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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第七章

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恐るべし強運ギフト

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

「五日市に行っていたのですが暑くて早めに切り上げて戻って来たのですけど、近道をしようと裏路地に入ったら黄色いフラワードラゴンがいて、暑さでバテたのか日陰でぐったりしていたから、持っていた飲み物をあげたんですよ。ほら、グランさんが前にくれたあの水に溶かすと冷たい飲み物になるやつです。そしたら近くに他のフラワードラゴンもいたみたいでワラワラ集まって来て、飲み物を全部持っていかれてしまいました」

 フラワードラゴンってそういう感覚で遭遇するような生き物ではない気がするけれど、キルシェのギフトの恩恵なのか、とんでもない話である。

「キルシェちゃんが着々とグランの悪影響を受けている気がする」

 あぁ? アベルなんか言ったか?


 魔力酔い解消の薬のお礼にと、店の奥にあるパッセロさんのお宅にお邪魔してお昼ご飯を頂くことに。あ、カメ君の分も用意してもらってありがとうございます。

 パッセロさんは奥さんのマリンさんと一緒に店番に残って、アリシアとキルシェと一緒にランチタイム。

 ポーション用の瓶も安く売ってもらったのになんだか悪いな。というわけで、シーサーペントとクラーケンの干物をお裾分けしますね。

 で、昼ご飯を頂きながらキルシェの話を聞いているのだが、相変わらずの無自覚豪運である。


 フラワードラゴンは体長五〇センチにも満たない小型の亜竜種で、あまり人前に姿を見せることはなく、魔物というか妖精のような扱いを受ける生き物である。ランクの低い竜種だが、あまり見かけることもない稀少性と、ふんわりとしたパステルカラーの体色と花弁のような襟巻きの印象から、幸運の証しともいわれる生き物である。

 小型で戦闘力は低く臆病な性格だが、竜種らしく色々な魔法を使ううえにすばしっこく、見かけても捕獲は難しい。

 そんな珍しいフラワードラゴン、冒険者としてあちこちに行く俺やアベルでさえも数えるほどしか遭遇したことがなかったのだが、以前キルシェと一緒にいる時にフラワードラゴンの団体さんにもみくちゃにされるという目にあった。

 恐るべし、幸運ギフト。


 そしてあれからフラワードラゴンには会うことはなかったのだが、キルシェはまたフラワードラゴンに遭遇したらしい。しかもワラワラ集まって来たとか?

 運がいいとか悪いとかなんて、それが普通になっていると本人にはわかりにくいもんな。

「それで飲み物のお礼なのかわかりませんけど、なんだかよくわからない鱗みたいなものをくれたんですよ」

「鱗? フラワードラゴンのか?」

「いいえ、なんかもっと違う生き物のものというか、竜の鱗のようなのですが僕の鑑定ではそこまでしかわかりませんでした。えっと、ここで出しても大丈夫かな? グランさんとアベルさんがいるから平気かな?」

 ん? 何だそれ? 信頼されているのは嬉しいのだが、何となく嫌な予感がする言葉だな!?

「これなんですけど――」


「ぬお!?」

「うっわ……」

「カッ!? カーッ!!」


 キルシェが収納から取り出したものを見て、俺とアベルとカメ君の声がハモった。

 そしてカメ君が水鉄砲を撃つ前に、俺の皿にあったスモモをカメ君の皿に載せた。

 それあげるから水鉄砲は我慢して?


「キルシェ……それは……」

 キルシェが取り出したものを見て、その正体が何かわからなくても、鱗から放たれる魔力にアリシアも困惑している。

 その正体が何かわかった俺もアベルもおそらくカメ君も困惑している。


 これも絶対キルシェのギフトの賜物だろ!?


 そのキルシェの手にあるのは人の顔よりも少し小さい真っ赤な鱗。見るからにやばい火属性の魔力がプンプンと出ていて、キルシェが収納から取り出した瞬間部屋の温度が上がった気がする。

 その魔力、最近すごく馴染みがありすぎるものだが、そんなものをいきなり取り出されて、さすがに俺もアベルも引き攣った表情になった。


 それ、どう見てもシュペルノーヴァの鱗だよな!?!?!?


 キルシェの鑑定が弾かれたのが幸いだったというか、パッセロさんがこの場にいたら気付いていたかもしれない。

 何だってそんなものを!? フラワードラゴンに貰ったって言っていたな……フラワードラゴン君、もしかして偶然拾ったのかな? 持っていても熱いし飲み物のお礼にキルシェに押しつけたのかな?

