アンデッド日和
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無属性の魔石欲しさにアンデッド狩りをしないかとアベルに言ったものの、すでに三時のおやつの時間を過ぎておりもう少ししたら夕飯の支度をはじめる時間だった。
そろそろラトとカリュオン、そしてカメ君も帰ってきそうな時間だ。
アンデッド狩りはまた明日にするかなぁ。
天災の指輪は無の魔石を手に入れてから続きをやるとして、それまで空間魔法と時間魔法の付与の練習をしておこう。
――そんなわけで翌日、アベルの転移魔法で王都にやって来た。
「やーーーー、今日はマジでアンデッド狩り日和だなーーーーー!!」
「アンデッド狩り日和って何!? 超快晴だよ!! グランの家の辺りは相変わらず雨だったけど王都はカラッカラの快晴だよ!! アンデッドが大っ嫌いな、晴れて明るい気持ちのいい朝だよ!!」
「どうせダンジョンの中に入るから、外の天気は関係ないと思うがこっちは快晴だな」
「カーーーーーーッ!!」
雨続きのピエモン周辺と違い、王都は気持ちのよい晴れ。
どうせ王都のダンジョンに行くならと、手頃な依頼を受けて行こうとまずは冒険者ギルドにやって来たところだ。
そしてアンデッド狩りに王都近郊のダンジョンまで行くと言ったら、カリュオンとカメ君もついてきた。
カメ君が昨日持って帰ってきてくれた超珍しい深海魔魚のリヴァイアサンノツカイは、フライにしておいたからお昼にタルタルソースをかけて食べようね。
今日は以前ジュストを連れていったBランクのダンジョンへ行く予定だったので、カリュオンとカメ君が一緒なのは戦力的にも嬉しい。
ちょこちょこっとアンデッドを狩るだけなので、あまり無茶をする気はなかったのだがトレイン職人のアベルがいるので何が起こるかわからない。
今日の目的は沌の魔石を持つ魔物もしくはアンデッドをナナシで倒して、アライメント・ゼロの効果により無の魔石を手に入れること。
沌の魔石を持つ魔物は珍しいのでやはりお手軽なのはアンデッドかなぁ。
しかし人間程度の大きさのゾンビやスケルトンは魔石を持っていないか闇属性の魔石のことが多いので、狙うのは大型生物のゾンビかスケルトンもしくは上位のアンデッドだ。
しかし上位すぎて知能が高いものだとナナシの反動がキツくなるので、できればアホそうな大型獣系のゾンビかスケルトンを狙っていきたい。
あそこのダンジョンのお手軽アンデッドがいるのは十四階層か十八階層。
王都近郊のBランクは大型で冒険者の出入りの多いダンジョンのため、奥の階層までショートカットできる転移魔法陣が設置されている。
今日はその転移魔法陣でサクッと奥まで行って、サクッとアンデッドを倒して、サクッと無属性の魔石を手に入れて、今日中にお家に帰る予定だ。
十八階層のアンデッドはゴースト中心なので、実体のないゴーストからは魔石は手に入らないので十四階層かなぁ。
十四階層はほとんど人型スケルトンで、奥の方にドラゴンゾンビが闊歩しているなぁ。
でもドラゴンゾンビは元ドラゴンで知能が高そうだから、あんまナナシで斬りたくないなぁ。しかもめちゃくちゃ臭いし。
「アンデッドの魔石狙いっていったら二十二階層のヴァンパイアかぁ? 二十階層まで転移魔法陣で行って、二十一階層を駆け抜けたらすぐだよな」
あー、そっちもあるな。というか魔石狙いならそっちの方が圧倒的に効率がいいな。
でもあそこのヴァンパイアは時々元冒険者が混ざっているから、あのエリアあんま好きじゃないんだよなぁ。
元冒険者のヴァンパイアなんか斬ったら、間違いなく反動がやばい。
「二十二階層のヴァンパイアかぁ、確かに沌の魔石集めには効率がいいんだよねぇ。でもヴァンパイアは強いのになると知能が高くて性悪剣の反動がキツそうだし、かといって弱いのだとゾンビがちょっと強くなったくらいで魔石が入ってないこともあるし」
「とりあえず掲示板で依頼を見てどこの階層にするか決めようぜ」
渋い顔をして悩んでいるアベルを促し、受付ロビーの依頼掲示板へと向かう。
反動は少ないが魔石率が低く小さな反動をチクチク受けながら集めるか、反動はそれなりに大きそうだが魔石率が高くサクッと集めるか……後者の方がいいかなぁ?
朝の冒険者ギルドの受付ロビーは、いつものように依頼を受ける冒険者達で混み合っている。
とくに依頼が貼り出されたばかりの掲示板前は依頼を取り合う冒険者達で戦争状態だ。
昔は空間魔法で後ろから依頼を横取りするアベルと、よく依頼を取り合っていたなぁ。
さすがに大人になってからはそんなことやっていないよな? 人様に迷惑をかけていないよな?
主に混み合っているのは冒険者の数の多いDランクからCランクの依頼掲示板の前。
俺達が探している依頼はAからBランクの依頼でこちらはそこまで混み合っていない。
おいアベル、高ランクの冒険者とのトラブルは避けたいから空間魔法で依頼の横取りはやめろよ!?
