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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第六章

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海辺のティータイム

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

 アベルの転移で出てきた場所はルチャルトラのギルド前。

 海からの少し離れた場所だが、風に乗って届く潮の香りと共に、波の音も聞こえてくる気がする。

 ギルドの前の大通りを進めば港に、そこから海沿いに進めば波の穏やかな海岸に行ける。

 少し寂しいけれどもうすぐ海に帰れるよ。


「カアアアアアアッ!! ……フォッ!? フォオアアアアアアア!?!?」


「カメ君!?」

「あるぇ? カメッ子ー、どうしたー? あー、ルチャルトラはシュペルノーヴァの住み処だもんなー、いきなりで驚いたのか?」

 海の気配を前に体全体で喜びを表していたカメ君の様子が突然豹変して、俺のフードの中に飛び込んでしまった。

「カー……カァァァァ……ッ!!」

 何かに怯えているような、警戒している声がフードの中から聞こえる。

 確かにシュペルノーヴァの住み処が近いから、生き物の気配や魔力に敏感な生物ならその存在に気付いて怯えてしまうかもしれない。

「ん? どうしたの? "この島が気に入ったカメ~"? へぇ~、よかったよかっ……つめたっ! こんのチビカメ、まだまだ余裕があるみたいだね!」

 アベル曰くカメ君はこの島を気に入ったようなのだが、本当か?

