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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第八章

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こんなクソメーもうやらん!!

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

 ブッブーーーッ!!


 すっかり慣れてしまった凍結攻撃に警報音。

「は? 今の避けただろ!! はあああああ!? 絶対、避けただろ!? あれで当たり判定とか汚くね!? 何だこのクソゲ……じゃないクソメーーーー!!」

 避けたと思ったのに突然向きを変えてぶつかってきた馬の模型に半ギレしながら、手に持っていた棒を床にたたきつけようとしたら、アベルがそれより早く空間魔法でヒュッと棒を回収した。

「グランって意外と不器用だね、プププ」

「あ"? 俺の半分も進めない奴が偉そうにしてんじゃねぇ!」

「魔物の模型に当たると、それと同系列のゾンビが落ちてくるのは面白いけど、ゾンビだから得られるものは微妙だなー。今回は馬の模型にぶつかったから馬かぁ? 馬は馬でもシーホースだけどなぁ」


 アベルに煽られて、つい言い返している間に背後でドスンという音がして、その後何かを重いもので殴るようなドスドスバキバキという音がした。

 落ちて来た魔物がカリュオンに殴り殺された音だ。いや、ゾンビだから最初から死んでいるな。

 振り返ると、だいたい馬だが足や尻尾がヒレっぽくて首にエラのある馬のゾンビが床に転がってビクビクと痙攣していた。

 ああ、いつもと違う聖属性のトゲトゲ鈍器なのね。


 俺達は今、この部屋を脱出するためのギミックに挑戦している。

 迷路の中のものに触れないように、棒で正解の道を入り口から出口までなぞればよいと思われるギミック。

 だがその単純なギミックが案外難しい。


 最初の辺りはまだ道も広めで簡単なんだ。

 少し進むとやたら曲がらないといけなくなり、最後の辺りは迷路内に色々とオブジェが設置されていて、それらが棒の進行を妨げてくる。

 追いかけてくる魔物の模型に、突然転がってくる岩の模型、いきなり動く壁に、突然流れてくる水。

 そのどれに当たってもブッブーである。

 ゴールに近くなればなるほど悪意の塊のような仕掛けだらけで、先ほどからブチキレっぱなしである。


 誰だ! こんなアホみたいなギミックを考えた奴!!

 妖精の地図だから、そんな奴はいないのだろうが、やはり八つ当たりをせずにはいられないくらい腹の立つギミックである。

 俺が失敗するのを見て煽っているアベルも、すでに何回も迷路のクソギミックにぶつかってキレ散らかした後である。 


 しかもこの妨害の仕掛け、どうやら触れたものに応じて落ちてくるものがある程度決まっているらしい。

 壁に触れた時は人型ゾンビ程度の弱い魔物なのだが、魔物の模型に触れればその魔物にちなんだゾンビが、転がってくる岩の模型に触れれば大きな岩が、木の模型に触れれば丸太が落ちてくる。

 最悪なのは水だ。

 迷路内の所々に溜まっている水が流れてきて、それに触れた時は部屋の中に突然水が湧き始め水攻めにされた。

 収納がなかったら危なく溺死だった。

 あってよかった収納スキル。そしてあまり綺麗ではない水のストックが増えた。

 とまぁ、思ったより面倒くさくてストレスを溜めまくりながら未だクリアできず。

 ちなみに失敗すると、再スタートする時には迷路内のギミックは元の位置に戻っている。

 無駄に高度な技術が使われている迷路の模型である。



「あぁー、もう! 前半はチョロいのに後半がエグすぎるっつーの! もう、切れた! 集中力切れたああああ!! 誰か交代!!」

「俺はそういうの苦手だからアベルに任せた」

「え、この迷路ムカつくから俺もやだよ!」

「カッ!」


 こういうのはイライラしている時にやっても上手くいかない。一度休憩して心の平穏を取り戻してから再チャレンジだ。

 しかしカリュオンもアベルもすでに失敗しまくって心が折れた後なので、交代してもらおうにもあまり乗り気ではない。

 まだ一度も挑戦していないカメ君だけが、俺の肩の上で元気よく前足を出した。


「チビカメがやるの? どうやって? 棒は持てても小さいから壁に掛かってる迷路まで届かないでしょ? うわっ、つめたっ!」

「カーッ!!」

 鼻で笑ったアベルにカメ君の水鉄砲がー!

