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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第九章

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普通に纏め狩り

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

「ひゃっほーーーー!! 俺も混ざるううううう!! せっかくだから新作まろやか爆弾をお披露目しようの会!! くらえ、ちょっぴりメイルショッぱい紙飛行機君!! ……と思ったけど魔物が多すぎるからやっぱなし!! 普通にやろっと!! そう、今日は普通、普通の日ーーーー!!!」

「グラン!? 採掘してたんじゃないの? 何その紙? ヒコウキクン? 何そ……メイルショッペーパーって何!? なんなのその紙!? 収納に戻す前にちゃんと見たよ、それメイルシュトロッ……げっ、魔物がきた!!」

「お? グランの新作おもしろアイテムかー? 気になるけど、先に釣ってきた魔物の群れをどうにかしないとなぁ」

「カーーーーーーーッ!!」


 アベルが連れてきた魔物の群れに、魔力と相性のよい羊皮紙にメイルシュライム君のゼリーで神代文字を書き、衝撃を与えると羊皮紙から水が飛び出してバシャアとなる付与をした。

 メルシュライム君がまだまだ育成途中で、あまり強烈なスライムゼリーではなく強い効果の付与はできないため、相手にぶつけるとバシャッと水が弾けて目潰しになる程度だ。

 だが、しっかり海水なので目に入ると痛いぞおおお!!


 で、紙にスライムゼリーで文字を書いて付与したはいいけれど、どうやって相手にぶつけるかという問題。

 俺の中で前世の記憶にある創作で見た、御札とかカードを投げるシーンのようにかっこよくシュッシュッと投げてパァンと敵にぶつけて効果を発動させるイメージだったのだが、薄い紙をパァンて投げるって無理じゃね?

 現実とは厳しいものである。

 仕方ないのでまたまた前世の記憶を頼りに紙を折って、紙飛行機なるものを作ってみた。

 少しかっこ悪いけれど、これをピューッと投げてパチンと当てればその衝撃で水が出て目潰しにはなる。

 ……はずだ。

 昨夜思いつきで作ったからテストをしてないんだよなぁ。

 ま、アベルの魔物底引き網に投げたところで意味がないので、今回は収納にお帰りいただいた。


「仕方ない、普通のものを投げるか。今日は普通にいこう」

 普通にまろやかな爆弾を投げて足止めをしよう。

「おっと、待つんだグラン。あんま強くない魔物ばかりだから俺の盾で十分止まるぜ」

 その盾、強い相手でも止まるだろ。

「俺とカリュオンとチビカメで計画的に片付ける作戦を立ててるから、余計なことしないで採掘してて!! 変なものは投げないで!!」

 底引き網猟に加わろうとしたら、アベルにお断りされてしまった。

 そんなぁ、ちょっとだけでもダメ?

「カーーーーッ!!」

 カメ君に威嚇をされてしまった。

 はーい、大人しく採掘してまーす。

 漏れたやつは処理するから安心してお漏らししていいよ。

 次から俺も混ぜてほしいな? え、爆弾を投げそうだからダメ? てか、鉱石を集めに来たんだから採掘してろ?

 はい! ごもっともな意見ですね!!


 このダンジョンは全ての階層を通して岩石や鉱物系の魔物が多いため、魔物から手に入る素材も鉱物が中心だ。

 中にはたまーに宝石なんかも混ざっていて当たれば美味しい。

 これだけ纏め狩りをすれば、宝石もそこそこ混ざっているはずだから稼ぎも悪くないだろう。


 今はこうして纏め狩りができるほどになったが、ランクが半端でなかなか大きな稼ぎが得られない頃は、チマチマと魔物を倒して偶然高価なものがポロリと出るとすごく嬉しかったなぁ。

 ダンジョンに通い始めた頃は、高価なものがポロリと出ないかなっていつもワクワクしていたな。

 冒険者活動にもランクの高いダンジョンにも慣れた今でも、高価なものが混ざっている可能性があるとワクワクするな。


 もちろん採掘をしていても、高価な鉱石や宝石がひょこっと見つかることもある。

 ここのダンジョンは魔物よりも採掘の方がやや高価な鉱石や宝石が出る傾向だった記憶がある。

 何かいいものが出ないかなー。ミスリルとか金剛石とは言わないからルビーとかサファイアとか生えていないかな。


 そう今日の俺は普通。普通に採掘して、普通に鉱石素材を集めて、普通におうちに帰るんだ。




 と思っていたのに。

「ごめん、一匹漏れたーーーー! それとこっちの回収もお願いーーーー!!」

「この辺も石ころが溜まってきたぜーーーー!!」

「カッカッカッカーーーーッ!!!」

「お漏らし処理と回収なら任せろーーーー!! 俺の一番得意な作業だぜーーーー!!」

「お漏らしって言わないで!!」


 結局、いつものポジションでいつもの作業をしている。

 あー、これこれ。この感じ、懐かしいーーーー!!

 王都でドリーパーティーに入っていた頃は、よくこんな感じで役割分担をしていたなぁ。

 アベルが底引き網をしてくる以外はだいたい、ドリーパーティーでのポジションと同じだから。

 ちなみにドリーがいると底引き網ではなくて、こちらから群れに突っ込むから普通の中の普通の狩りである。


 アベルが超広範囲の地震魔法で階層内の広い範囲を揺らして魔物をおびき寄せた後、カリュオンの方へと逃げてきてカリュオンの後ろへとワープする。

 そして押し寄せてくる魔物の群れに向かってカリュオンが挑発効果のある雄叫びを上げ、魔物達がカリュオンに向かって押し寄せる。

 それをカリュオンがいつもの光の大盾を展開する技で受け止め、そこにカメ君が激しい雨を降らせる。雨というよりも細く鋭い水の針といった方が正しいかもしれない。

 なんという完璧なフォーメーション。俺が爆弾を投げる幕はまったくなし!!


