ヒーローさんと引き分けになりました。後、ヒーローさんの家族を助けます
「ふぅ、やれやれ。 余計な足止め食らっちまったな」
ヒーローさんはボリボリと頭を掻きながら、土煙の横を通り過ぎようと足を進める。
「ふむふむ、威力はまあまあって感じですかね」
私は風で土煙を吹き飛ばし服についた土をパンパンとはたき落としヒーローさんを見る。
「また、姿を変えやがったのか……」
「メルティは、遠距離型ですかね」
私の髪がエメラルドグリーン色に染まり、髪はサイドテール、背中には風で出来た羽が四枚生え、服装が薄い緑色のドレスへと変わる。
「さてさて、試したい事は大方出来ましたのでそろそろ終わりにしたいと思うんですけどどうですか?」
「俺もちょうどそう思ってた所だ。 いつまでもお前に足止めをくらう訳にはいかないんでな」
ヒーローさんの背後に幾つもの魔法陣が重なって展開されその中から真っ白なボディに雷を纏った身の丈を超える程の銃が姿を表す。
「魔導伝導銃【レールガン】」
「なら、私も最大火力で迎え撃ちますね」
私が指を鳴らすと私の周りに黒い竜巻が巻き起こり、その竜巻達が一箇所に集まりだす。
「【星繩零風】」
集まった竜巻が星の様に散らばりヒーローさんの周りを囲い込み大きく膨れ上がりヒーローさんを飲み込む。
「生きてたらまた戦おうぜ」
竜巻がヒーローさんを飲み込むと同時に雷が光速で放たれ私を飲み込む。
爆音と共にダンジョンの天井が崩れ私達がいた場所が瓦礫で埋まる。
数分静寂が続いた後、ガラガラと音を立て瓦礫を退かし血だらけのヒーローさんが姿を表す。
「ゴホゴホ、マジで死ぬかと思った……あいつは」
「全く、この狭い空間で大技を放ったのはバカでしたね」
あー、身体中が痛いです……。
「お互い無事でよかったな」
「無事……とは、言い難いですけどね」
ヒーローさんは、片腕が綺麗に無くなっており、私も脇腹の一部が焼失していた。
「これで生きてるのが不思議ですね」
「その傷でもまだまだ動けそうだなお前は」
何を言ってるのでしょうか? 脇腹の一部を失って動ける筈がありません、無理して冷静を装ってるだけですよ。
「いい加減帰ってくれません? 貴方は限界でしょう?」
「そう言う訳には行かないんだよ」
ふむ、何か事情がありそうですね。
「何故そうもダンジョン攻略に固執するんですか?」
「……母と妹が病気にかかってしまってな莫大な治療費がかかるんだ」
確かに普通に依頼するよりはダンジョン攻略した方が大金は稼げますからね。
「いくら程ですか?」
「二人で1千万くらいだ」
「たっか」
普通に依頼していても数十年はかかる額です。ダンジョン攻略だとしても数年はかかりますね。
治癒魔法は得意じゃ無いんですけど…。
「【リリースヒール】」
これは、欠損した部位を治す治癒魔法、但し時間が経ってたりした場合は再生出来ず魔力も大幅に持っていかれるので連続使用は2回が限度と言った所ですね。
「無くなった片腕が治った……」
「この位の回復なら出来ます。 どうでしょう、ここから立ち去ってくれれば私がご家族の容体を診ます。 治るかどうかはわからないですけど」
「確かに欠損部位を治す位だ試す価値はあるかも知れない。しかし、無理だった場合はどうする?」
「お金稼ぎを手伝います」
とは言え、所詮サファイアの私では大した手助けは出来ないと思いますけど。
「まあ、いい。どうせその話を断ってもまたお前と戦うことになりそうだからな」
「よく分かってますね。それでは、出発は明日の早朝でいいですか?」
「ああ、構わない」
「では、明日の早朝ルナベル大深層に来て下さい」
私は、一度ヒーローさんに頭を下げカエデに跨りその場を後にした。
そして次の日、約束通りヒーローさんがルナベル大深層にやってきました。
「いらっしゃいませ、私のダンジョンへ」
「お前が噂のルナベル大深層のマスターとはな」
「自己紹介してませんでしたね。私はこの、ルナベル大深層のマスター、ユキネ・ホワイトベルと申します。 以後お見知りおきを」
さて、それでは早速行きましょうかね。 ルナ達はこの時間はぐっすり夢の中なので静かに行きましょう。
「村まではどれくらいですか?」
「ここからなら、歩いて1週間って所か」
遠いですねぇ。流石にめんどくさいんでカエデ達に手伝っていただきましょう。
「ヒーローさんはクオンに乗って下さい。 カエデ、クオンお疲れの所申し訳無いのですが全速力でお願い出来ますか?」
「任せて下さい。3時間……いや、2時間で着いて見せます」
「それでは、ヒーローさん行きましょうか」
私達はカエデとクオンに跨り、一気に駆け出す。