 さすが幸運系ギフトの持ち主というか、キルシェが無駄な欲をかかない性格だから、ギフトも悪いように作用せずこういう結果になるのかもしれない。


「さっき飛んでいたレッドドラゴンの鱗かな?」

 少し表情を引き攣らせながらキルシェに告げる。

「空にも魔物がいるから、飛んでる時に大きめの魔物にぶつかって鱗が剥がれて落ちたのかな?」

 アベルの予想があっている気はするが、空中でいきなり古代竜に轢かれるとか不幸な魔物だな。ご冥福を祈っておこう。

「ひ、ひぇ……そんな気はしてましたけど、やっぱりさっきのドラゴンの鱗ですかねぇ。ひえええええ……竜素材ってだけでも高価なのに、あのでっかいレッドドラゴンの鱗となるとそれだけ……これ、どうしたらいいんでしょう……」

 うん、間違いない。ルチャルトラでお馴染みのシュペルノーヴァの魔力だな。しかもシュペルノーヴァの鱗だからさらにやばい値段になりそうだな。

 価値が高すぎて値段の付けにくいものだというのは、キルシェも商人なので何となくわかるだろう。それ故に扱いにも困り、戸惑っているようだ。


「売るつもりなら手数料はかかるけど冒険者ギルド経由で匿名でオークションに出してもらうのがいいかな。ただしその場合はギルド長に直接持っていった方がいいかも。ピエモンのギルド長ならそれなりに信用できる人だから、できれば他の職員にはバレないようにギルド長に直接だよ。ものがものだから、そんなものを持っているところを見られると、悪い奴に目を付けられるかもしれないし、噂になると家族やお店まで危ないからね。もしくはグランか俺に売る、または自分の装備にしてしっかり隠蔽系の付与をする」

 アベルが真面目な表情でその鱗の扱いの候補をあげる。


 鱗はドラゴン素材の中でもたくさん手に入り、今回のように偶然剥がれて落ちてくることもあるので、他の部位に比べるとかなり安めではあるのだが、上位のドラゴンの素材自体が稀少なため鱗であっても高い。しかもこの鱗はキルシェは気付いていないがシュペルノーヴァの鱗である。

 ルチャルトラでたまに拾えるとかで、古代竜の鱗の中では最も出回っているものではあるが、それでもどんな値段が付くかは庶民の俺には想像できない。

 そんな素材だ、迂闊に他人に見られると強奪しようとする者も現れるかもしれないし、ギルドのカウンターで出して周囲の冒険者に見られ噂になれば、キルシェだけではなくパッセロ商店ごと危なくなる。

 アベルの言う通り、ギルドに持ち込むならギルド長に直接交渉するのがいい。あのギルド長なら悪いようにしないと思うんだ。

 そして、その鱗の持ち主であるキルシェには、その鱗の正体を知る権利があり、売るならその値段を把握するためにそれを知っておくべきなのだが……シュペルノーヴァって言ったらさらに驚きそうだなぁ。


 どうしたものかと思いチラッとアベルの方を見ると、アベルが難しい顔をしながらも頷いた。

 だよなー、アベルはこういうことは持ち主の権利と判断を優先するタイプだもんな。

「その鱗の持ち主であるキルシェにはその鱗の正体を知る権利がある。それを知らないと正しい値段での取り引きができないからな。だからキルシェもアリシアも落ち着いて聞いてくれ」

 その素材の正体を知らなければ正しい値段がわからず、売ろうとして買い叩かれても気付かない。

「この鱗は何か特別な鱗だったりするのですか?」

 俺の言葉にキルシェがビクビクしながら尋ね返した。


「えぇと、これは古代竜の……おそらくシュペルノーヴァの鱗かな?」

 できるだけ驚かせないように明るく軽い口調で言った。


「え? 古代竜? シュペルノーヴァ? え?」

 最近冒険者になったばかりのキルシェには、現実味のない存在なのだろう。きょとんとした表情で首を傾げている。

「そうだねぇ、シュペルノーヴァの鱗は古代竜素材の中でも最も出回っているものだから、他の古代竜の素材に比べればかなり安いし、色もあまり良くないから古くなって剥がれ落ちる時期のっぽいし、やや小さめで傷もあるからその辺を考慮すると、金貨にして二〇枚から三〇枚くらいかなぁ? オークションで運が良くて五〇かなぁ? 今はシュペルノーヴァは活動期だから時々出品があってやや安めの時期なんだよね」

 商人のキルシェにわかりやすいようにアベルがだいたいの金額をあげたのだが、安めといわれても庶民からしたらその金額は恐ろしい値段である。

 一般的な庶民成人男性や平均的なランクといわれるDランク冒険者が毎日働いた時の一ヶ月の収入はだいたい金貨三から四枚くらい。

 ちなみに俺の家は金貨一五〇枚ちょいだった。


「金貨二〇枚……五〇枚……え? ええええええええええええ!?」


 金額が大きすぎてアベルの言葉をすぐに飲み込めなかったのか、少し間があってキルシェが声をあげた。


 だよなー、ちょっとフラワードラゴンに飲み物をあげたら、そんな高級品を渡してくるなんて思わないよなぁ。


 恐るべし、幸運ギフト。



お読みいただき、ありがとうございました。


明日の更新はお休みさせて頂きます。金曜日から再開予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 真っ赤~なう、ろ、こ~の、赤ドラさ~んは~おっでかけすっるった~び、あっち~こっちに~ ぽっろりぽろり~と~生え替わった鱗を~ おっとしまっくっ~て、こ~ま~り~も~の~♪←ひろった…
[一言] ひゅー!しかもギフト効果でオークションだと高値が付きそう! ピエモンギルド長に交渉した場合、またチャット魔道具で面白いやり取りしそうw
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