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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第八章

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閑話:永遠を欲する愚か者

本日二話目ですご注意下さい。

急用で明日の更新が難しくなったので、明日更新予定分を本日更新させていただきます。


誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

「ぬお!? 転移魔法かっ!? ここはどこ――冒険者ギルドじゃねーか!?」

「赤毛君の攻撃は効いていたみたいだが、リュウノナリソコナイが何かしやがったか!? って、エクシィがいない!?」

「グランもいないなぁ。ん? カメッ子は送り返されちまったか」

「カメェ?」


 偉大な俺様なら抜けようと思えば発動前に抜けられる程度の転移魔法だったが、とりあえず変エルフの肩の上に乗ってすっとぼけておこう。

 俺はただのカメさんですよー。

 周囲を見渡せば、今朝赤毛達が依頼を受けるためにやって来た冒険者ギルドのロビー。

 そこに先ほどの臭い水路にいた人間達が転移魔法でポイッと投げ出された。


 ふむ、転移させられたメンツは赤毛と銀髪以外か。

 転移魔法の発動にも反応できないのろまどもめ。先日この王都というところで食べた、長くてグルグルと巻いている魔物の肉の腸詰めと引き換えに、俺様が鍛え直してやってもいいぞ。

 しかしこの転移魔法は銀髪の力だけではなく中の奴が力を貸していたから、ただの人間なら抜け出せなくても仕方ないだろう。

 赤毛はヒョイッと抜け出していたがな。


 転移魔法が完成してから発動するまでの猶予時間はほとんどない上に、今回のように対象者を決めて発動した転移魔法は対象を捕縛して発動するため、使用者の周囲に発動させるタイプの転移魔法より抜け出しにくい。

 ふむ、それを捕縛前にヒョイッと抜け出すとはあの赤毛なかなかやるな。

 あいつ、ちょっと抜けていておっちょこちょいでどんくさくて非常識だが、能力だけは無駄に高いんだよなぁ。

 しかもその能力と才能を最高に無駄遣いしている時の方が多い気がするが。

 まぁ、そういう奴は嫌いじゃないがな……………………嫌いじゃないだけであって好きなわけではないぞ!!!


 フン、銀髪の方は相変わらずいけ好かないけどな。

 中にいるキンピカの仕業なのか、ヒョロヒョロの軟弱者のくせに一人でアレを追うつもりだったみたいだな。

 昔からアレはそういう奴だ――あまり深い付き合いがあったわけではないが、あのジメジメでねっとりな性格は今でも覚えているぞ。

 自分で何でもできるだけの力があるから、何でも自分でしようとする。自分で何とかしようとする。

 それが自分でできることならいいが、そうでないものまで自分で抱え込む。

 すぐ傍に力を貸してくれる者がいても借りようとしない頑固者め。そして贅沢者め。

 ……やはりあいつはいけ好かないな。


 まぁ赤毛がヒョイッと残ったようだし、あいつらで何とかするだろう。

 俺も残ってやってもよかったのだが、あそこは臭い。臭すぎる。

 別に臭すぎてボーッとしていて転移魔法から抜けそびれたわけでない。


 そもそもあの生命とも呼べぬアレは遥か昔の遺物だ。

 つい先日同じような奴を人間がたくさん集まっている場所で見かけたが、アレよりずっと竜に近い。

 先日の奴は模造品の模造品の模造品のそのまた模造品くらいの出来で、それと気付くまで時間がかかったが今回のはかなり濃い。

 俺もあまり詳しいことは知らないが、不老不死を望んだ者どもが作り出した数々の失敗作の一つだろう。

 あのキンピカが竜の国を治め始めて間もない頃に一騒動あったようななかったような。

 はて、昔のことすぎて詳しく覚えていないな。

 うっすらと覚えているのは、竜を使ったキメラが数多く作られ廃棄された胸くその悪い話があったことだけだ。


 世界には我ら古代竜や神格を持った存在のように永遠ともいえる長い寿命を持つ者がいる。

 その中でも力を持つ古代竜の寿命は終わりが見えず、どの生命よりも強靱な体を持っている。

 小さな生き物の中にはその永遠の命と強さに憧れ、それを手に入れようとする者がいつの時代にもいる。

 俺はあまり小さき生き物に関わることがなかったので、それを望んだ奴らがどういう末路を辿ったのかはあまり知らない。

 あまり知らないが、知っている数少ない例はろくでもない結末ばかりだ。


 それなのに小さき生き物達は神々やそれに近い存在に憧れ、そして死を恐れ、永遠を望む。


 永遠などいうほどよいものではないというのに。


 永遠の命を望むのは命に限りがある者ばかりでない。

 命に限りがある者に情が移った、長寿の者が死に別れることに怯え、限りある命に永遠を望むこともある。

 これもまた俺の知っている限りではろくでもない話しかない。


 永遠などない。

 小さきものの命には限りがあり、情が湧いてもすぐ別れがくるのだ。

 奴らの命は短い。

 どんなに望んでも、別れの日がきてしまうのだ。

 俺は小さき者に情を移したことはないが、俺の縄張りの近くで勝手に俺を崇める海エルフ達が命を終えるのを見ていた。

 人間よりも寿命の長い海エルフですら、その命は俺の時の中では一瞬である。

 ただ一瞬で消えて行く者を、特別な感情などなく見送っていた。 


 あの頃の俺はそれがどういう気持ちかわからなかったが、今なら少しだけ永遠の命を求める者の気持ちがわかる気がした。

 小さき者と共に生きているおっさんは、どうやってこの気持ちを受け入れているのだ?

 性悪キンピカは、小さき者がいなくなる度にジメジメしていたな。それでも未だ小さき者の傍にいるようだが。


 なぁ、お前ら……その小さき者とずっと一緒にいたいとは思わなかったのか?

