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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第六章

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何か恨みでもあるの?

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

「といってもどうするかなぁ。鮫顔君はでっかいから隙間を通るのは難しいしな?」

 でっかい背びれにもたれかかりながら、このでっかい鮫顔君をここから連れ出す方法を考える。

 ごり押しで破壊はどうやら無理そうだ。おのれ、ハニカム構造。いや、ただのハニカム模様だったわ。


「ところでクーランマラン様って、ちっこくなれたりしねーの? ほら古代竜って変化自在って聞くけど」

 そういえば古代竜が他の生物に化けて、こっそり人の町や村に紛れ込んでいた系の昔話は、ちょいちょい残っているな。

 しかしカリュオンの質問に鮫顔君がフイッと頭を上に向け、口を大きく開いた。

 その口の中に周囲を舞っている青白い魔力が吸い込まれていく。

「もしかして周囲の魔力を回収中でちっこくなれないってこと? もしくは効率が悪くなる?」

 古代竜の生態は全くわからないが、やはり本来の姿の方が能力は最大限を出せるということだろうか。

 俺の質問を肯定するように鮫顔君が口をパクリと閉じた。

「んじゃギリギリまで回収してから脱出しようぜ」

「そうだな、回収できるものはできるだけ回収したいもんな。その気持ちすごくわかる」

 持ち帰ることができるものは持ち帰る。当然のことである。

 鮫顔君に妙な親近感が湧いた瞬間だった。






「おっかしいよなぁ、ダンジョンの中のものなのに、この壁というか網だけ消えそうにないなんて」

 この場所を形成しているものがどんどん青白い光の粉になって鮫顔君に吸い込まれている光景を眺めながらカリュオンが言った。

 しかし空間を遮っている壁は健在で、そこからは強力な火属性の魔力を感じる。

 試しに収納に入っていた岩を投げつけてみたら元気に赤いハニカム模様が光り輝いて火の玉が飛んできた。

 ついでに鮫顔君が面倒くさそうな顔をしながら火の玉を消してくれた。


「この空間を形成している魔力とは別のところから魔力を供給されていそうだな」

 ここの空間が作り出したものから出ているのは青白い光の粉、水属性の魔力だ。これは鮫顔君の体に吸い寄せられるように集まり吸収されている。

 カリュオンの説ではこの空間はこの鮫顔君の魔力で作られているだろうということ。

 そして鮫顔君が動き出したために、空間を形成していた魔力が鮫顔君には回収され、空ももう天頂が僅かに残るのみになりこの場所が消える時が近いことを感じさせる。

 その中で鮫顔君に回収される様子のない赤い光を放つ壁。衝撃を与えれば火球を放ってくる壁は火属性の魔力を持っている。

 魔力の供給源が別であると考える方が自然である。

 半月間この空間で暮らして、カメ君や島や海のいる生き物は当然ながら、生えている植物も水属性を持ったものか水と親和性の高いものがほとんどだった。

 土属性や風属性のものはちょいちょいあったが、水と相性の悪い火属性のものは数えるほどしかなかった。


 あの島……鮫顔君の上にあったもので火属性だったもの。

 鮫顔君の像を燃やしていた炎、あれは俺がけした。そして島の中央の神殿にあったシュペルノーヴァの石像。

 あの神殿ではルチャルトラで体験したシュペルノーヴァの魔力と同じ魔力を感じた。

 そこにあるだけで重いものに押さえつけられているような、重厚でそして熱い魔力。

 他の祠に比べあの神殿だけ建物がやたら豪華で、シュペルノーヴァの像まで置いてあった。

 燃えている像のパーツは他の祠にもあったにも関わらず、あの神殿だけ妙に熱く、そして重い魔力で満ちていた。


 あの神殿は鮫顔君が動き出した時に海の中に落ちていったよな。

 だが、あそこにシュペルノーヴァの魔力の発生源があったのなら、まだ残っているかもしれない。

 それを回収するか破壊すればこのバリアも消えるかもしれないな。


「おい見ろよグラン。あそこ何か赤いぜ?」

 島があった場所辺りまで戻れば、火の魔力の元を見つけられるのではないかと考えていたら、カリュオンがそちらの方向を指差した。

 すっかり海水がなくなり、剥き出しの海底が広がる暗い空間。今いる場所から離れている場所にほんのりと赤い光が見える。

 島があった辺りだろうか? 海の中に落ちて沈んだ神殿が海水が消えて出てきたのかもしれない。神殿の建物が水の魔力で作られているものなら鮫顔君に吸収されて消えていそうだな。

 神殿付近に何か隠されていたのなら出てきていそうだ。

 赤く光っているのは鮫顔君が吸収していないシュペルノーヴァの魔力か?

「あれがこの空間にある火属性の源、シュペルノーヴァの魔力かもしれないな」


 カッ!!


 俺がそう言った直後、鮫顔君が赤い光の方へ水の塊を放った。

 え? 確認なし!? 思い切りよすぎ!! あれ吸収しなくていいの? 確かに、火は相性悪そうだから消しちゃった方が早いよね?

 鮫顔君の放った水の塊は遠く離れた赤い光の場所に着弾し、大きな水柱が上がった。

 少し遅れて空気が震え、ドーンという音が俺達のところまで届いた。

 すごくカジュアルに水の塊を放ったように見えたけれど、すごい威力だね。なんかシュペルノーヴァに恨みでもあるのかな?


