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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第九章

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夕食は超豪華に

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

 昼間に避暑を兼ねて洞窟の下見に行ったら色々あったけれどだいたい平和でそのまま平和に終わる予定が、帰っている途中で迎えに来たアベルとカリュオンそしてラトに遭遇。

 あっれーーーーー!? 少し早めに戻ってアベル達が帰ってくる前には家に到着していて、いつも通り夕食の支度を始めているはずだったのにナンデー!!

 俺の完璧な予定のどこに間違いがあったーーーー!?

 なんで今日に限って早く帰って来るんだよ!! 昨日も二日酔いで早く帰って来ただろ!!


 あ、今日は普通に早く作業が終わった? 帰って来たら俺がいなくて、ストーカーバッグで現在地を確認したら洞窟の奥の方だったから探しにきた?

 また変なことに巻き込まれていないか心配した?

 あ、ごめん……心配をおかけしました。

 って、アベルは心配症すぎー! もっと俺の過去の実績を信じてくれ!


 で、ラトは洞窟の奥が騒がしいので様子を見に来たら、俺を探しにきたアベル達と会った?

 ああ、ちょっとカメ君達と洞窟の下見というか、あまりに暑いから涼みに行っていたのだ。

 道? 迷わなかったよ?

 よくうちに遊びにくる、トレントの妖精みたいなモコモコちゃんが案内してくれたし、今日は見慣れないサラマンダーっぽい火の妖精君もいたよ。

 え? モコモコちゃんとサラマ君? さぁ? 俺もよく知らないな、どこから来てるんだろう?

 カメ君知ってるぅ~? そっか~、やっぱり知らないよね~?


 今日は危ないことはしてないってばー、ていうかいつもだいたい慎重で安全に行動しているーーー!! 今日も初めての場所でめちゃくっちゃ警戒していたけれど、何事もなかったぞー!!

 おおう、結果的に先に一人で行くことになったのはすまんかった。とりあえず夕食はめちゃくちゃ気合いを入れて作るから、食べながら話をしようじゃないか。

 そうだそうだ~、昼飯が質素な冒険者風豆スープとパンとリンゴだけだったからな、ああ~腹減ったなぁ~。





「ベヒーモドキタンのステーキとローストフェニクックにシーサーペントのムニエル、バハムートとクラーケンのシーフードパスタ、それからヴォルケニックルーラーのテールスープでございます。食前酒は一年もののリュネ酒をロックで。デザートは桃のコンポートをご用意しております」

 気分は隠れ家レストランのシェフ。

 アベルは美味しいものもしくは変わったものを用意すればだいたい機嫌が直るのでチョロい。

 これだけ頑張れば、機嫌もすぐに直るだろう。


「一緒に行くって約束したのによりにもよってチビカメと抜け駆けをしてー、料理で誤魔化そうたって――く、俺の好きなメニューで固めてきてずるい!」

 ふははははははー、勝ったな!!

「これは豪華なメニューだなー、これなら毎日抜け駆けしてもいいぜ。ていうか緑のモコモコかぁ……へぇ……」

 毎日このメニューだと我が家のエンゲル係数がやばいことになる。

 ん? カリュオンの表情が何かを企んでいる時のアベルみたいな悪人面になったぞ。ハイエルフ的には森の妖精モコモコちゃんに心当たりがあるのか?

「ふむ、この辺りでは見かけない食材ばかりでよきかな。昼間に来ていたというモコモコとサラマンダーもどきとやらの話も食事をしながら聞かせてもらおうか」

 ラトはモコモコちゃんとサラマ君が気になる模様。どっちもラトの結界をスルーしてうちに入って来たからなぁ、そりゃ気になるだろう。

「カァ?」

 カメ君は首を傾げてよくわからないアピール。

 うん、俺もよくわからない。

「わたくし達の留守中にやって来た緑のモコモコと赤いサラマンダーもどきですか……どこかで聞いたことがある方々のようなそうでもないような。それより今日のメニューは先日行っていたダンジョンのものですの?」

「何か悪さをしてるわけでもないし、遊びに来るくらいいいじゃない。それよりも今はこの美味しそうなご飯の方が大事よ!」

「どうせまた遊びに来られると思いますしぃ、今はご飯を食べることに集中しましょう」

 三姉妹はモコモコちゃんとサラマ君に心当たりがあるのかな?

 どっちも特徴的だし、知っていたらわかるよな。


 っと、それより飯だ飯。

 抜け駆けの穴埋めとはいえ豪華なメニューをたくさん作ったんだ、冷める前に食べないともったいない。

 かーーーーーー、昼間が質素だったぶん夕食がより一層豪華に見えるぞ!!

