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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第九章

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閑話:穏やかに流れる時

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

 亀よ、ここ数日ルチャルトラに来ていなかったようだが冒険者は飽きたか?

 ん? 一昨日飲み過ぎて昨日は怠かった?

 ふむ、たまには酒で失敗することもあるだろう。

 そうだな……古代竜だって常に完璧であるわけではないからな……一度失敗したことを反省し学び次に繋げることができればよいのだ。

 それに今日は何か嫌な予感がするから赤毛の家にいた?

 明日からはルチャルトラで冒険者の仕事と珍獣のお守りを再開する予定?

 ふむ、では明日以降よろしく頼むぞ。


 して、テムペストは何故ここにいるのだ。

 以前から目を掛けているハーフエルフがここに住み着いた? ついでに赤毛が不思議なものを次々出すし、たまに聞いたことのない言葉を喋るので面白い?

 ああ、あのバケツを着たハーフエルフならルチャルトラに来ていた時にチラリと見たな。

 ふむ……そしてやはり赤毛か……まぁ、何となく気になる奴ではあるよな。

 というか知識の塊のようなお前が知らない言語があったのか。


 って、ぐおおおおおーこれはババというやつではないか。

 しまった……いや、ババなど引いていない、引いていないぞ。これはキングのカードだ。


 ふむ、竜の目を使わずにカードで遊ぶというのもたまにはよいな。このババ抜きという遊びなかなか面白いぞ。

 竜の目、とくに古代竜ほど偉大な存在になると何でも見えてしまうからな。

 わからぬもの、見えぬものがあるというのも悪くない。

 む? テムペスト、貴様今竜の目を使わなかったか? ならば、何故ババを上手く避けた?

 え? 俺の表情に出ている? バカナッ!?


 このカード遊びも赤毛に教えてもらったのか。人間というのは娯楽をよく知っている生き物だな。

 確かに、このような遊びをしていると時間が穏やかに流れているような気がするな。

 ああ、我らにとって人の時間は一瞬だからな、奴らといる時がこうやってゆるりと流れるのは悪くない。




 赤毛の家を偵察に来たのだが、そこでテムペストに遭遇、直後に亀と赤毛に見つかってしまったのだが、侵入者除けをすり抜けて縄張りの中に入ったサラマンダーを追い出すかと思いきや、可愛いとか抜かしてそのまま中に招き入れられた。

 で、そのまま赤毛が出してきたカードゲームを、屋敷の軒先に置かれたテーブルの上で楽しんでいる。

 赤毛は俺達をほったらかして畑仕事。

 亀もデブネズミもこの状況を気にすることなく、三隻でババ抜きという遊びをしている。

 お前ら、古代竜としてそれでいいのか? 

 確かに長い竜生、こうして仮の姿でのんびりとカードゲームをすることがあっても悪くはないか……。


 ところで、この家の危機管理は大丈夫か? 小さいけれど今の俺はサラマンダーだぞ? 火を噴くかもしれぬぞ?

 ん? 亀が信頼されまくっているからサラマンダーくらいなら気にされない? 亀よ、それを自ら言うか?

 だが誰かの信頼を得るというのは悪い気はしないな。


 それに赤毛は小さくて可愛いものには甘い? 少しあざといポーズをすると色々貢いでくれてチョロい? しっかり見張っておかなければ騙されそう?

 ああ、確かに亀とデブネズミにすでに騙されておるな。

 ん? 何だ、やるか? よいぞ、ババ抜きは一度中断して、今度は背丈ではなく幅比べだ!