 そして、そのアベルの手に向かってカメ君から触手のように水が伸び、その先端が人の手の形になりアベルの持っている棒を奪い取って地図の方へ伸びていった。

「なるほど、それならカメ君でもチャレンジできるね」

「カーーーーカッカッカッカッ!!」

 任せてくれと言わんばかりに、カメ君が高笑いをしながら棒を持った水を操って迷路のスタート位置につく。

 そして――。


 ブッブーッ!!


 ああーーーっとぉ!! 少し進んだところにある最初の難関、転がってくる岩に当たってしまったーーーー!!

「カッ!?」

「うお!?」

 ペナルティーの凍結がカメ君から伸びていた水の触手を凍らせ、カメ君もヒヤッとしたようで驚いている。

 そしてカメ君が乗っている俺の肩にもヒヤッとした感覚が。

 あああ~~~~~、薄い上着一枚の肩に凍結は結構冷たい~~~~!!


 凍結のペナルティーもあるのだが、岩にぶつかったのでそのペナルティーもある。

 天井がパカッと開いて、上からでかい岩が落ちてきた。

 それが転がり始めて俺達を押し潰そうとする前に収納の中にホイッ!

 この迷路が始まってから岩やら水やらが収納の中に溜まっていくううう。


「チビカメ、ダメダメじゃん。俺の方が進んでるもんねー」

「カーーーーーーッ!!」

 あー、アベルが煽るからカメ君がムキになって二回目を始めたぞー。

 失敗すると俺の肩が冷たいから、分厚いマントを被っているアベルの肩でやってくれないかな?

 君ら、なんだかんだで結構仲良しだよね?

 いてっ! 髪の毛を引っ張るのはやめて! そんなことをしているとまた失敗するよ!!

 ああ~~~、言った端から魔物の模型にぶつかってる~~~~!!

 牛の模型にぶつかったから海牛のゾンビだーーーーーー!! そうだよ、海の中に棲んでいる牛だよ!!!!

 というか肩冷たっ!!






「は? そこにもサメがいるのかよ!! 最高にクソかな!?」

 あれからカメ君もクソ迷路に心を折られてしまい、結局棒は俺に戻ってきた。

 そしてもう何周目かもわからなくなっているが、今度は床から生えてきたサメの模型にぶつかった。

「床から生えて来たってことはサメも床からきそうだね」

「魔物系は出てくるとこが迷路内の出現方法と同じだから対応は楽なんだよなぁ」

「カーーーッ!!」

 ペナルティーのサメゾンビが床からバーンと生えて来たが、すぐさまアベル達によって袋叩きにされて終わり。

 失敗しすぎてみんなすっかり慣れてしまい、強めのゾンビも出オチ瞬殺である。


 ゴール直前まではいけるようになったのだが、その手前でまるで立体モグラ叩きのように、床や壁そして何もない上から突然サメが現れてぶつかってくるのだ。

 絶対クリアさせないという強い意志を感じるゴール前の予想ができないクソトラップの連続に、もう俺の堪忍袋の緒がペタ着火エクスプロージョン!!

「きええええええええええ!! やめた!! もうやめた!! こんなクソメーもうやらん!!!」

「ちょっと!? グランがここでやめたら誰がこのギミックを解除するの!?」

 持っていた棒を地面に投げつけようとすると、例によってアベルが棒を空間魔法で俺の手から回収した。

 アベルが困った顔をしているが、これは俺の精神が削れるからいやだ。まだナナシでゾンビでもつついている方がマシなレベルである。



「でもこれ系はグランですらお手上げだと、誰もクリアできるわけないんだよなぁ」

 カリュオンですら困った顔をしている。

「いいや、ある。もっと簡単にこの部屋を出る方法はきっとある」

 はーーーー、最初からそうしておけばよかった。

 なんでこんなクソ迷路に付き合ったのだろう。最初見た時はちょっと面白そうに見えたのが悪い。

「え? そんな方法あるの? どうやるの?」



「強 行 突 破」



 ちょうどクソ迷路のせいでストレスが溜まって暴れたい気分なんだ。



お読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 全員、アンデットの倒し方だけ、プロに(笑)
[良い点] よくよく考えたら技術的にもメンタル的にも、突入面子が誰一人こういう細かい作業に向かない奴らでワロタ。 向いているのは出現する物への対処のみであった。 唯一向いてるかもしれなかったグランが…
[良い点] コチラを害そうとしている相手の思惑に乗る必要はないもんな。 出来るなら脳筋解決が一番だね。 しかしウミウシが海に住む牛と言うことは、この世界だとイルカは海に住む豚になりそうww
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