レーザーが当たった場所を確認しユキネは額に汗を浮かべ驚きの表情を浮かべる。
「嘘でしょ……山が……」
放たれたレーザーが当たった山の上部が綺麗に消し飛び山の向こうに隠れてた夕陽がレビルレイを照らす。
「ダンジョンマスター各員に通達!レビルレイの城壁の上に魔導砲を確認!破壊できる奴はいるか!」
「名も無きダンジョン、ユキネ。いけます!援護だけお願いしてもよろしいですか?」
「おお、嬢ちゃんか!よっしゃ!俺が援護してやるから魔導砲頼んだぞ!」
ユキネはクオンとメルティに通り道を作るように指示しカエデに跨り、城壁の上を目指す。
くそ!冒険者の数が多すぎる!クオンとメルティだけじゃ、道を作るのは無理ですか…。
ユキネは振るわれた剣を屈んで避け、足払いで態勢を崩し倒れた冒険者のお腹を蹴り、城壁へと蹴り飛ばす。
「よぉ、嬢ちゃん!待たせたな。後は俺に任せな」
空から真っ赤な着物に身を包んだおじさんが着地し両手の大剣を担ぎ上げる。
「助かりました!城壁までの道作っていただけますか?」
「よっしゃ!嬢ちゃんの初仕事、成功させてやるよ!」
ユキネは、おじさんとグータッチをしおじさんの後に続き走り出す。
「フラーン!おじさんのサポートよろしくお願いします」
地面からマグマが噴き出し中から双剣を構えたフランが血をべったり付けて姿を表す。
「まっかせて!全員、消し炭にしてあげる♪」
それじゃ、私はお仕事しましょうか。
ユキネは【神速】を発動し城壁までの距離を一気に詰める。
頼みましたよ。フラン。
はいはーい、視点は移り私、フラン目線でお送り致しまーす。
とは、言えやる事は単純なんだよねー。邪魔者を蹂躙するだけの簡単なお仕事。
「マグマの嬢ちゃんは一緒に行かなくてよかったのかい?」
「確かに向こうには強い魔力の持ち主が居て楽しそうだけどねーマスターから頼られちゃったからね」
後ろから切り掛かって来た男の剣をマグマの羽根で溶かし首を締め上げニヤリと笑う。
「それに、私は勝てると思ってる人達を殺すのが好きなんだぁ」
男を掴んでいた力を強めると男の身体の内側から炎が上がり男を炭に変える。
「おーおー、こえぇ、嬢ちゃんだな」
フランが、笑顔を浮かべたまま空へと飛び上がり空へと手を掲げる。
「全てを焼き尽くす全なる炎よ。収束し弾けろ。〈ラヴァズレイン〉」
手のひらから放たれたマグマの球が空へと飛んで行き、ある程度飛んだ後弾ける。
飛び散ったマグマが鋭い雨となり戦場へと降り注ぐ。
「あははは!燃えろ燃えろ!もっと綺麗な花火を見せてね!」
地面へと急降下し、地面スレスレを飛び冒険者達の太ももを次々と切り裂いていく。
足を切られ機動力が低下した冒険者達は、上から降り注ぐマグマの雨を避けれず当たった箇所から燃え上がりやがて炭化し絶命する。
「おいおい、味方まで巻き込むんじゃ無いだろうな」
「味方?私の味方はマスターとその配下達だけだよ?他の人達は知らない。勝手に避ければいいと思う」
フランは冷たい目をおじさんに向け近くの冒険者の腕を掴み、捻りとり首を左右から斬り飛ばす。
「はっ、まあ確かにそうだ」
おじさんもがっはっはと高笑いし、両手の大剣で5〜6人の冒険者を一刀両断にする。
「さあさあ、もっと!もっと私と殺し合おう!」
「嬢ちゃんのダンジョンには頭のぶっ飛んだ奴しかいないのか?」
さて、視点は戻りユキネです。なんか、後ろでマグマと火の柱が見えましたが、味方、巻き込んで無いですよね?
「お嬢様、敵です」
カエデが急停止をし、その反動で顔面から落ち地面を滑る。
「いったぁ!カエデ!止まるなら止まるって言って下さいよ!」
「お嬢様……締まらないです」
「ここは戦場だぞガキ。遊ぶならお家に帰りな!」
男が振るった長剣を白雪で弾き飛ばし、黒雪で男の片腕を切断する。
男がその場で倒れ苦痛の叫び声を上げる。
ユキネは、その男を踏みつけ周りの冒険者に殺気を飛ばす。
「一つ、ご忠告を。相手の実力も分からない人達はここから、退場した方が良いですよ?」
さて、冒険者側の戦力は残り85%ですか。勝利する為には後、35%減らさないとダメですね。
対して、こちらの戦力は残り65%…魔導砲に大幅に削られてしまった様ですね。
「さっさと魔導砲を破壊しないとガンガン戦力削られてしまいますね」
踏みつけている男の顔に氷の棘を放ち、絶命した男の髪を持ち目の前の冒険者へと投げ飛ばし黒雪を地面に刺す。
「さあ、誘ってあげましょう。絶対なる黒の世界へ」
夕陽が照らし、明るかった景色が真っ黒に染まり星が煌めく。
「なんだ?いきなり夜になったぞ」
「でも何も起こらないな、見掛け倒しだ!怯むな!斬り殺せ!」
「やれやれ、貴方達、本当にパールの冒険者ですか?初見のスキルは警戒しましょうよ〈黒爪〉」
ユキネが、黒雪を縦に一度振ると、黒い斬撃が5本に増え向かって来ていた男達をバラバラにする。
「おいおい、こんな子供にやられるなんて雑魚すぎだろ」
「おや、貴方は少し強そうですね」
「はっ!魔物如きに、褒められても嬉しく無いな」
男の人が、真っ赤な刀を抜き放つと熱風が周りを焼き尽くす。
「お前に俺が倒せるかな?」
「カエデ、先に魔導砲に向かって破壊を試みて下さい」
「お嬢様、ですが……いえ、お嬢様の勝利をお祈りしています」
カエデが、口を噛み締めながら魔導砲へと向かう。
「追いかけなくていいのですか?」
「お前がそれを許すとは思えないんでな。お前を殺した後、ゆっくりと殺しに行くさ」
男の刀と私の刀がぶつかり周りの壁がひび割れ地面が沈む。
「これはこれは、楽しくなりそうです」
変更なし