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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第八章

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ギミック解除の申し子

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

「グラン、大丈夫? やっぱその性悪剣捨てよ? ちょうどいいから海に捨てて帰ろ? いたっ! パンツの紐の癖によくわからない金具を飛ばしてくるんじゃないよ!!」

 ナナシが素速い行動でシーレオパードを即座に倒し、何事もなかったようにシューッと戻ってきてそのまま腰紐モードになったが、その何ともいえない反動で思わず顔に手を当ててしゃがみ込んだ俺。

 ニャーはダメだ、ニャーは。

 そうか海豹はニャーって鳴くタイプの大型猫科か……。


 そんな俺を心配するアベルが、そのついでにナナシを煽ったので、いつもの金具飛ばし攻撃をくらっている。

 パン紐と口ケンカをするイケメンという、なんともシュールな光景である。

 そして腰紐なのにどこから金具を出してきたんだ?


「グラン大丈夫かー?」

「おう、魔剣の反動ダメージはほとんどなかったのだが、一身上の都合でメンタルダイレクトアタックをくらっただけだにゃーん」

「何だかよくわからないが、にゃーんとか言ってるし大丈夫そうか。ま、宝箱を開けて魔物も一人で倒してくれたし、少し休んでていいぜ」

 にゃーんで大丈夫判定されるのか。大丈夫だにゃーん。

「そうだね。もう敵もいないし、ギミックは俺達でやるからグランは休んでていいよ」

「カメ~」

 ああ~、仲間の気遣いが身に染みるうう~~~。

 部屋の仕掛け探しはアベル達に任せて、少し心を休めようにゃーん。




 俺達がいる場所は船の最下層の倉庫だろうか。

 俺が爆弾を投げ込んだせいで色々壊れたり散らかったりしているが、まだ原形を留めている木箱や樽も残っている。

 適当な木箱の上に腰を下ろし、宝箱の中身の回収と仕掛け探しはアベル達に任せて一休みしながら周囲の様子を観察する。

 宝箱の中身は可もなく不可もなくな古い金貨や骨董品。

 また、たいした罠でもなかったし、魔物も断末魔がキツかっただけだしこんなものか。

 なんとなく悔しいが、今の俺はシーレオパードの断末魔にメンタルをやられてそれどころではない。

 休憩している俺の肩の上でカメ君も一休み中。ギミック探しなんて、高ランクのダンジョンに慣れているアベルとカリュオンがいれば十分だろう。


 俺が投げた爆弾でゾンビは吹き飛び、爆破の衝撃で朽ちている場所や、細かいものは粉砕されたり吹き飛んだりしているが、船底や船の一番外側の壁だと思われる場所はほぼ無傷である。

 つまり先ほど程度の威力の爆弾では船の外側の壁をぶち壊して外に脱出するとか、船そのものを爆破するとかは無理ということだ。

 強度の弱いところくらいは粉砕できそうだなぁ。

 よって、崩れて巻き込まれそうな場所以外は爆弾を投げても大丈夫ということである。


 もしかすると威力がアホ高い聖攻撃なら、ゴーストシップの外側の壁もぶち破れるのだろうか?

 カメ君が本気を出したらごり押し粉砕とかいけそうだけれど、巻き込まれたら俺達もやばそうだからそれは勘弁かも。

 そういえばカリュオンの因果応砲も聖属性だな。

 いざとなったらカリュオンを俺達でタコ殴りにして因果応砲をぶっぱしてもらえば、粉砕までいかなくてもゴーストシップに大穴は空くかもしれない。

 しかしゴーストシップもアンデッドなので、その存在の核となっている部分を破壊しなければ時間が経てば再生しそうだ。

 ここでのんびりしていると、先ほど上の階層にショートカットできそうな空いた穴も塞がりそうだなぁ。

 早くここの部屋から出る仕掛けを見つけて脱出しないとな――。



「見て見て、この迷路みたいなやつ。これが出口の鍵っぽいよ」

 壁に掛かっていた布を剥がしたアベルが何かを見つけたようだ。

「んんー、迷路か。なるほど、ここが入り口でここが出口って書いてあるな。それをこの棒で正解のルートを入り口から出口までなぞれってことか?」

 アベルが剥がした布の後ろの壁に、額縁に入った迷路の模型のようなものが掛けられていて、その額縁に嵌められていたと思われる指揮棒のようなものを、カリュオンが手に取って観察をしている。

 ゴールに近づくにつれ少しゴチャゴチャしてよくわからない飾りも見えるが、道自体はそんなに難しそうには見えない。


 迷路かー。そういうのはアベルもカリュオンも得意そうだから、このままギミック解除も任せていいな。

 いつもならギミックの解除は俺の仕事なのだが、あまり難しいものでもなさそうだし、先ほどのニャーが心にきているのでもう少し休憩だにゃー。


「そんな複雑な迷路でもないし簡単なギミックだね。カリュオン、その棒貸して、さっさとクリアしちゃうよ」

「おう。まぁ迷路に変な仕掛けがあるかもしれないし気を付けろよ」

「もちろん、じゃあやるよー。一応気を付けて……つめたっ!」


 ブッブーーーーッ!!


 カリュオンから棒を受け取ったアベルが迷路をなぞり始めたと思ったら、すぐにアベルが小さな悲鳴を上げ、その直後に不吉な音がした。


 ガコンッ!!


 ボトッ!!