「おっ、グランの説が正解だったな。壁の赤い光が消えそうだ」

 カリュオンの声に壁の方を振り向くと、壁には薄く赤い光のハニカム模様が浮かび上がり、それが糸が解けるように崩れ始め、赤い光の線が空中へとふわふわと伸びていった。

 その赤い光の糸は空中を舞うように漂い、俺達の横を通り過ぎて流れていった。

「模様が崩れたら通れそうだな! やったぜ! ちっこくならなくてもここから出られそうだ!」


 ドオオオオオオオオオオオオオンッ!!


 その直後、背後から轟音が響き熱い空気が流れてきた。

 振り返ると、先ほど赤い光があった場所、鮫顔君が水球を叩き込んだ場所で赤い火柱が上がっているのが見えた。

 そしてハニカム模様から解れた赤い光は、その火柱へと引き寄せられるように漂っていっている。

 俺は今、めちゃくちゃ嫌な予感がしている。


 火柱が横に大きく広がり、それはまるで大きな翼を広げた生物に見えた。

「すぐに外に出るんだ! もう壁は消えている!」

 カリュオンが吠えるように叫んだ。その声は珍しく、余裕を感じない。

 わかる、あれはやばいやつだ。

 鮫顔君がドスンと壁に向かって踏み出した。しかしその体は大きく、海水がほとんどなくなった今では非常にゆっくりした動きだ。

 鮫顔君が歩くと残っている海底も踏み潰され光の粉になって巨大な体に吸収されていく。

 ゆっくりとした鮫顔君の動きとは対照的に、真っ赤な巨大な炎が翼を大きく広げこちらに高速で飛んできているのが見えた。

 星も空もほとんどが消え、天頂に僅かに残った空に月だけが光る真っ黒い空間に、赤く強く輝く大きな炎の竜。


 まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!!


 飛んで来る炎の竜を迎え撃とうにも、そもそも鮫顔君の体が島サイズなので尻尾まですぐに行くことはできない。

 一方飛んできている竜の形をした炎、これもでかい。

 高速で迫ってきていると思ったのは目の錯覚。

 いや、高速で迫ってきているがその大きさが俺の予想を遙かに超えており、遠近感がおかしくなっていることに少し遅れて気付いた。

 まだ、距離はある。


 ドスンドスンと鮫顔君が前に進みその頭が、空間の果てを超えた。

 同時に炎の竜が大きな火球を吐き出し、それが鮫顔君の尻尾の付け根辺りに着弾し、その爆風で押し出されるように鮫顔君の巨大な体がダンジョンの果ての向こうへとめり込んだ。

 爆発の衝撃で後ろから押されるような形になり、俺達のいる場所も、亀の胴体部分も、ヒラヒラとした長い尻尾もその中へと飲み込まれた。

 飲み込まれながら見えたのは、天頂に光る満月がサラサラと光の粒になって、鮫顔君のまだ押し出されていない部分に吸い込まれていく光景だった。

 半月間過ごしたこの空間がついに消え、そこから脱出したことを確信した。




 満月の夜の海から真っ黒な空間へ。真っ黒な空間から暗い夜の海へ。

 崩壊寸前の空間から押し出されるように、その出口と思われる黒い空間へ押し込まれ視界が真っ黒になった後、すぐに僅かな光を感じる黒い場所に出された。

 波の音に潮のにおいのする海の気配。というか海。俺達の周り全部海!!

 キョロキョロと周りを見回しながら現状把握に努める。

 といっても海しかない。

 暗いと思ったら空には星しかなく、その光だけが海を照らしている。


 ここ、どこ!?


「おーい、ケツは火傷してないかー?」

 月のない真っ暗な海の上でカリュオンが呑気な声で言った。

 大きな背びれに捕まりなら尻尾の方を見ると、遠くの暗闇の中キラキラ青白く光る衣のような尾びれが、波間に揺れているのが見える。

 少し黒い煙が上がっているような気もするが、俺の目ではこの距離はよく見えないな。

「とりあえずあのやばそうな炎の竜は振り切って、外に出られたかな? といっても海ばかりでここがどこかわからないけど。あ、ケツを火傷してるならポーション飲む?」

 回復能力はめちゃくっちゃ高い鮫顔君だが、最後に飛んできた炎の威力はやばそうだったので、ダメージが大きいようならエクストラポーションをあげようと思ったが無視された。

 少し顔は怖くてツンが強そうだけれど、あの場所から俺達を連れ出してくれた恩亀である。

 それに一緒に出て来なかったら海のど真ん中に放り出されるところだった。

 ありがとう鮫顔君!!


 出てきた場所は空に月はなく星明かりのみで、俺の目で見える範囲には海しか見えない。

 戻って来たと思ったらまた漂流生活とか勘弁して欲しいんだけど? まぁ明るくなったら陸地が見えるかなぁ?

 俺達は無事に元の海岸に戻って、鮫顔君が平和に暮らせるところがあれば大団円なのだが。

 こんだけ広い海なら鮫顔君が泳いでいても大丈夫か?

 ここがダンジョンの十五階層なら、どうせ今のとこ海に出る手段はないし鮫顔君が泳いでいても問題ないのでは!?

 というか、鮫顔君に協力してもらって十五階層攻略!?

 お!? それくらい手柄を立てれば半月行方不明のお説教も回避できそうだなーーー!!

 いい考えだと思うんだけど、どうかな!? 






お読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] カメ君、お外に出られる子だから、探索して、次の階層を見に行けても、次の人は移動が出来ないし、古龍種の防御力を技術でなんとかする船とか、無理だから、結局、次が無いよ……………一緒に行けなくて、…
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