[天魔祭]-バトルロイヤル4-
「ふむ、数は多いけど一本一本の質は悪いですね」
数だけ揃えても質が悪いのはダメですよー。
放たれた無数の矢を刀で斬り飛ばしながらゆっくりと足を進めていく。
「くそ!なんで、当たらないんだ!」
「スキルか何か知りませんが質が悪いんですよ」
「なら、もっと数を増やせばいいだけだ!【風矢】【増殖】」
ほぉ、増殖とはいいスキルですね。 【強欲】登録しとけばよかったですかね……。
一本の矢が二倍、三倍と増えていきあっという間に視界を覆い尽くす迄になった。
増殖は、指定した物を何十倍にも増やす事が出来るスキルです。
但し、増やした物は本物より威力が下がる様です。後、生物には使えません。
「使い方次第では強いんですがね。わざわざ、斬り落とすのもめんどくさいので【確率操作】」
目に移された%を操作し全ての矢の当たる確率を0%まで引き下げ、刀を鞘に戻し歩き出す。
矢は私の目の前まで迫るが、矢の全てが当たる直前で軌道を逸らし地面へと当たる。
「な、なんだと!!」
「貴方の攻撃はもう私には届かないよ」
弓の人が額に汗を浮かべながらも矢を放ち続けるが全て地面へと着弾し消える。
「当たらないってば」
刀に手を置きニコッと笑いながら刀を振り抜く、刀は綺麗にクリスタルだけを砕き弓の人の姿が光の粒子となり消えていった。
「んー、もうちょっと歯応えのある人が居れば楽しめるんですがねぇ」
刀を鞘に戻し後ろを振り返ると1人の女の人のお尻の下に気絶したルナとカミラさんが居ました。
「やぁ、今の見てたよーすごいねぇ君のスキル」
「誰ですか貴方」
ルナとカミラさんが負けるとはこれは中々面白そうな人が出てきましたね。
「私はスミレって言うんだよ。この2人も強かったけど君はもっと強そうだね。 弱い人ばっかりで飽き飽きしてた所なんだー」
「奇遇ですね。 私も丁度そう思ってた所なんですよ」
「じゃあ、やろっか」
スミレさんは地面に刺さっていたナイフを手に取り私に目掛けて投げる。
首を傾げて避け刀を抜き放つと同時にお腹に衝撃が走り私はその場で疼くまる。
「ダメだよー相手から目を離しちゃ」
「あは、良いですねぇ!楽しくなって来ましたよ」
刀を杖にして立ち上がり口に溜まった血を吐き出し口を歪める。
「あのスキルは使わないのー?」
「使いませんよ。多分ね」
やばくなったら使うかも知れませんが……。
刀を逆手に持ち直し身を屈め力強く地面を蹴り走り出す。
スミレさんの首を目がけて刀を振るうが、刃先にでこぼこの装飾が付けられたナイフ……所謂、ソードブレイカーって言われる奴ですね。
ソードブレイカーに受け止められ真ん中からポッキリと折られる。
「いいよねぇ、このナイフ。相手の武器を破壊できるんだよー?」
「厄介な武器持ってますねー」
さて、刀も破壊されてしまったしどうしましょうかね。後、何人残ってるか分からない状況で魔法使うのも得策でも無いですし。
「ぼーっとしてる暇あるのー?」
スミレさんが振るったナイフをギリギリで避け手首を捻り地面に投げ倒し顔に拳を叩き込むがお腹を両足で蹴り上げられ、私の身体が宙に浮く。
「頭の回転も早く、戦闘にも慣れてる。 貴方、何者ですか?」
「私? 暇を持て余している転生者だよ」
転生者……なるほど。道理で強い筈です。
転生者はその名前の通り他の世界で一度命を落として他の世界で生まれ変わった存在の事です。
基本的に例外なく反則級のスキルやら何やらを持ってます。
「貴方も何かの反則級のスキル持ちですね」
「せいかーい!まあ、なんのスキルかは教えないけど」
「大体、察しは付きます」
状況判断力は【並列思考】あの速さと攻撃力の高さは【黒技】ですかね。
小さい時からスキルがいっぱい書いた本を何度も何度も読んだ甲斐がありました。
「君も転生者だね」
「んーナイショ」
私の拳とスミレさんの蹴りがぶつかり合い足元に小さいクレーターが出来る。
「もっと私を楽しませて!」
「戦闘狂ですねー怖い怖い」
さーて、どうしましょうね。こっちは強化系のスキル持ってきて無いんですよねー、魔獣化も今やっても対策にもならないと思いますし。
「出し惜しみしててもしょうがないですね……まあ、頑張った方ですかね」
「へぇ、私に勝てる見込みあるんだ」
「まあね。“龍淵の奏”」
この魔法は単純です、魔力を消費し続けて自分の身体能力を数十倍に引き上げる魔法です。
しかし、効果が切れると身体能力が大幅に激減します。
簡単に言うと発動中はほぼ負けない身体になりますが、効果が切れるとゴブリンにも負けます。
まあ、諸刃の剣ですね。
「やーっと、本気になったかい?」
「ええまあ、貴方には勝ちたいとそう思いましたので」
ふぅと一息付き地面を蹴った瞬間、スミレさんの身体が宙を舞い数秒後には地面へと叩き落とされる。
「はっや!」
「まだまだ、ギア上げて行きますよ」
足払いでスミレさんの体勢を崩し、身体を回転させスミレさんを蹴り飛ばす。
「やれやれ、上手いこと衝撃を逃しましたね」
「まあねー」
スミレさんは、服に着いた土を払い落とし口から流れた血を親指で弾き飛ばし立ち上がる。
「私も魔法使っちゃおっと」
スミレさんの足元から綺麗な花が咲き、周りを花畑に変えていく。
「死なない事を祈るね」




