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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第九章

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閑話:フローラちゃんは知っている

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

 フローラちゃんは植物なので太陽の光は好きだけれど、月の光もフローラちゃんの力になるので夜も好きだ。

 とくに満月の日にはフローラちゃんの力は一番強くなる。

 月のある時間なら、夜の間でもフローラちゃんは活動することができる。


 グランが働きすぎはよくないというので、フローラちゃんは日の出から日暮れまでの間だけ働くことにしている。

 それでも働きすぎだといってグランがおやつに誘ってくれる。

 昨日は美味しいリンゴの入ったチーズケーキというおやつだった。

 チーズなのに甘くて少し酸っぱくて、でも甘すぎなくて爽やか。もしかしてこれが大人の味ってやつなのかな?

 フローラちゃんはちょっと大人になった気分がして、今日は日が暮れるまでいつもよりいっぱい頑張れる気がした。


 フローラちゃんは時々休みながら太陽の光がある間だけ働いて、太陽がいなくなったらゆっくり休むことにしている。

 日が暮れるとグランは家の中に入るようにいうけれどフローラちゃんは夜風や夜露も好きなので、天候がすごく悪い日以外は夜も外で過ごす。


 だからフローラちゃんは知っている。

 夜の闇に紛れて活動する者達のことを。



 それは深夜、グランとアベル様、神獣様に最近やってきたバケツさん達のお酒の席がお開きになり、家の明かりが消え真っ暗になった後。

 フローラちゃんの主の三姉妹様達はすでに寝ている時間。

 お酒を飲み疲れたグラン達はもう寝てしまっているはずの時間。


 よく見ると、アベル様の部屋の窓から薄い明かりが漏れている。

 部屋の中にいるアベル様は、フローラちゃんがそれを見ていることに気付いていない。

 その明かりに照らされて、ベッドの上に座って本を読むアベル様のシルエットがカーテンにはっきりと浮かび上がっていることを。

 アベル様はいつも夜遅くまで本を読んでいる。

 アベル様の部屋には、難しい魔法の本や知らない文字の本がたくさん積み上げられているのをフローラちゃんは知っている。

 さすがアベル様、すごく勉強熱心だ。

 フローラちゃんもアベル様のようにたくさん本を読んで、将来は才女になるのだ。

 キルシェちゃんに借りた小説に出てきた、アクヤクレイジョウという才女になりたい。

 そして本を読みながら魔力操作の訓練もしているのを、フローラちゃんは知っている。

 ごく自然に、手足を動かすように、当たり前のように魔力を扱う練習を、アベル様がいつもしているのをフローラちゃんは知っている。

 その時、カーテン越しに見えるアベル様のシルエットから、時々たくさんの鳥の翼のようなものが生えてくることがある。

 あれは何の魔法の練習をしているのだろうか。



 アベル様が寝た後くらい――満月の日なら月が真上にある頃、バケツさんが時々窓からひょいっと飛び降りて、更に柵も越えて敷地の外へ行く。

 バケツさんはエルフの血が流れているので、夜の闇の中でも明かりがなくても視界が利くようだ。

 そして、少し広いところで黙々と重そうなトゲトゲ棍棒を振っている。

 よく見ると自分に重力魔法をかけているようで、森から出て来た魔物が重力魔法の範囲に入ってしまいペチャンと地面にひれ伏す。

 その重力の中でバケツさんは軽々と棍棒を振っているが、よく見ると短い時間で汗だくなっているので、きっと重力魔法で棍棒も体もすごく重くなっている。

 そして昨日から棍棒だけではなく弓の練習も始めたのを、フローラちゃんは知っている。

 まだ弓は使い慣れていないみたいで、的にちゃんと当たっていない。

 でも最初はもっと違うところに矢が飛んでいっていたので、短時間ですごく上手くなっているのを知っている。

 フローラちゃんはアベル様一筋だけれど、こっそり練習するバケツさんもかっこいいと思うので、フローラちゃんもこっそり冷たいお水と疲れの取れる花を近くに置いておいた。


 そしてそのバケツさんが知らないことをフローラちゃんは知っている。

 バケツさんが練習を終えて家に帰っていくと、森の中からゴソゴソと葉っぱの塊に短い足が四本生えたような謎の丸っこい生き物が出てくる。

 昼間、グランしかいない時に遊びにくる謎の葉っぱの塊。