 そして、アベルは俺のフードの中にいるカメ君に水鉄砲を撃たれたようだ。


「とりあえずギルドの入り口で騒いでいると迷惑だし、ギルド長が出てきたらおっかねーから海岸に移動するか」

 大きな町の冒険者ギルドと違い、ルチャルトラの冒険者ギルドはこぢんまりした造りなのでギルド前で騒いでいると、ギルド長室まで聞こえてしまうかもしれない。

 ルチャルトラのギルド長はなんとなくおっかないんだよなぁ。

「ああ、あの赤いリザードマンのギルド長か……あの人はやべーな。王都のギルド長と同じくらいやばそう」

「カァ……」

 あの恐いもの知らずのようなカリュオンにすら、やべーと言わせるルチャルトラのギルド長。そして王都のギルド長。

 うむ、触らぬ神に祟りなしだな。

 よし、見つかる前に海岸へ行こう。

「海岸には転移用のマーキングしてないから徒歩になるよ」

「おう、歩きながら屋台で買い食いしていこうぜ」

 ルチャルトラの町には地元のリザードマンや訪れる冒険者、観光客向けに、海や島のジャングルで取れるもので作られた料理を売っている屋台が結構な数ある。

 フォールカルテから船に乗って半日程で来ることのできるこの島に、観光目的で訪れる人間はそこそこいる。

 海は魔物の脅威もあるが、フォールカルテとルチャルトラの間は、ルチャルトラのリザードマン冒険者達が頑張っていることもあり、比較的安全なほうである。

「お、久しぶりにルチャルトラの不思議料理を買い食いするのも悪くないな。カメッ子も海に帰る前にルチャルトラ名物のバナナでも食って機嫌を直せよ」

「カー……」


 冒険者ギルドの前から歩き出し、大通りを通って港の方へ。

 冒険者ギルドから離れ、露店が並ぶ区画まで来るとカメ君の機嫌も直ったのか、フードの中から俺の肩へと戻って来た。

「ほら、今日でお別れだから何でも好きなものを奢ってやるぞー」

 今日で最後だからな、最後まで楽しくいたい。

「カァ……? カカッ!」

「"赤毛の料理がいい"だって? は? 君、カメのくせにあつかまし……ひやっ! この野郎! 水ばっかりかけやがって!!」

 アベルとカメ君はいつも楽しそうだなぁ。こんなに仲良くなって、カメ君がいなくなるとアベルも寂しがりそうだな。

「そっかー、俺の料理かー。海岸までいったら、ティータイムにするかー。ストックしているやつでもいいか?」

「フアアアアアッ!!」

 カメ君は俺の料理を気に入ってくれているみたいで嬉しいなぁ。

 カメ君が海に帰る前にマジックリュックの中に色々詰め込んでおくか。







「ちょうど午後のおやつタイムくらいの時間だし? ちょっとつまみ食いするにはちょうどいい時間だな」

「つまみ食いっていうかガッツリ食べるつもりだよね? しょうがないな、お茶は俺が淹れてあげるよ」

 俺もアベルと全く同じことを思ったが、カリュオンの胃袋はマジックバッグみたいなもんだから常識が通じない。


 砂浜に到着した後、できるだけ平坦な場所にテーブルと椅子を出してストックしている料理を並べていく。日差しが少し強いので日除けの傘を立てるも忘れてはいけない。

 オルタ・クルイローにいる時に昼ご飯を食べたので、ここはアップルパイやパウンドケーキなどの軽めのおやつ系だな。


「カメ君のリュックの中に入るだけ、カメ君の好物を入れておこうな。カレーコロッケにシーサーペントのフライにバハムートのトマトパスタにー、リンゴも入れておこうか」

「カッカッカッカッ」

 おやつをテーブルに並べ終わった後、ストックしていた料理を取り出すと、カメ君がテーブルの上でリュックを下ろして蓋を開けた。

 料理以外にもリュックも帽子も気に入ってくれているようで嬉しいな。

「もー、グランはチビカメを甘やかしすぎだよ」

「次はいつ会えるかわからないからな。たまにアベルと一緒にルチャルトラに遊びに来るからな」

 そこはアベルの転移魔法に甘えることにしよう。

「お? 俺も近くに来たら立ち寄ることにするぞ!」

「カカカカッ!!」

「仕方ないからたまに来てあげるよ。ん? "そんなに会いたいならたまに会いにいってやるカメ~"? グランの家は内陸部だから無理でしょ、諦めなよ。まぁ、どうしてもっていうなら、頑張って遊びにおいで」

 なんだコイツら、仲良しすぎるだろ?


「そうだ、カメ君にプレゼントがあるんだった」

「まだ何かあるの? 甘やかしすぎだよ!」

 アベルはそう言うがカメ君には色々お世話になったし、カメ君のおかげで十五階層ではめちゃくちゃ稼げたから、この程度では足りない気がする。それに今朝もカリュオンのやらかしをカバーしてくれたし。

「ほら、前にインペリアルドラゴンに閃光系ポーションを投げた時に眩しい思いをさせちゃったから、光耐性付きのゴーグルだよ。カメ君は水耐性はいらなさそうだから、防水加工だけ付与して後は土耐性を付けておいたから埃っぽいところでも使えるよ。こうして帽子に付けておいて必要な時に目まで下ろして使うんだ」

 食材ダンジョンにいる間にチマチマ作っていたやつで、昨夜渡すつもりが酔い潰れてしまってすっかり忘れていたのだ。

 よし、サイズもちょうどいいな。

「カッ!?」

 帽子にゴーグルを付けてあげると、カメ君はテーブルの上で水の鏡を出して自分の姿を確認している。

 尻尾が高速でブンブンと上下に振れているのできっと気に入ってくれたのだろう。

「それじゃあ、砂浜でティータイムにしようか」


 このティータイムが終わればいよいよカメ君ともお別れ。

 そんなに長い間一緒にいたわけでもないのに、人懐っこいカメ君にすっかりメロメロで別れが非常に惜しく思えてくる。

 テーブルの上の料理が減っていくのを見ながら、なんともいえない寂しい気持ちがこみ上げてきた。

 おい、カリュオン! もっとゆっくり食べろ!!




 そしてついにテーブルの上の料理がなくなった。







お読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] カメ飼いたくなって検索しちゃうくらいに可愛かったからさびしい。 カメ50年くらいいきるから私先死ぬかもって思って心折れた。
[一言] 涙の別れをして、バケツ、送って、家に帰ったら、カメ君、居たりして 食い物が無くなったので、赤毛の料理を補充に来たカメ とか(笑)
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