 この時が永遠に続けばいいと思わなかったのか?

 小さき奴らと同じ速度で歩みたいとは思わなかったのか?




「もう一度、先ほどの場所まで行くぞ。君は兄者に連絡係、最下層であったことを伝えて。あと先にある程度報告書纏めといて」

「少し落ち着け。まずは上に現状を報告はするとして、あそこにいた奴は俺達の攻撃が全く通じなかった。行ったとしても、俺達にできることはせいぜい水路に湧いているアンデッドと、それに影響されたスライムを処理するくらいだ」

「だがこのままエクシィを探さないわけにはいかないだろ!」

「アレは正体不明の生き物だ。グランが来なかったら正直やばい相手だっただろう。そんな場所にカシュー隊長殿を行かせるわけにはいかない。一度戻って連絡を待っていてくれ。アベルは俺達で連れ戻す」

「あの施設……いや、あそこからその奥に入ることができる者は限られている。だから俺達の部隊がドリー君達と行ったのだ。エクシィなら入っても大丈夫のはずだが、実際あそこの先がどうなっているかは俺も兄者も知らない。あるということだけしか伝わっていない」

 赤毛の仲間のデカイ男と銀髪に似ている金髪が何やら言い争いになりそうな雰囲気になっている。

 いつの間にか変エルフが防音の魔法を使っているな。こいつ変エルフのくせに意外と気が利くんだよな。


 こいつら赤毛と銀髪のことばかり気にしているが、あの場所が町の下ということを考えるともっと別の心配をした方がいいと思うぞぉ?

 まぁ、小さき者は俺のように鼻もよくなければ、魔力にも鈍感なのかもしれない。

 というかあの汚い水路が沌まみれでずっとあそこにいると感覚がおかしくなっても仕方がない。

 そして僅かではあるが沌の魔力が薄らと人の町にまで届き始めている。

 まだまだ死体が生き返る程の濃さではないが、放っておくとそのうちに小動物のアンデッドが発生するようになるだろう。

 それだけではない。


「グランが一緒なら大丈夫じゃないかしら? 今までも二人でフラフラと出かけていたじゃない。まぁ、色々やらかすことに関しては不安しかないけど? それより、あの沌の魔力の濃さは危ないわね。更に下があるならアンデッドどころの話じゃないかもしれないわね」

 黒いお姉ちゃん正解。

 あの二人がやらかしそうなことも、アンデッドどころではないってことも。

「そうねぇ。ダンジョンの発生現場に立ち会ったことはないけど、うちの実家の近くにある魔力が濃くてダンジョン化しそうな場所と同じような雰囲気になってたわね」

 白猫のお姉ちゃん大正解。

 うむうむ、あれは放っておくと町の地下がダンジョン化するぞ?

「むしろあの先はすでにダンジョンになっているかもな。未知のダンジョンの可能性があるなら一度ギルド長に話をして、それから体制を整えてから再度向かうのがいいんじゃないかな? さっきみたいな奴が他にも出てくると対策を考えておかなければ無駄に時間をくっちまうことになる」

 変エルフがものすごく常識的なことを言っているぞおおおおおおおお!!

「しかしエクシィがっ! うちの可愛い弟が未知のダンジョンに入って迷い子になってしまったらどうするんだ!! しかも赤毛と一緒に!!」

 あー、このどう見ても銀髪の身内っぽい金髪は暑苦しいしうるさいな。

 可愛い弟ってあの銀髪のことか? 何を言っているのだこいつは?

 あいつらもいい大人だから迷子になったくらいなら自力で何とかするだろうが、確かにあの非常識二人を野放しにするのは危険かもしれない。


 臭くて戻りたくねーんだけどなぁ。


 カー、仕方ねーなー。


 別に俺はあいつらが未知のダンジョンで迷子になろうがどうしようが関係ねーんだけどなぁ。


 カー、仕方ないなー。あいつらどんくさそうだし、迷子にもなりそうだなぁ。


 カー、仕方ない仕方ないな。あいつらには目印を持たせているから、今ならまだダンジョン内部でないようだから追いかけて行けるな。

 

「カッ!!」

「ん? どうしたカメッ子? アベルとグランのとこに行くってか? カメッ子が付いてたら心配ないな。てことでカシューさん。このカメッ子が行ってくれるみたいなんで、安心して待ってて大丈夫じゃないかな?」

「え? カメ? カメなの? カメで安心ってどういうこと? 君、どっかで会ったっけ?」

 どっかで会ったカメェ?

「カメェ?」

 ここは暑苦しいし、とりあえず行ってこよう。

 俺様があの非常識コンビのお守りをして連れて帰ってきてやるから、グルグルした魔物肉の腸詰めを頼むぞ!!

「よし、じゃあカメッ子よろしく頼んだぞ!」

「え? カメによろしく頼んじゃうの? どういうこと!? カリュオン君、ちゃんと説明して!? 君、不思議君すぎて考えてることがよくわからないよ!!」

 とりあえずこいつらの話には興味ないから、奴らがダンジョンに踏み込む前にピューッと追いつこう。

「カ~メ~」


 じゃあ、ちょっと行ってくるカメよ~。




お読みいただき、ありがとうございました。


明日の更新はお休みさせていただきます。月曜日から再開予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 永遠などない。それこそ永遠。 とあるゲームに出てきた一文だけど今も心に残ってます。 カメ君は当時は大した感慨も無くそういったエピソードの数々を目にし続けてきたんだろうけど、大きく変わった…
[良い点] カメ君、ツンデレ!グランさんに餌付けされてるくせにw 心配なのに、素直じゃないカメ君w お兄さん、アベルさんが心配だからって、ブラコン発動しちゃってるw
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