 フローラちゃんと同じ植物の生き物なので何となく親近感が湧くけれど、主様達くらいすごい存在なのは何となくわかる。

 モコモコした葉っぱさんはフローラちゃんに気付くと短い前足を口の前に当ててシーッてする。モコモコさんがここに来ているのは内緒らしい。

 モコモコさんは昼間はグランのところに来ているけれど、夜は姿を見せずにバケツさんの様子を見守っていて、バケツさんが部屋に帰るのを確認して森の方へと帰っていく。

 よくわからないけれど、モコモコさんはバケツさんが大好きなのだと思う。

 キルシェちゃんに借りた本で読んだからフローラちゃんは知っている。

 種族を超えた友情はとても尊い。



 バケツさんが帰った後は朝までもう誰も家から出て来ない。

 東の空から少しずつ明るくなり始めると、神獣様が毎朝森へと出かけていく。

 そしてその少し後にグランが家から出てくる。


 外に出てきたグランは敷地を囲う柵に沿って、三周ほど敷地の周りを走る。

 家と倉庫とワンダーラプター達の家と庭と畑、グランの家の敷地はすごく広い。

 それを走り終わったら、軽く準備運動をした後ひたすら剣を振っている。

 ジュスト君がいた頃はよく一緒にやっていて最後にモギセンをしていたけれど、最近はずっと一人で黙々と剣を振っている。

 その時間はとても長い。バケツさんが夜中に棍棒を振っている時間よりも。


 グランはそれを、雨の日以外毎日続けている。

 フローラちゃんは、朝の畑仕事をしながらその様子をいつも見ている。

 グランが毎朝頑張っているのをフローラちゃんはちゃんと知っている。


 鍛錬が終わるとワンダーラプターの世話。

 世話をしながら、獣舎前の広場でワンダーラプターと遊んでやっている。

 これが遊んでいるように見えてどうやら戦闘の訓練らしく、最後はグラン対ワンダーラプター三匹のモギセンになっている。

 それは見ていると怖いくらいに激しい。

 でもグランはワンダーラプター達に怪我をさせないように上手くいなして立ち回っている。

 フローラちゃんは知っている。

 グランは当たり前のようにやっているけれど、三姉妹様の加護を受けたワンダーラプターはその辺の魔物よりずっとずっとずっと強い。

 それが三匹いるのをグランは当たり前のように全部よけて、ペチペチとワンダーラプター達の背中やお尻を叩いている。

 三姉妹様の加護を貰ったワンダーラプター三匹よりも、グラン一人の方がずっと強い。

 ワンダーラプター達もそのことはよく理解しているので、グランには絶対に逆らわない。

 そんなグランのことを、ワンダーラプター達が大好きなのをフローラちゃんは知っている。


 ワンダーラプター達と遊び終わった後は、畑で朝の収穫と水遣り。

 鍛錬も兼ねているからと、フローラちゃんの水魔法や水の魔石を使わず近くの小川からでっかい桶に水を入れて運んで来て、柄杓を使って畑に水を遣る。

 今日は水を遣りながら、もっと朝の練習を増やしたいけれどこれから暑い季節になるから辛そうだとぼやいていた。


 フローラちゃんは知っているよ。グランは今でもたくさん頑張っていることを知っているよ。


 グランだけじゃない、みんな見られていないところで頑張っていることをフローラちゃんは見ているよ。


 グランもアベル様もバケツさんも、みんなみんな頑張っているのちゃんと見ているよ。


 未来を語る女神様が言っていた。


 未来は努力に応えるとは限らないけれど、努力なしには未来は応えてくれないですよぉ。って。


 フローラちゃんには未来は見えないけれど、グラン達が頑張っているのはきっと報われると思っている。


 だって、フローラちゃんが読んでいる物語はいつもハッピーエンド。


 頑張る人はみんなみんな最後は報われる。


 フローラちゃんはハッピーエンドしか知らない。



お読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
あれ、読み返してたらなんか眼から汁が… 皆頑張ってる…フローラちゃんいい子… グラン視点だけではわからない第三者視点と、それを語るキャラクターの魅力と、更に深まる主人公達への理解…この作品の閑話本当に…
ウル(ズ)、ヴェル(サンディ)、(ス)クル(ド)って運命の三女神かよ!!
何気にグランが一番鍛練時間長いのかな? ただ魔法が使える分、カリュオンの方が身体に負荷を掛ける鍛練が、短時間でも質を高められるか。 アベルは自分の技能伸ばす訓練はしても、ドリーが居ないと肉体鍛練はほぼ…
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