表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第八章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

586/1111

効率を上げすぎると退屈になる

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

「行くぜ! 一号! 二号! 三号! そしてカメ君と毛玉ちゃん!! 最初に決めた持ち場に散って、その持ち場内のトレントを監視しながら魔物の対処だ! 名付けてゾーンディフェンス!! トレント木場防衛作戦!!」

 はっはっは、これで無駄に走り回る必要はないぞおおお!! 


「グエー」

「グギャー」

「ギョヘー」

「カ~ッ!」

「ホホッ!?」


 うむうむ、全員よい返事で打ち合わせ通りに散ってくれたぞ!

 よっし、これで俺の持ち場は森の一番近く。ワンダーラプター達とカメ君、毛玉ちゃん、そしてコリベロス達の包囲網を抜けないと、俺のところまでトレントが来ることはなさそうだ。

 はっは、つまりだいたい暇! 俺の役目は森からくる魔物の警戒と駆除!! 手が空いた時には薬草採り!! この様子だとこれがメインになるかなぁ~、いや~楽ちん楽ちん!!


「カーーーーーーッ!!」


 早速森の近くで薬草でも物色しようとしたら、カメ君から遠距離水鉄砲が飛んで来た。

 さ、サボってないよ!! ちゃんと、魔物を警戒しているから大丈夫、大丈夫!!


「ホォ……」


 毛玉ちゃんもそんな目で見ないで! ちゃんと魔物が来ないように見張っているから!!




 木場警備二日目、ワンダーラプターを三匹連れだそうとしたら、今日はカレンダーに亀マークを付けていなかったカメ君が出かける俺に気付いてついてきた。

 カメ君は俺の肩に、俺は一号に乗って森の傍を今日の仕事場の木場へと走っていた。後ろにはぞろぞろと二号と三号を連れて。

 すると途中で毛玉ちゃんが現れて、カメ君はピョーンと毛玉ちゃんの背中へ。

 え? 二匹は仲良し? 俺の肩より毛玉ちゃんの背中? うん、仲良きことは美しきかな? べ、別に寂しくなんかないんだからね! 


 カメ君と毛玉ちゃんもついてきているってことは手伝ってくれるってことかな?

 いやー、ありがたいなぁ~。今日は楽できそうだなぁ~。うんうん、後でちゃんとお駄賃をあげるからね。

 うんうん、これだけいたらあの広い木場もチョロそうだな!

 そうだ、無駄に走り回らないでいいように、だいたいの担当エリアを決めてやろうと思っていたんだ。無駄に走り回るよりそっちの方が絶対楽だからな。

 よぉし、そのメンバーにカメ君と毛玉ちゃんも入れて、パパパッと修正して今日のフォーメンション完成!

 そんな感じで今日はこのメンバーで楽々木場防衛が始まった。


 そしていい感じに担当分けをして、見張りをしながら薬草でも集めようとしたらカメ君から水鉄砲が、毛玉ちゃんからは冷たい視線が飛んで来たところだ。

 昨日魔物を追い払いまくって、それでも近付いてくる奴は駆除していたので、魔物の方も今日は警戒気味なのか昨日ほど積極的に姿は見せない。

 シカにイノシシにウサギにどれも美味しく召し上がれるので、ほどほどなら出てきてもいいのよ。

 姿は見えないものの、森の方からはこちらを伺うような生き物の気配は感じているので、目を離せばトレントを狙って木場に寄って来そうだ。

 だからトレント君達も森には近付かないで良い子で過ごしてくれよぉ?


 む? カメ君が水魔法でトレント達の上に霧雨を降らせ始めたぞ?

 おお、すごい! 落ち着かなかったトレント達がわちゃわちゃ集まって、気持ち良さそうに寛いでいるな。

 霧雨タイムが終わったらポカポカした日差しでほどよく暖かくて、更に気持ち良くなっちゃったのかな。ほとんどのトレント達が寄り添うように昼寝モードになってしまった。

 おかげで自由気ままに徘徊するトレントが減って、すっかり楽ちんに。さっすがカメ君!!


 しかも毛玉ちゃんが上空から魔物を牽制してくれているから、俺の出番はさっぱりない。

 たまに落ち着きのないトレントがウロウロ始めるが、ワンダーラプターとコリベロス達で脱走が防がれているが、彼らも仕事がほとんどなく手持ち無沙汰状態で地面にペタンと座って周囲を見張っている状態だ。

 うむ……平和すぎてやることがない。やはり薬草でも摘むか。

 そもそもピエモン周辺って、森の奥まで行かないと強い魔物はほとんどいないんだよな。

 よって今日は過剰戦力!! 俺は木場周辺の薬草摘み……いや、見回りに行ってくる!!


 といってもこの辺りにあるのはうちの周辺にもたくさん生えている薬草ばかりで、収納の中にもたくさんストックがあるので薬草摘みもすぐに飽きてしまった。

 仕方ないトレントの数でも数えるか。

 退屈だからではない、用心深い俺は念のためにトレントが脱走していないか確認を怠らないのだ。


 トレントが一匹、トレントが二匹、トレントが三匹……く、眠くなりそうだけれどめげずに数えるぞ!

 あれ? あそこのアイツ少し不自然だな。んん、普通サイズのとちっこいのが二匹くっ付いているように見えるけれど一匹か? 二匹だとしたら一匹は苗木サイズの個体だよなぁ?