「はいはいはいはい、力比べは可愛いけどあんまりやるとじっとり暑くなるから程々にな。気温も上がってきたし畑仕事も一段落したから、午前十時のおやつにしようか。ほら、トランプは一度片付けるよ、フローラちゃんもこっちに来て休憩しよ」

 む? 赤毛の後をついてきているのは月下美人の幼体か。

 幼体の頃は植物系の魔物のような姿をしているが、大人になればその名の通り美しい人の姿となり、月の明るい夜ほどその力が強くなる上位の妖精――それが月下美人だ。

 赤毛の家は妖精まで住んでいるのか。まぁこの辺りは昔から妖精の多い地域だし、何ら不思議でもないか。


 植物の妖精故、火属性の俺のことは苦手……でもないのか?

 何だ、そんなに覗き込むと俺の強い火属性で火傷をするぞ。

 ふむ、サラマンダーを見るのは初めてで興味深いのか。好奇心が旺盛すぎるのは危険だが、知らぬことを学ぼうとする姿勢はよいぞ。

 うむうむ、サラマンダーは周囲に火の粉を散らす故、植物の多い場所には棲んでいないからな。よぉく、見て観察して学ぶがよい。

 俺はただのサラマンダーではないから周囲に影響がないように配慮できる偉大なサラマンダーだ、学ぶついでに敬ってもよいぞ。

 何だデブネズミ? 何かいいたそうだな?


「今日のおやつはコーヒーゼリー、やっぱ暑い日は冷たいゼリーだよなぁ。あ、モコモコちゃんにはこれも――昨日モコモコちゃんがくれたリンゴの入ったチーズケーキ。三時のおやつに合わせて作ったら、気付いたらモコモコちゃんがいなくなってたから残しておいたんだ。三姉妹達にも好評で一昨日やらかしたのもチャラになってめでたしめでたし。というわけでお裾分けだから食べてね」

 と赤毛がテーブルの上に出して来たのは、小さめのグラスに入った真っ黒いゼリー。その上には真っ白い生クリームが絞ってあり、更にはその上に真っ赤なチェリーが載せられている。


 コーヒーか……ユーラティアではあまり馴染みがないが、暖かい地方では実を食べたり種を茶のようにして飲んだりするな。

 ルチャルトラでも少数だがコーヒーの原種にあたるコフェア種の植物が自生しているぞ。

 それに島の向かいの陸地に住む貴族の娘が遊びに来たおりに、コーヒーをよく淹れてくれるな。この苦み嫌いな味ではないぞ。

 その小娘がなかなか交渉上手で、小娘が所有の商会にギルドとしてルチャルトラの名産物を定期的に納品する契約を結ぶと同時に、ルチャルトラでは手に入らないものを多く島に運んでもらっている。

 更にはリザードマンの子達の将来の選択が広がるようにと、島に読み書き計算を教える学舎を建て、才のある子が陸地で学ぶための支援も開始する手はずも整えおった。


 優秀で行動力のあるこの小娘、俺の冒険者ギルド長仲間の姪っ子でもある。

 あの一族なぁ……俺の縄張りの近所故に付き合いは長い一族で、昔から非常に優秀な人材を輩出する一族なのだが、そのほとんどが変わり者である。

 今代の者達もその例に漏れず優秀な変わり者ばかりだ。


 む? デブネズミの前にはコーヒーゼリーとは別に少し黄味がかった美味そうなケーキが出されたな。

 取りはしないからそう睨むな。一口だけ分けてくれても俺は一向に構わないのだが。やはりダメか。

 デブネズミの持って来たリンゴで作ったチーズケーキとな……ぬあ!? リンゴを偽装しているが力の実ではないか!!

 力の実は食べると身体能力の成長限界がごく僅かに上がるのだが、あくまで成長限界が上がるだけなので食べただけでは身体的になにも変化は見られない。

 一つだけではあまり効果はなく、継続して食べ続けねばたいしたことはない。一つの実をケーキにして分けて食べたのなら、少しだけ才能が伸びる可能性が上がる程度だろう。

 しかしこの手の能力を上げるものは、心身が伴わぬ者に与えると自滅の道に進みかねない危険なものである。

 その点、赤毛の性格を考えると多分大丈夫か? この実が何か気付いていないみたいだし? 大丈夫だよな!?