 不吉な音がした後にパカッと天井の板が扉のように開いて、上からゾンビが落ちてきた。

 俺の目の前に。

 そして天井はすぐに閉じる。


「ふおっ!?」

「カーーーッ!!」


 木箱の上で寛いでいたので反応が遅れてしまったが、カメ君が肩からピューッと聖なる水鉄砲でゾンビを倒してくれた。

 びっくりした。

 ギミック解除失敗するとゾンビが降ってくるのか。カメ君がいれば安心だが、一応俺もセイクリッドウォーターガン君を出しておこう。


「おいおい、いきなりミスってるぞー。気を付けろよー」

 何をどうミスったのかはわからなかったが、とりあえず野次だけ飛ばしておいた。

「ええー、道は間違えてないっていうかスタートしていきなりヒヤッときて音がなったんだよね。あーもう、何なの!? くやしっ!」

「俺の目から見てもアベルのルートは間違ってなかったよなぁ。ちょっと俺がやってみるか、棒をこっちに貸してみ」


 ブッブーッ!!


 カリュオンがスタートしたなと思ったら、音と共に天井が開いてゾンビが落ちて来た。

 困るよー、君達ー。真面目にやってくれないとー。

 落ちてきたゾンビは、カメ君が素速く始末。俺の水鉄砲の出番はなし。


「ええー、カリュオンも間違ってなかったよね? というか最初の分岐のとこ曲がる手前で間違う場所なんてないのになんで?」

「だよなー。俺もヒヤッきたのと同時に音がしたな」

 アベルとカリュオンが壁に掛けられている迷路の模型を見ながら頭を捻っている。

「仕方ないにゃー、ギミック解除の申し子の俺がやってやるにゃー」

 やはり出番のなかった水鉄砲をしまい、箱から降りて迷路の模型のところまで行き、カリュオンから棒を受け取る。

 仕方ないにゃー、器用で賢い俺がサクサクっとギミック解除してやるにゃー。


「お、やっぱこういうのはグランだよなー。頼んだぜ」

「おう、任せろ……んぎゃ!?」


 ブッブーッ!!


 迷路の壁に添わせて棒を動かせば勢いを殺さずに動かしやすいと思い、スタート直後に壁に棒を当てた瞬間にヒヤッときて音がなった。

 このヒヤッとくるのは軽い凍結か。失敗のペナルティのようだな。

「もー、グランも即失敗してるじゃん」

 落ちてきたゾンビを始末しながら、残念な子を見る目のアベル。

 ええー、今のどこも間違っていないつかスタート直後。


「ちょっともう一回!」

 一回の失敗では何もわからないからもう一度始めから。

 スタートしてすぐに壁に棒を添わせるとヒヤッときてブー。

 んんんん?

 後ろでゾンビの気配がしてアベルがブツブツ言っているが気にしない。


「ちょっとカリュオン一度やってみてくれ。カリュオンとアベルがどうして失敗したか見たい」

「ん? 了解した」

 一旦棒をカリュオンに渡す。

 そして、カリュオンがスタートして棒を進めるのを観察する。

 カリュオンらしく勢いよく、俺が失敗した場所を通り過ぎスタートして最初の分岐。

 そこを最短ルートで曲がろうとして棒が壁の角を擦った。


 ブッブーッ!!


 耐性の高いカリュオンは、軽い凍結くらいではビクともしなかったが音が鳴ったので失敗したのはわかった。

 落ちてきているゾンビはカメ君とアベルにお任せで、俺はこのギミックの解除に専念だ。


「次、俺がやってみる。ちょっと試してみたいことを思いついた」

 カリュオンから棒を受け取り、迷路をスタートさせる。

 今度はゆっくり、壁を添わせないで棒を床に対してピンと立てて進める。

 スーッと棒を進め、先ほど俺が失敗したスタート直後の箇所を通過。

 まだヒヤッとするやつはこない。


 そして最初の分岐。

 棒を立てたまま慎重に正解のルートへと曲がる。

 よし、いけた。


 となるとやっぱり――。


 気になることを試すため、慎重に進めていた棒を迷路の壁にぶつけてみた。


 ブッブーッ!!


 予想通り棒を持つ手に凍るような冷たい感覚がきて、その後音が鳴ってゾンビが落ちてきた。

 わかったぞ!!


「進んでたみたいだけどやっぱり失敗してるじゃん」

 ゾンビを始末しているアベルからクレームが飛んで来た。

「いやいやいやいや、今ので今まで失敗していた原因がわかったぞ」

 俺偉い! これに気付かなかったら一生失敗し続けるところだったぞ!

 みんな俺のことをすごく褒めていいぞ!!

「お? 失敗の原因はわかったのか。さっすが、グラン。で、その失敗の原因は何なんだ?」


「えっへん。失敗の原因はこの棒がこの迷路の壁に触れたこと。おそらくこの迷路の模型内で床以外の部分に棒が触れると失敗になって、軽い凍結攻撃が来てゾンビが降ってくる。つまり棒を模型の中の床部分以外に触れることなく、迷路をゴールまで行かなければならないんだ」


 慎重にやればクリアできそうに見えるのだが、迷路の後半には曲がりくねったルートや、微妙に邪魔な位置に岩や木、仕掛けがありそうな建物の模型、そして魔物の模型まで設置されている。

 どう見ても棒を進めている時に動いてぶつかってくるやつだろ!?


 面倒くさいな、おい!?




お読みいただき、ありがとうございました。


明日と明後日の更新はお休みさせていただきます。金曜日から再開予定です。


ものすごいやらかしをしていたのでこっそり修正してます><><><

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― 新着の感想 ―
にゃーにゃー言い出したときはメンタルがヤバい時。自分の声でもいいからネコ=癒やしが欲しくなってる時だ!!ソースは自分。
[一言] 電g・・・氷結イライラ棒か(明後日の方を見ながら
[良い点] グランがやることができて気分転換になってよかったです [気になる点] ニャーンの遺言は本当にダメージ大きいですよ… ねこちゃんもわんちゃんもぴよちゃんもみんな可愛いですからね… [一言]…
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