って、受付にギルド長が出てきているから、今悪さして見つかると絡まれて面倒くさいことになるぞ。
王都のギルド長はやべーくらいにめちゃくちゃ強い魔法剣士で、冒険者の評価もしっかりしてくれて、頑張ったぶんだけ報酬に反映してくれる素敵なギルド長なんだけど、性格が粘着質でちょっと面倒くさいんだよなぁ。
目を付けられると、報酬がいいけれどきっつい仕事バンバン回してくるしぃ。
そして何より中年のくせに、見た目が若くてアベルやカリュオン並みに顔がいいのが悔しい。中年のくせにイケメンはずるい。俺よりイケメンはみんなずるい、うんこ踏め。俺よりイケメンはみんな有罪!!
ていうかギルド長が受付に出てきているのは珍しいな。何かあったのかな? 面倒くさい依頼を押しつけられたら嫌だから、さっさとアンデッド系の依頼を受けてダンジョンに行こっと。
今日の俺はアンデッドしか殺さないマンなのだー!!
あ、やべっ、目が合った!!
ヒッ!? 一瞬で俺達のとこに移動してきた!!
いつも思うんですけど、それ転移系の魔法じゃないっすよね? 普通にシュッと足で移動してるだけっすよね!?
「ちょうどいいとこに、Aランクの冒険者が三人もいるな。グランは久しぶりだな」
ヒッ! 声をかけられた!!
あ、お久しぶりでーす! Aランクになったグランでーす!
「ヒッ! おはようございます。お久しぶりです。今日はどおおおおおおしても重要な用事がありまして……沌属性の魔石を持つアンデッドを狩るという使命のために王都に舞い戻って参りました」
先手を打って今日は用事があると言っておく。
「そうだよ、今日の俺達はすでに用事があるから変な依頼は他の人に当たって!」
「ギルド長自ら受付で依頼の人探しをしてるってことは絶対碌でもない依頼なんだよなぁ。まぁ、今日の俺達はすでに用事があるから、力になれないのは残念だなー」
冒険者になった当時から説教三昧の上に、Aランクへのランクアップ試験でボコボコにされたアベルはギルド長にものすごく苦手意識があるようで、これでもかってくらい渋い表情になっている。
いつも陽キャのカリュオンも、ギルド長が自ら持ってくる依頼は面倒くさい予感がするようで、全然残念そうじゃない爽やかな笑顔で残念だと言っている。
いやー、力になれなくて申し訳ないなー。残念残念ーーーー。
「それはちょうどよかった。大量のアンデッドを相手にすることになりそうな依頼がちょうどここにあるのだが」
アッ!
「場所は王都の地下水路下層部付近。つい先日より地下水路に棲む生物の一部がアンデッド化し、その数を増やしているという報告があった。まだ下層部だけだが放置すれば上層そして町まで進出してくる可能性が高い。先に入った調査隊の報告によれば水路最下層、もしくはその更に下に濃い沌の魔力が蓄積しており、それが原因で水路内の生物の死体がアンデッド化しているのではないかとのこと」
ああーーーー、聞いてもないのに依頼の内容を話し始めたぞーーーー!!
そしていつの間にか俺達の周囲に、音を遮断する魔法がかけられているーーーー!!
もしかしてギルド長が魔法を使ったのかな? 周囲に聞かれたらまずい系の依頼?
やだー、問答無用で聞かされちゃったじゃないですかーーー!!
「最下層かその下?」
アベルの眉がピクリと動いたのが見えた。
ん? 最下層って一番下だから最下層じゃないのか? その下があるってこと?
「そうだ、これはアベルがいればスムーズにことが運びそうな依頼だな。今朝からドリーとリヴィダスとシルエットが、騎士隊と共に沌の魔力発生原因特定のため地下水路最下層に行っているが、最下層のアンデッドの数は先の調査時より増えていると思われる。故に念のため増員を送り込み、水路のアンデッドを徹底的に駆除するようにと国からの依頼だ。ランクは不明だが沌の魔力が現時点でも濃さを増しているということで、もしもに備えてランクの高い者を追加で送り込むことにした。万が一、討伐が困難なもの、戦闘になれば町まで被害が出そうなものがいるようなら速やかに撤退しろ。どうだ、行けるか?」
王都の地下にアンデッドか。穏やかじゃないな。
そりゃ国からの依頼になるし、混乱を避けるため機密性の高い依頼になるよな。
しかもドリー達が行っているのか。それなのに更に俺達に行かせるというのは、それほどの可能性がある案件なのだろうか。
俺達で何とかなる相手なら、調べたついでに倒してこいと言うギルド長が討伐が困難なら撤退しろと言っている。これはもしかして、やばい相手の可能性もあるのだろうか。
確かに正体がまだわからない相手なら、もしもの時は転移魔法のあるアベルがいると撤退が速やかにできて安心である。
沌の魔力の原因を無事に倒した場合でも、あの複雑で広い地下水路の中を徒歩で帰らなくてすむしな。
チラッとアベルの方を見るとめちゃくちゃ険しい表情をして考え込んでいる。
「みんながいいなら水路のアンデッド狩りにするか?」
ギルド長がピラリとこちらに見せた依頼用紙の報酬の額に目が眩んだわけではない。
ドリー達が行っているというのと、濃い沌の魔力というのが気になっただけだ。
そして何故か妙にこの依頼が気になった。
「うん、ちょっと気になるしこの依頼を受けよっか」
「王都の地下にアンデッドが発生するほどの沌の魔力って穏やかじゃないな。どうせ今日はアンデッド目的だったし、地下水路でいいぜ」
「カッ!」
賛成多数で地下水路に決定。
「じゃあ、その依頼を受けるから詳細と今わかっていることを教えてくれ」
ギルド長から依頼用紙を受け取りながら、その詳細を尋ねた
お読みいただき、ありがとうございました。