 腹が減ったーーーーー!! ああー、一口だけの食前リュネ酒が空きっ腹を刺激するーーーー!!




「あーもう、ベヒーモドキタンはずるいよ! ていうかタンって部位はなんでこんなにいくらでも食べたくなるの!? しかもバハムートにボルケニックルーラーに珍しい食材ばっかりじゃん! もうっ、今日の抜け駆けのこと色々聞こうと思っていたのに、食べるのが忙しくてそれどころじゃないじゃない! それで、洞窟のどの辺りまで行ってたの? 何か面白そうなものはあったの? 変な生き物に触ってない?」

 アベルは食べるか拗ねるかどっちかにしろ。

 そして食べるのに忙しいと言いつつも、しっかり質問攻めにしてくる。

「緑の葉っぱのモコモコかー。家にグランとカメッ子しかいない時に来るって? へー、ふーん、それで地下の洞窟に詳しかった? ふーん? やー、テールスープって輪切りの尻尾がドーンって入ってるのいいよなぁ。スープのくせに食べごたえばっちり!」

 だろー? だろー?

 豪勢にそしてボリュームもタップリ、マッチョ牛のボルケニックルーラー君の尻尾をドーンと煮込んだテールスープは今日の自信作だ!


「今日行ったのはドワーフの里から下の方へ下って行った先にあった地底湖だな。その湖の周りには地底植物がたくさん生えててさ、しかも地下の洞窟だというのにでっかい森もあったんだ。あ、そうそう地底湖の主っぽいでかい地底ナマズがいたよ。その湖の向こうが地底エルフの縄張りっぽい? あっちも行ってみたいけど、エルフ相手ならカリュオンがいる時の方がいいかと思って今日は諦めたんだ」

 はー、ベヒーモドキタンステーキうめぇー。やっぱ肉はタンだよなぁー。

「ふむ、その選択は正解だったな。地底エルフはあの湖の向こうに引き籠もりの種族故他種族との交流はほとんどなく、彼らがあの場所で暮らすことになった経緯もあって閉鎖的な思考の奴らだ。うかつに踏み込めば外敵と見なされて攻撃されてたやもしれぬ。ハイエルフが共にいれば、少しは警戒を緩めてくれるかもしれぬな。ふむ、今日の料理は強いだけの酒よりも上品なワインがよく合うな」

 その上品なワインってアベルが持ってきた奴だから、絶対に値段がやべーやつですよ、番人様。


「地底湖かー、あそこまでは比較的安全ね。そこまで案内したのがモコモコ? まぁ、無難なラインよね。ふふふ……そこから先はこわーい場所だから、進むなら覚悟しなさい。そうね、このバハムート、クラーケンのパスタが気に入ったから、これをお弁当にしてくれるなら私がもっと奥まで案内してあげるわ」

「ダメですよぉ、そこから先はもっと強くなってからの方がいいですよぉ。シーサーペントも美味しいですよぉ、お弁当はシーサーペントのムニエルでもいいですよぉ。でもヴェルの案内があってもまだまだじゃないですかぁ?」

「そうですわね……あそこから先、縦穴の底を探ろうとした者、迷い込んでしまった者……これまでに多くの者があの穴の下へ向かい帰ってこれませんでしたわ。そして森の最深部の下にある大空洞。そこは小空洞よりも更に深く、あそこは神の資質を持つ者すらおちれば出ることができませんの。洞窟を探検するなら深い場所へ迷い込まないようにお気を付けになって。わたくしはローストフェニクックが好きですわ」

 ひっ! 三姉妹の話し方が怖い!

 あそこまでの時点ですでになんかやばそうな感じがしたし、あの先は行かない! 強くなっても行かない!

 あそこの地底湖周辺で素材集めに専念する!!

 でもヴェルが案内してくれるなら……いや、ヴェルは脳筋っぽいから案内してくれるといっても油断できないな。

 やっぱ洞窟は奥まで行かないで安全なところまでにしよう。




お読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
ゲーム脳だから「そのうち行くことになるんだろうなぁ」と思ってしまった でも現実だとそういうとこ行かないよねぇ…普通に危ないもん グランの実家も大概だけど
[一言] >>もっと俺の過去の実績を信じてくれ! 実績(やらかし)
[一言] アベルのグチグチ回避のために手間暇かかる料理を作るグラン(笑) ネチネチと文句を並べるとグランが疲れちゃって昔懐かしの冒険者飯第二弾になったりするから、それよりは豪華料理の方がいいよね(…
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