 おい、テムペスト! 気に入ったからとて、あまり世話を焼きすぎるなよ!!

 うむ、我らの力は大きすぎるが故、小さき者に力を貸すことが必ずしも良い方向になるとは限らないからな。

 わかっておるならよい。

 ああ、時にはそのことで道を誤る者もいる。

 その結末を見届け、ことによっては後始末までするのが与えたものの責任だが、その時の感情はできれば味わいたくないものだ。

 うむ、こやつなら大丈夫だと思うが、我らと小さき者は適度な距離を保たねばならぬのだ。

 いいか、亀! お前もだぞ!! 何事も程々にだぞ!! 程々に!!


 む、休憩が終わったらスライムを弄る実験?

 ん? 赤毛が何かを思いついて、何かを出して来たぞ。

 そ、それは……メイルシュトロオオオオオオオオオック!!

 何で深海にしかないそんなものを持っているのだ!

 俺の名推理からすると犯人は亀しかいない!!

 何故、そんな危険なものを赤毛に与えた!

 酔っ払ってついって、ついってレベルで渡してよいものではないぞ!!

 というかそんなものを地上に持って帰ってくるな!!

 備えあれば憂いなしって赤毛が言っていた? 憂いを備えてどうするのだ!!

 ぬあ!? 赤毛がそれをスライムに与えようと企んでいるぞ?

 やめろ、碌でもないスライムが爆誕する未来しか見えないからやめろ!!


 とりあえず、ぶん殴って忘れさせよう。

 いくぞ、お前ら!

 エンシェントドラゴン・トリプルストリーーーーーーーム!!

 ふう、これで無事に忘れてくれたか……この地の平和はこれで守られた。

 これは森の主に感謝されてもいいのではないだろうか。

 はて、俺も先ほど赤毛の言葉で何か大事なことを聞いたような気がするが忘れてしまったな……忘れたのならたいしたことではないだろう。


 ああ、うん……三隻でどついたからスライムを弄るつもりだったことまで忘れてしまったか……それはすまんかった。

 まぁ、こんな天気のいい日だ、ジッメジメとしたスライム弄りなんてせずに体を動かすとよかろ。

 え? 外は暑いから涼しいところに行く? 森の地下の洞窟?

 ああ、この世の土の中には長い時の流れの中にあったもの、できたものが色々と埋まっているな。

 この森の下の洞窟然り、王都の地下、溶けることのない極北の雪の下、ここより南にある大荒野ペトレ・レオン・ハマダの土の中。

 まぁ、ペトレ・レオン・ハマダに埋まっているのは引き籠もりの古代竜、マグネティモスだが。

 ……暫く姿を見ていないが生きているのだろうか。まぁ古代竜だから生きているだろうな。


 あ? もう洞窟へ出発する? 探検? 縦穴?

 待て待て待て待て待て!!

 暫くこの森に近付いていなかったから今はどうなっているか知らぬが、あの穴は相当深いぞおおおおおおおお!!

 というかその奥がどうなっているかは偉大な俺もよく知らん!!

 テムペスト、何か知っておるのか? 何故そこで目を逸らす?

 入り口だけなら問題なかろうてと? こういう奴らは行くなというと行くから、途中までチラ見せすると納得する?

 ああ、確かに赤毛はそういうタイプだな。


 仕方ない、偉大な俺もついていってやろう。

 うむ、我ら三隻いれば何の問題もなかろうて。



お読みいただき、ありがとうございました。


明日からグラン視点に戻ります!!

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― 新着の感想 ―
ああ、グランの身体が地味に肉体改造されてってるなw
[一言] グランは本当に問題児だぁね−
[良い点] 三隻は、似たもの同士w 危ない思いつきにより、危険なスライムが爆誕するところを、エンシェントドラゴン・トリプルストリーーーーーーーム!!で回避wwwその代わりに、カメ君に危険物を持ってきた…
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