ブチギレユキネとその後
「叫んでないで腕回復した方が、いいのでは?」
闘技場に転がっていたレントの腕をレントに向けて蹴り飛ばす。
治るまで待ってあげるとしますかね〜。っと、のんびり待とうとした時、レントが目の前の自分の腕を掴み燃やす。
「はぁはぁ、いらねぇよ……切られた腕なんて」
これには流石のユキネも驚愕の表情を浮かべやれやれと首を振る。
「まあ、ご自身が要らないと言うのであればそれでもいいですけどね。それでは、さっさと立って頂けます?」
倒れてる人をいたぶる趣味は無いんですよね。
レントが聖剣を杖にして立ち上がった瞬間、懐に潜り込み前蹴りを鳩尾に叩き込む。
「ほら、立って下さい」
「ぐっ、この野郎」
「貴方が望んだ私の本気ですよ」
私がゆっくりとレントに近づいた所で、私とレントの間に教師らしき人が着地する。
「ホワイトベルやり過ぎだ」
「あら?ルールでは殺しのみ無しの筈だった筈ですが?」
「だとしてもやり過ぎな事に変わりは無い。お前もさっさと負けを認めろ」
教師が私達を交互に睨みつける。
「はぁ、ここまでですかね」
ユキネが、振り返ってその場を後にしようとすると教師の後ろから声が聞こえた。
「おい、待てよ!まだ、俺は負けてねーぞ!お前の次はあの獣人だ!」
その言葉に完全にブチギレたユキネは、桜華を抜き放ち教師の声を無視し、レントへと切り掛かる。
レントはギリギリで聖剣で防ぐも勢いを殺し切れず後ろへと吹き飛ぶ。
「もうルールなんて知らない……お前、もう死ね」
ユキネは鞘に桜華を納め居合の構えを取る。
「やめろ!!ホワイトベル!」
教師が制止しようと腕を伸ばすが、間に合わず桜華が振り抜かれる。
放たれたピンクの斬撃は止めに入った教師を吹き飛ばし立とうとしていたレントへと直撃する。
「おい、まさか殺したんじゃねーのか」
「誰か衛兵呼んでこい!」
観客席がザワザワと騒がしくなり、ユキネが桜華を納め、レントがいた場所を見ると鎌を構えたルナがユキネを見つめていた。
「ユキネ、やり過ぎ」
ルナは、服についた埃をパンパンとはたき落としながらユキネに近づき軽くユキネの頭を小突く。
「でも、あいつが」
「私の為に怒ってくれるのは嬉しいけど、退学になったりしたらお姉さんに殺されるよ?」
ユキネは、ルナの後ろに倒れていたレントをチラッと確認し、不満そうな顔をしながらも闘技場の外へと足を進める。
「全く、世話の焼ける子だね」
ルナは、レントの近くにしゃがみ込み顔を覗き込む。
「ん、生きてるね。貴方もあんまりユキネを怒らせないでね?めんどくさいから」
ニコッと笑いかけた後、ルナもユキネの後に続き闘技場を後にする。
その後、学園長から呼び出しをくらいしこたま怒られた後、教室へと戻った。
「おい」
「……なんですか?まだ何か用が?」
「お前じゃねぇ。そっちの黒髪だ」
「ん?私?」
レントはルナの前に移動した後、勢いよく頭を下げる。
「こいつを怒らせる為とは言え、酷い事を言ってすまない!!」
「あー私は全然気にしてないので大丈夫。ほら、ユキネ」
「……頭に血が登ってやり過ぎました。すいませんでした」
ユキネはルナに肩を叩かれて頭を下げる。
「お前は悪く無い。全部自己責任だ」
レントは、ギプスを嵌めてる腕を摩りははっと笑う。
「よろしければ、腕治しますけど……」
「いや、いい。これは勲章だ。それに隻腕の勇者とかかっこいいだろ」
レントはニカっと笑った後、もう一度頭を下げその場を後にする。
「思ったよりもいい人だったね」
「義手作ってあげましょうかね」




