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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第九章

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草むしりから始まる今日一日

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。


のんびりほのぼの新章開始です!!

 雨の季節が終わると暑い夏がやってくる。

 しかしまだ完全に雨の季節が終わったわけではなく、晴れた暑い日とぐずぐずとした天気の日が勢力争いをするように日替わりでやってくる。

 雨が降って翌日は快晴、そしてその翌日はまた雨が降る。

 なんともせわしなく天気が変わるのがこの季節。


 雨が降って晴れる、それが繰り返されるとどうなるかって?

 生えるんだよ。


 草が。


「うおおおおおおおお!! 草アアアアァァァ!!!! この草野郎どもめ、抜いても抜いても生えてきやがって!!」

 日の出直後、朝靄が漂いしっとりとした涼しさが残る時間から半ギレ状態で庭に生える雑草を引っこ抜きまくる俺。

 キエエエエエエエエ!! 一昨日も朝から草むしりをしたはずなのにまた生えてきやがってええええ!!

 というかスクスク育ちすぎだろおおおおおお!!

 うおらあああああああ!! 抜けろおおおおおおお!!


 ブチブチブチブチブチーーーーーー!!


 青々と伸びる雑草を掴んで引っ張ると、地中に深く広く張っている根がブチブチと千切れて雑草がスポーンと地面から抜け、俺はその勢いで尻もちをついた。

 くそぉ、根っこが千切れたからまたすぐ生えてきそうだな。

 まじこの雑草どもはどいつもこいつも、どこまでも根を張っていて抜いても抜いてもすぐに生えてきやがる。

 その辺のゾンビやスケルトンよりずっとしぶとくて不死身じゃないのか!?


 尻もちをついたついでにそのまま地面に仰向けに倒れ、早朝の空を見上げなから休憩。

 体は元気なのだが、ここ数日晴れた朝に繰り広げているエンドレス草むしりに俺のガラスのハートが砕けて散りそうになっている。

 どうせ草むしりが終わったら汗だくになっているので、朝食を作る前にシャワーを浴びるし、地面でゴロゴロしても問題ない。

 地面にゴロゴロとしながら、やたら草むしりばかりしていたような気がするここ最近を振り返った。




 王都の地下で酷い目に遭ってから一週間ほどが過ぎ、その間にその件の事後処理やら現地調査の立ち会いなどで何度か王都に行くことになったが、だいたい何ごともなく平和に過ぎた。

 難しいことはアベルやハンブルクギルド長がやってくれて庶民の俺は報告を聞いただけ。


 地下水路の最下層から町の下にあるという遺跡に繋がる通路があるということは相変わらず機密事項扱いで、あそこの存在は知っている側で管理することになったそうだ。

 アッ、俺も知っちゃったよ。

 大丈夫? 消されない?

 消すなら記憶だけにして欲しいな。

 何て思っていたら、定期的にあそこの調査をするメンバーに俺とカメ君も入れられていた。

 ですよねー! 発見当事者ですもんねー!!

 そしてそのメンバーというのがドリーパーティーとのこと。

 ギルド長とアベルそしてドリーが上手くやってくれたのかぁ。

 三人とも脳ミソまで筋肉っぽいのに、こういう根回しの手際もいいのでさすが貴族様。


 というわけで月に一回くらい、あの水没した町に異常がないか調査に行くことになった。

 月に一回か、王都で買い出しに行く頻度にちょうどいいな。

 そうだな、月に一度くらいならマルゴスのとこのソーセージが、その時その時で手に入りやすい素材で入れ替わるくらいの期間だ。

 月替わりで色々なソーセージが食べられるな。

 それにマルゴスのとこはソーセージだけじゃなくてハムも美味しいから、テイクアウト用のハムも買って帰ろうな。



 あの日以来バタバタとしているうちに日々が過ぎたが、晴れの日と雨の日が交互にやってきて、三姉妹の加護付き土壌に天然の水遣りと、降り注ぐ日光で雑草達がスクスクスクスクと育ってくれている。

 雑草に加護がかからないようにできないかと、スイーツと肉を積み上げながらお願いをしたが、そんなご都合主義なことはできないらしいとのことで、加護はこのままありがたく頂いて素直に生えてきた草を毟ることにして、この一週間晴れた日の朝は草むしりが日課となっている。

 夏が目の前のこの時期、晴れている日は午前中でも気温は高くなるため、草むしりをするなら日の出直後の涼しい時間がやりやすいのだ。


 夜明け直後のまだ涼しい時間、体を動かすのは気持ち良く草むしりも捗るのだが、抜いても抜いても雨の翌日にはニョキニョキ生えてくる雑草に心はすでに折れかかっている。

 くそぉ、こんなに草むしりをしているのにどうして無限に草が生えてくるんだ。

 草は風によって森から種が運ばれてくるのだろうが、草間に混ざって成長すれば大きくなりそうな蔦系の植物や、生えたばかりで雑草のようにも見える幼木まで目に付く。


 はー、抜いても抜いても終わんねぇ……少しだけ休憩休憩。

 地面に寝転がり明るくなったばかりの空を眺めていると、早起きの鳥が低い位置を飛んでいるのが目に入った。

 その時、その鳥から何かが落とされた。それはちょうど俺の上辺り。

 落ちてくるそれをキャッチしようかと思った直後、それが何か気付き慌ててゴロリ横に転がってそれを避けた。


 お鳥様のお排泄物ううううううううううう!!


