表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

勧誘

「ありとあらゆる生命の生涯が記された生命の書は世界樹の袂に或ると言われておる書庫に、死後格納される。ワシはこれ等を読むのが好きでの。キツネめ最後は面白い人生を送ったものよ」


 空気が揺らげば崩れそうな儚い本が養父の書だと知り少年達は固まったままでいる。

 侯爵はお構い無しに本を無造作にパラパラと捲り、読み上げては少年達の反応を見て楽しんでいる様だ。


「キツネはギフトを賜っていた。全ての理を知り得る『賢者』というギフトを。ワシはギフトの継承者を探していた 」


 侯爵は熱した鋼の様に赤い視線をアレフに注いだ。

 焼ける様な気がしてアレフはつい顔を逸らす。

 それが明確な回答だと侯爵は満足そうに熱気を帯びた目を窄めた。

 

「であるか。であれば単刀直入に言わせてもらう」


 侯爵は手をアレフに差し出した。

 握った杖の先端がアレフに向いたまま、窄めた為がより上気した熱気を宿した目のまま。

 少年達はこの状況を打破する方法を探している。

 捉えられ自分語りを聞かされ、正直散々だ。

 次の一手も読めず、この狂人めいた老人が差し出した杖に身構える固唾を飲む。


「貴様等、ワシの配下にならぬか?」

「「 は? 」」

「理解出来んか? ワシの駒となれと言っておるのだ」


 素っ頓狂な誘いに少年達の脳は嵐の海の藻屑に成り果てた。

 2度言われてもなお理解が出来ず暫しの沈黙に包まれる。


「 ―― 何言ってんだ?」

「 ―― ナメれてんのか?」

「ハッ、ワシは本気じゃぞ。言ったであろう、探しておると。ワシの駒になればお前達の願いも叶えてやろう。――ホレ、この様に」


 少年達の眼前に下げた杖を侯爵は赤く光らせた。

 咄嗟に仰反る少年達。

 光は彼らに絡み付いた拘束を舐める様につたい床にこぼれて広がる。

 体が自由になった少年達、脱兎の如く侯爵と距離を置いた。

 漸く俯瞰で全体を見れる様になったアレフはシミの様に光が這い、見慣れた幾何学模様が床に広がるのを見た。

 杖の光が消えチャンス到来とカイは老人目掛けてナイフを突く。

 カイに続きアレフがスクロールを侯爵へ叩きつけ陣を閉じる。

 鮮血が吹き、敵は縄に括られる。

 いつもの光景に二人はつつまれる……かと思えたが侯爵は毅然とニヤニヤと座っている。


「 縛を解けば飛びかかる。やはり畜生じゃな」


 侯爵は愉快そうだ。

 確かに当てた感触が二人には有った。

 血の一滴も付いて無いナイフ。

 光らなかったスクロール。


「さっきからゴチャゴチャゴチャゴチャ、ウルセェんだよ。わけわかんねぇ事ばっかりしやがって。俺らがお前の下に? 俺らの全てを奪うお前等貴族の配下にって?ありえねぇ」


 何を言っているのか分からない混乱する気持ちを振り払う様にカイは捲し立てる。


「兄弟!訳わかんねぇ、逃げるぞ!」

「おう、兄弟! 」


カイが答えアレフの側へ立つ。

アレフは錬成陣が描かれた紙を床に貼る、両手を床に突いた。

地を這う緑の稲妻が第五大広間を光らせる。

侯爵はニヤァと眼光を赤く輝かせる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