 このダンジョンの生物は土属性のものがほとんどで、水に弱いものが多くカメ君の強烈な水魔法により蹂躙されている。

 たまーに討ち漏らしたのが俺のとこにヒョコヒョコとやってくるのを、採掘の片手間で始末してしていたのだが、だんだんそちらに手を取られるようになり結局採掘作業を諦めて今に至る。

 そうなってしまった原因は辺り一面に散らばる大量の岩石――元は魔物だったものである。

 土砂崩れの後かなんかな!?

 ってくらいの大量の岩石でダンジョンの床が埋め尽くされている。


 このダンジョンに棲息する魔物は岩石や宝石のような土や岩に関係する姿のものが多い。

 そこそこ硬いやつらなのだが、それ以上の固さのものや水による浸食には非常に弱い。

 カメ君の雨でザクザク突き刺されて、それでも生き残ったやつはカリュオンの棍棒で粉砕されたり、アベルの放つ水魔法の高速回転円盤で切り裂かれたり、Cランクの魔物相手にAランク冒険者とカメ君がやりたい放題である。

 近くに人がいなくてよかったなぁ。


 そしてその勢いで倒すものだから回収も忙しい。

 最初は採掘のついでにやっていたのだが、一階層蹂躙して魔物が疎らになって次の階層へと進むというのを繰り返しているうちに、慣れもあってかアベルの底引き網の規模が大きくなって効率も上がり回収作業がクソ忙しくなって採掘どころではなくなった。


 そこら中に転がる岩石でできた獣やトカゲやヘビ――だったもの達。

 粉砕されて石ころになっているけれど、装備品や付与に使える鉱物を含んだものだから全部お持ち帰りだ。

 そうそう、普通っぽいスライムの素材にもなりそうだしな。忘れてない、忘れていないぞ! 普通のスライム育成!!

 帰ったら今日集めた鉱石で普通のスライムを作るんだ。


「ふぅー、ここって五階層目だっけ? やっぱ浅い階層よりも奥の方が魔物の数が多いね、それでもランクが低いからあんまり手応えはないけど」

「奥に来たこともあるけど、アベルのトレインスキルが上がってるのもあるんじゃね? だがこのくらいならまだまだ数が増えても受け止められるな」

「じゃ、次の階層はもっと集めてこよっと」

「カカカーッ!」

「そうか、カメッ子もまだまだいけるか。狩りの効率は儲けに直結、パーティーならば役割分担で更に効率化、そして何より纏め狩りは爽快感があって楽しい」

 魔物を殲滅し終えたアベル達が一息ついている。

 俺は黙々と回収作業。

 それにしてもすげー数の底引き網の跡だな。知らない人が見たらスタンピードの前兆だと勘違いしそうだ。

 人の少ないダンジョンだがゼロではないので、たまたま通りかかった人に誤解されないようにさっさと回収しよう。


 ん?


 と思ったのだが……。

「奥の階層から何人かこの階層に入って来たかも。五人……パーティーかな? やべー、早く片付けないとー。あー、次の階層手前で間に合わないー」

 ここは次の階層――六階層のすぐ手前。

 メイン通路を駆け抜けつつアベルが広範囲地震の魔法を振り撒いて、魔物を反応させてここまで連れてきて纏め狩り。

 それが終わって回収中に六階層方面から突然人の気配が現れた。


 ダンジョンの階層は空間魔法で区切られており、ダンジョン内で生まれたものはイレギュラーなことが発生しない限り生まれた階層から出ることはない。

 イレギュラーなこととは、外部から入ってきたものによって連れ出される、もしくは付着して共に移動する等。そしてスタンピードもイレギュラーなことに含まれる。

 そして各階層は空間魔法で区切られているため、別階層の気配は拾うことができない。

 いきなり人の気配が現れたということは、別階層から誰かこの階層に入ったということだ。

 やべー、早く片付けないとー。


「うっわ、すごい数の魔物の残骸? ということはここもか? 急いで戻って報告しないと――って、げえええええええ! アベル!!」

「は? いきなり何? アベルさんでしょ?」


 急いで片付けようと思ったけれど、もう遅かった。

 気配はすぐそこ、そして少し高めで若々しい男の声が聞こえてきた。

 そちらを振り返ると鮮やかな橙色をした短髪の少年が驚いた顔でこちらを見ていた。

 その後ろには仲間だと思われる同じ年頃の男女。


 わかる、アベルの王都での所業を知っていたらそういう反応になる。

 で、どっかで見たことある橙髪の毛と童顔だけれど、君の名前何だっけ!?




お読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] >>薄い紙をパァンて投げるって無理じゃね?  現実とは厳しいものである。 マジそれな。「ヒラヒラの紙を高速で投げて狙った標的に当てる」は、 「棒状の武器を指で扇風機みたく高速回転させて敵の…
[良い点] 新キャラに見せかけて、序盤のモブからの卒業? [気になる点] 「ここも」ってことは、やっぱり別口でなんか起きちゃってるんだ…裏切らないグランの引き!
[良い点] 早速普通じゃなくなりそうだった所でちゃんと主目的(?)を思い出せて偉い。 ……と思ったら既に津波石スライム活用してるじゃないですか! もう普通から外れてる! ヤダー! まあ威力はそれほどじ…
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