 あぶねぇ……、うっかりキャッチするところだった。

 草むしりのために手袋をはめていても、お排泄物を手でも手以外でも受け止めるのは嫌だ。

 そしてそのお排泄物の中に混ざるもの――森の植物の種えええええええ!!

 雑草どころか蔦やらよくわからない幼木まで生えてきているのはお前らのせいか!!!


「このクソ鳥野郎、俺の射程内に入ったら撃ち落として焼き鳥にしてやるから覚悟しておけ!! きょええええええええ!!」

 すでにうちの上空を通りすぎ見えなくなりそうな鳥に向かって叫ぶ。

 鳥に聞こえていなかろうと、俺の言葉を理解できなかろうと関係ない。ただ叫びたかっただけだ。

 きえーーーーーー!! 人間様の敷地に勝手に植物の種をばらまく鳥を許すな!!

 ばらまくなら森にばらまいてくれ!!


 鳥相手に叫んでみたものの、うちの敷地で繁りまくっているのは雑草だけではない。

 いや、雑草よりも勢いがあってそのうち雑草を駆逐してしまうかもしれないアイツら。

 とくに敷地の外周に沿って植えられているお前、ニュン草!!

 ああー、雨と日の光のおかげでスクスクと育って大増殖だああああああ!!

 ニュン草以外にもシソ科の薬草達がスクスクと育ちまくり、隣接する植物のエリアをお互いに侵食して縄張り争い状態になっている。

 薬草達の蠱毒かな!?

 このまま放置していると最後にどいつが生き残るのかなぁ。

 いやいやいやいや、そうなる前に刈り取って調合や料理に使いましょうね。

 ちょうど草むしりも飽きてきたし、今日は増殖しまくっている薬草を刈り取ってしまおう。

 はいはーい、ちょっと刈り取りますよー。面倒くさいからとりあえず纏めて刈り取って収納に突っ込んでおこ。

 うん、薬草系は使うからね、いくらあっても問題ないよ。

 お家で収穫できるから森まで刈りに行く手間が省けたね!!


 こうして、今日も庭を緑で侵食する植物達との戦いから俺の一日が始まった。






「もー、グランは朝早くから外で大声だして何やってたの? ふああああ~、夜明け過ぎくらい? その声で目が覚めて、時々外から奇声が聞こえてくるから眠れなくなっちゃったよ」

 早朝の草むしりの後、いつものように朝の鍛錬、畑とワンダーラプターの世話を終えて朝食の準備をしていると、いつもは最後まで起きてこないアベルがキッチンにやって来た。

「朝食の準備はもう少しかかるから、食堂で待っててくれ。何なら手伝ってくれてもいいぞ」

 せっかく朝食前に起きてきてキッチンまで来たのだから、何もせずに食堂に戻るのはもったいなだろ?

「ううん、暑くて喉が渇いたから飲み物を取りにきただけ。紅茶は好きだけど、暑くなってくると冷たい飲み物がいいよね」

「おう、トレント茶ならそこの冷蔵箱で冷やしてあるぞ」


 夏はこれ。

 トレントの根っこを乾燥させた後軽く煎って、細かく砕いたもので煮出して作ったトレント茶。

 暑い季節はこいつを冷やして飲むと、冷たさと香ばしさが暑さを和らげてくれる気がする。

 しかもトレントの根なので、ポーションほどではなくとも軽い体力回復効果があり、これからの季節夏バテ防止にもピッタリのお茶だ。


 このトレント茶の素材は、すぐ裏の森に棲息するトレント・ベローチェという小型トレントのもの。

 小型で見た目は弱そうだが、動きは非常に素速く、めちゃくちゃ肉食系トレントである。

 同じ小型トレントでも、先日仕事で行ったトレント木場にいたスター・トレントのような、大人しく可愛いトレントではない。

 トレント・ベローチェばかりで纏まって棲息しており、獲物を見つけると集団で追い回して捕獲し、寄ってたかって一瞬で獲物をバリバリと食い散らかす危険な奴らだ、

 森に入った時に追い回されたことがあったので、何匹かは返り討ちにしてお茶になってもらった。


「はー、暑い日はやっぱ冷たいトレント茶だねー。ていうかグラン、なんだか土のにおいがするよ、朝から大騒ぎして土遊びでもしてたの?」

 キンキンに冷えたトレント茶をごくごくと飲んだアベルが、俺の方を見て眉を寄せた。

「草むしりはしたけど、その後シャワーは浴びたぞ。それに土のにおいなら問題ないだろぉ?」

 地面に転がったからかな?

 だが土の香りは、自然の香りで俺は嫌いじゃない。

「家にいるならいいけど、今日はリリーさんと打ち合わせがある日でしょー。食事もするし土のにおいもダメに決まってるでしょ」

 そしていつものシュッシュッとする浄化魔法消臭。


 そうだ、今日はリリーさんとアベル商会の打ち合わせの日だった。





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― 新着の感想 ―
[一言] おっさんへの辻褄合わせが終わったら、お姉様との会合(笑) カレー三昧は変わらない? そうして、カメ君もついて行く? カーッ(゜_゜ )?
[良い点] アンデッドよりも厄介な存在、庭の雑草!仁義なき戦いwグランさんの奇声w 次回はリリーさん! [気になる点] 除草剤でも開発出来れば楽になるのでは?自然に優しい成分なら有りでは?
[良い点] 元気な事は良いことだ [気になる点] 仕事多いなら外注でも良いんじゃないかな? グランってやること多いんだけど体壊さないか心配 常設依頼で人外さんも寝てる早朝の自宅での各種作業依頼出せばい…
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