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キツネの道

「まーたずぶ濡れ、風邪を引いてしまいそうだ」


 苔と石と汚水の世界にカイとアレフは居る。

 アーチ状に組み上げられた下水道、何百年も運用されてきた為か苔の上に苔が生す。

 苔の活動によってなのか、それとも並々と流れる汚水のせいなのか閉鎖的なこの道はジメジメと蒸して臭いが立ち登る。

 穴から落ちた拍子にずぶ濡れになったカイは楽しそうに嫌味を言って、これ見よがしに服を絞った。


「出るまで我慢してくれ、オボッチャマ」

 

 何か目印を探すアレフ。

 落ちてきた穴も見えなくなる程探し歩いてた。

 ようやくお目当ての物を見つけた。

 苔の上から耳を当て壁を叩いて反響を確認する。

 くぐもってはいるが反対は空洞の様だ。

 アタリだ。


 アレフが壁を崩す。

 人工的に掘られた跡が剥き出しの道が現れ、二人は入ってゆく。

 アレフは元通りに壁を治し、この道への入り口を隠す。

 ようやく乾いた土に上がり気が緩んだ二人はくたびれたのだろう、何も言わずとも座り込んだ。

 足を伸ばし、手を広げ、背筋を伸ばす。

 カイはマジマジとアレフを見る。

 綺麗だった服は落ちた拍子に至る所が裂けていた。

 

「なぁ兄弟。もう着替えちまいようぜ 。本当に風邪を引いちまう」

「だな。ここまでくれば大丈夫だろう」


 アレフは着古された服一式を二つ袋から取り出した。

 着替えて二人はまた暗闇の中を歩き出す。


「もうあの道具屋には行けないね」

「そうだな」

「ナイフ買っとけばよかったなぁ。見たか? めちゃくちゃかっこいいんだ」

「ナイフなんて切れれば一緒だろ? 」 


 その言葉、何かカイの琴線に触れたのだろうか。

 それは違うとナイフについてカイは熱く語り出した。

 刃の形がどうとか血抜き加工の秀逸さとかアレフにとってはどうでもよい。

 草臥れてきたせいか、いい加減鬱陶しくなり口を縫い付けてやろうかと思い出した頃、出口を照らすいつも見る街灯の光が見えてきた。

 

「なぁ兄弟、今日はもうお終いだろう? 」

「あぁ後は飯食って寝るだけだ。草臥れちまった」

「そうだな。疲れたなぁ今日は。そういえば次ってどこだったっけ? 」

  

 草臥れたアレフはぶっきらぼうに短く答えた。


「ガルドアヴィの家さ」

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