 そんな奴いたかなぁ。小さい個体はいるけれど苗木サイズはこの木場にいる個体の中にはいなかった気がする。

 一応確認のために近付いてみたら、少し不自然な形ではあるが多分一匹かな? 面白い形のトレント君は俺に気付き、モコモコと移動していったのでやっぱ一匹だったのかな。

 うん、全部数えてみたけれどあれが二匹だったらトレントの数が一匹多くなってしまうから、やっぱ一匹で合っているな。


 昨日が慣れなくて忙しすぎたせいで、今日がすごく暇に感じてしまう。

 仕事の効率を上げるのはよいことだが、効率が良くなりすぎるとそれはそれで退屈で、なんとも贅沢な悩みである。

 やはり仕事は適度に忙しいくらいが丁度いいのだが、暇なものは仕方ない。トレントも大人しくしているし、魔物も近寄ってくる気配もないし、少し早いけれど昼休憩を回すかなぁ。

 今は暇でも、この後何かトラブルがあるかもしれない。休める時に休んでおくのは冒険者として仕事をするうえで当たり前のことなのだ。

 ワンダーラプター達を先に休ませて、後から俺とカメ君と毛玉ちゃんかな。



 ワンダーラプター達の飯はいつものように肉。

 三匹同時に休憩にさせても、トレント達はカメ君の雨ですっかり寛ぎモードに入っていて昨日のように荒ぶっていないので大丈夫そうだ。

 もちろんワンダーラプター達が休憩中は俺がちゃんと見て回っているぞ。


 む? さっきのトレントが窪みに嵌まるような体勢で寛いでいるな。相変わらず変な形のトレントだな。

 木の上部以外に根っこの辺りからも枝が出ているのかな。なるほど、この部分が苗木が張り付いているように見えたのか。

 こうして見てみると、トレントも一匹一匹個性的だなぁ。

 え? あんまり見るなって? もしかして恥ずかしい?

 ごめんごめん。

 つい観察していると、モコモコと向きを変えられてしまった。これは背中を向けられたのだろうか?



 ワンダーラプター達の休憩が終わると次は俺達の番。

 木場全体がよく見える場所に腰を下ろし、用意してきた弁当を広げる。

 今日はカメ君の弁当は用意していないけれど、ちょっと摘まむ料理くらいなら収納の中にあるから安心していいぞ。

 俺の弁当のおかずを摘まんでもいいしな。そうだ、果物を切ろうか。

 ああ、カメ君はリュックの中にコロッケをストックしていたんだね。お昼はコロッケかな?

 今日食べた分は後で補充しておくから、たくさん食べて大丈夫だよ。


 今日は天気が良くて気持ち良いけれど、気温も高いので少し暑いな。

 そんな日はやっぱシュワシュワプチプチの飲み物だよな!

 レモネードに秘密の魔法の粉を入れてシュワー。

 カメ君と毛玉ちゃんもいる? 揚げ物によく合うよ?

 仕事の休憩時間だけれどちょっとしたピクニック気分だなぁ~。

 

 ゴソッ。


 ん? アッ!!

 カメ君と毛玉ちゃんのレモネードを作っていると、すぐ横で気配がしたと思ったらいつの間にか寄って来たスター・トレント君が、先に作ったシュワシュワレモネードの入っている俺のカップに枝を突っ込んでゴクゴクと飲んでいた。

 ええ……トレントってレモネードなんて飲むの? シュワシュワプチプチだけれど大丈夫!?

 や、他所のトレントに勝手に食べ物や飲み物を与えるのはよくないな。すぐに取り上げようとしたが、その時にはすでにカップの中は空になっていた。


 プハー……ゲフゥ……。


 そしてカップから枝を引き抜いてこれである。枝の先端には緑の葉っぱがなんとなく動物の頭っぽくて、妙に生き物くさい行動に見えた。 

 トレントのくせにおっさんみたいにゲップをしやがって!

 む、てめぇはさっきから目に付いていた変な形のトレント君だな?

 ダメだよぉ、モコモコして可愛いからついおやつをあげたくなるけれど、君達の栄養管理は飼い主さんがちゃんとやっているから俺が勝手に食べ物をあげたらダメなの!

 ごめんな、というわけですでに飲んでしまったレモネードは仕方ないけれど追加はもうなしだ。さぁ、広いところに戻ってゆっくり寛いでなさい。


 ペシペシと軽く幹を叩きながら、俺達のところから移動するようにスター・トレント君に促す。

 しかしこのスター・トレント君、食い意地が張っているのかなかなか離れてくれない。

 ん? 俺が手に持っているシュワシュワプチプチの素になる魔法の粉が気になるのかな?

 モサモサと粉を持つ手の方に枝を伸ばしてくるが、ダメだよーこれは内緒の粉なのー。

 それにそのままだと植物には危ない成分だからダメなのー。うすーく希釈すると植物の病気対策に使えるけれど、粉のままはダメー。


 ほら、諦めて帰った帰った。俺達は飯にするんだ。

 くそ、コイツなかなかしつこいな。そんなにこの粉が気になるのか? レモネードが美味しかったのか?

 なかなか離れないスター・トレントに困っていたら、カメ君がしょうがないなーっといった表情で水魔法の構えを見せた。

 ありがとう、そのままどこかに誘導してくれ!!


「カ~……カッ!? カーーーーーーーーーーッ!!」


 と思ったら、カメ君が突然叫んだ。





お読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
炭酸はシュワシュワすると二酸化炭素になるから植物は好きかもしれないね。
[良い点] やっぱりこのモコモコさん、オタク臭のする説教スキル持ちの苔玉さんですね。 [気になる点] 神に近い存在でグランに餌付けされていないのってシュペルノーヴァだけではないでしょうか(まぁ彼は懐中…
[良い点] グランが完全に魔物使いと化しててワロタ。飼育員からランクアップ(?)しちまったなあ! でも魔物「使い」というほど主導権は握れていないような……? [一言] これはまた特徴的な個体が出てきた…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