[天魔祭]レイド戦-ユキネ-
「さあ、色々ありましたがバトルロワイヤルも終了し次はレイド戦が開始されます。12人1チームで行うレイド戦は、特別な空間に放たれた大型のモンスターを倒すタイムを競う競技となっております。
モンスターの強さ、レベル、所有スキル等は全てランダム! 自身の持ち得るすべての力を出し切り優勝を狙って下さい
なお、チームは完全にランダムとなっております」
さてさて、誰とチームを組む事になるのか楽しみですね。 参加人数も多いですしルナ達とは別々のチームになってしまうかもしれませんが、まあいいでしょう。
司会者の人が指を鳴らすとタイマーが映し出されたモニターと私達の腕に同じくタイマーが映し出されたブレスレットが嵌められました。
「ここで注意事項です。レイド戦はバトルロワイアル同様、傷が治りません、なので戦闘中腕を欠損したりなどしてもこちらでは一切の責任は取れませんのでご注意下さい」
「普通に死ぬ確率もあるって事ですかね?」
「らしい」
「ええ! 僕、しにたくないんだけど!?」
私達は、それぞれ武器を準備してカミラさんが買ってきた肉串をもぐもぐしながら開始の合図を待った。
「それでは、天魔祭、レイドバトル開始!」
司会者の人がそう言うと参加者達の足元に魔法陣が広がり周りの景色がガラッと変わった。
「ふむ、洞窟ですね」
「どうやら、一本道になっていてその奥にレイドバトルの相手がいる様だな」
私は周りを見渡しルナ達の姿を確認するが、全員がゴツい男の人で全員が私を見つめていた。
「何でしょうか?」
「あ、いやすまん。こんな小さい女の子がヴァンパイアを倒したんだなぁって思ってな」
あ、なるほどそう言う事でしたか。
「ヴァンパイアって言っても下級でしたし誰でも倒せますよ。そんな事より早く進まないと優勝出来ませんよ?」
「っと、そうだったな。じゃあ、お互い助け合って頑張ろうぜ」
「みんな、集まってくれ。とりあえず、名前と戦闘スタイル等を話し合っておきたい」
私が男の人と話していると一人の男の人が声を上げてみんなを集める。
「レイド戦は基本的にチームの連携が必要になる、敵の強さ等も分からないからより慎重に行かないと全滅だってあり得るからな。
俺の名前はバリス。戦闘スタイルは身体強化を使って戦う前衛型だ」
順々に自己紹介をしていき、先程の私と話していた男の人の番になった。
「俺はアレン。スキル重視の闘い方だ。基本的には前に出るがサポートが足りないなら後衛もできる。好きな様に使ってくれ」
へぇ、見かけに寄らず中々オールラウンダーですね。
「っと、私ですね。名前はユキネ。基本的に刀を使いますがアレンさん同様サポートも出来ますので何でもおっしゃって下さい」
私は一度頭を下げ桜華の柄に腕を置き参加者を見渡す。
むむむ、これは中々厳しい戦いになりそうですね……全員がほぼ前衛でヒーラーも私を入れて二人バフをかける人もアレンさんと私のもう一人の男の人。
「アレン、ユキネ、シャフルが後衛で他は火力を重視する感じでいいと思うんだがみんなどう思う?」
「私はなんでもいいですよ」
「俺も異論は無い」
他の人達も頷き私達はレイドボスの部屋へと足を進めた。
「アレンさんはどうして天魔祭に?」
「ん? 娘が最近産まれてな。金が必要なんだ」
そう言えば、レイド戦の優勝賞品はお金と特殊な道具でしたね。
「そう言う、ユキネはなんでだ?」
「んー、まあ、友達の付き合いって感じですね」
「友達と一緒のチームになれなくて残念だったな」
「別にいいんですよ」
と、軽く世間話をしているとレイドボスの部屋への扉にたどり着き私達は改めて、陣形と作戦について話す。
「今回のこのパーティは火力は高いが回復力、防御は低いだから、基本的な動きは一撃を与えたら即離脱のヒット&アウェイで行く。 少しでもやばいと感じたらすぐに後ろに下がる事だ。アレン、ユキネ、シャフルは3人で回復とバフをして貰う。負担を掛けるが申し訳ない」
いつの間にかリーダーっぽい立ち位置にいるバリスさんが私達に深々と頭を下げる。
「べつに、貴方が悪いわけじゃ無いので大丈夫ですよ。 さてさて、ではのんびり行きましょっか」
私はバリスさんをポンっと叩き扉を開け中へと入る。
「嘘……だろ?」
「大型……ねぇ」
私はその部屋の中にいた者を見つめニヤッと笑う。
「こいつは……ベルベットランガ。地上の王とも呼ばれる魔物だぞ」
ベルベットランガは体長が30〜40メートルあるたてがみが蒼く燃えているライオンです。その炎は大地を溶かし空を焦がすと言われています。
所謂、歩く災害ですね。
「流石に本物では無い様ですが、ほぼ本物と言っても過言では無いですね」
恐らく、これは本物のベルベットランガをモデルにしたゴーレムって所ですね。
とは言え、本物と同等位の実力はありそうです。
「観察眼で確認した。名前はベルベットランガプロトA、レベルは150、所有スキルは不明。 こいつは相当きつい戦いになるぞ」
ベルベットランガプロトA……あ、昔本で読んだ事がありますね。 昔に何処かの国の頭のおかしい科学者が戦争の為に作ったが制御出来ずに何処かに封印した。と。
「まあ、とりあえず作戦通りに動くとしますかね」
私は目を閉じ魔力を集中させ魔法を唱える。
正直、バフはあんまり得意では無いのですが無いよりはマシでしょう。
「【オーロラベール】【ブレイブハート】【守炎の盾】」
私に続いてアレンさんとシャフルさんも魔法を唱える。
「【守炎の盾】【天使の息吹】」
「【女神の加護】【セイントヒール】」
ブレイブハートは相手の威圧感を無効にする魔法、守炎の盾は一度だけ炎属性の攻撃を無効にする魔法、天使の息吹は魔力の継続回復、女神の加護は各状態異常の無効、セイントヒールは傷の即時回復の魔法です。
傷の即時回復とは言え大きい怪我ならそれなりに回復に時間がかかります。
「あ、もう一個重ねがけしときましょうか【戦神の贈り物】」
戦神の贈り物は条件を満たせば攻撃力が大幅に上がります。 その条件は完全にランダムとなっており使う度に条件が変わってきます。
なので、最悪発動しない可能性もあると言う事です。
一通りバフをかけ終わったタイミングでベルベットランガプロトA(長いのでライオンと呼びましょう)が、ゆっくりと立ち上がり咆哮を上げる。
ブレイブハートのお陰で私達は怯む事も無く一斉に走り出す。




