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どこでもピッツァ君

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

「グラン、それは何だ」

「携帯用ピザ窯、誰でもどこでも焼きたてピザが楽しめる"どこでもピッツァ君トライアル"だ」

「なるほど? ピザ窯なら仕方な……いや仕方ある!! この煙はもう少しどうにかならなかったのか!?」

「ピザ窯だから仕方ないけど、これは改善しないと使いにくいな」

 俺の説明にドリーが納得しかけたが、煙が出すぎてダメだったらしい。ピザ窯だからピザを焼いたら煙が出るのは仕方がない。

 ちょーーーっと、煙突の高さが短かったかーーーー???


 そんなわけで、今日の夕飯ピザ! ピッツァ!!


 こんなこともあろうかと……じゃない、普通にみんなでピザを食べようと思って。

 アウトドアピッツァパーティーをしようと思って。

 小型のピザ窯なら携帯調理器具感覚で持ち運べるよな?

 なんて考えで持ち運べそうな金属製のピザ窯を思いついたのだが、あまり時間がなかったため、とりあえずやっつけで頑張れば持ち運べるサイズのピザ窯を作って来た。

 外見は足がついていて上は丸みのある屋根になっている金属の箱に煙突が刺してあるだけだが、中はちゃんとピザ窯的な構造になっている。

 できればこれを折りたためるところは折りたたんで、分解できるところは分解して現地で簡単に組み立てられるように改良したい。

 今はまだ収納やマジックバッグなしで持ち歩くには少しかさばる。

 もう少し小型化すれば、誰でもどこでもピザが食べられる!!



 ここはダンジョンの三階層目のセーフティーエリア。

 ダンジョンに設置されているセーフティーエリアは全ての階層に設置されているわけではなく、魔物や素材の分布、階層の広さを考慮して区切りのよい階層に設置されている。

 ほとんどのダンジョンが五階層ごとを目安に設置されている。

 もちろん、進行状況や狩り場へのアクセスの関係でセーフティーエリアのない階層で休むこともある。

 その場合、比較的安全な場所で魔物を警戒しながら野営をすることとなる。


 このダンジョンは一つの階層が広めで、収穫物も多く魔物も強いため三階層目の最深部――四階層への通路すぐ手前にセーフティーエリアが設けられていた。

 ちなみにこの階層はフロアボスが今のところいないとされている階層だ。

 徘徊系か出現条件があるボスの可能性もあるが、とりあえずはボスが不在のため戦うことなく四階層へいける。

 ギルドで読んだ資料によると四階層と五階層からは更に一つのエリアが広くなり、Bランクの冒険者が立ち入れるのが五階層までとなっているようだ。


 三階層という比較的入り口に近い階層のため、このセーフティーエリアで野営をする者は少ないようで、夕方を過ぎているのだが人の姿は疎らである。

 ここまでの階層ではこちらから手を出さなければ攻撃してこない魔物がほとんどだったので、セーフティーエリアを使わず狩り場の近くで野営しているパーティーも多そうだ。

 草食系の大人しい魔物群の近くで野営をすれば、肉食の魔物は人間よりそちらを狙うし、肉食の魔物に襲われた草食の魔物は騒ぐので異変にも気付きやすい。

 狩り場の近くで寝起きすれば、起きてから寝るまでひたすら狩りができて効率もいい。

 デメリットといえば、自らが生成したもの以外の命のないものを吸収するというダンジョンの性質上、野営用の器具が傷みやすいくらいだ。



 そんなわけで人が少ないならチャンスだと持って来たピザ窯でピザを焼くことにした。

 材料は生地だけ捏ねて、一枚分に小分けして丸め収納に突っ込んで来たので、あとは現地で広げて具を載せて焼くだけである。

 焼いて持って来た方が効率的だが、そこはほらちょっと新しく作ってみたものの試運転をしたかった。

 試運転したおかげで改善点も見つかったからよかったな!!

 ちなみに今世にもピザはある。

 前世のピザとだいたい一緒だしピザという名称だ。なんとなく転生者か転移者の気配を感じてしまう。


「ゲホッ! 煙すごっ! なんで薪? 火の魔石は?」

「ピザといえばやっぱ直火かなぁって思って?」

 アベルはローブの袖口で鼻と口を隠し、目をショボショボさせている。

 確かに思った以上に煙が出てしまい目が痛い。

 今日は周囲に人が少ないからいいが、これでは近所迷惑になって使いにくいので改善ポイントだな。


「ピザは好きだけど、これは近寄るとススで黒くなりそうだわ……」

 白毛の猫獣人のリヴィダスは近付くとやばそうだな。

「いまどき薪を使った携帯調理器具なんて珍しいねぇ、煙はすごいけど。そうだ、実家に帰った時に長老の家の下で使いたいから一つ売って欲しいな」

 カリュオンよ、お買い上げ希望はありがたいがその使い方は本来の使用方法とかけ離れすぎているぞ!?!?

 そして、なんだか闇の感じる発言なので深くは触れないでおこう。


 カリュオンの言う通り、携帯用の調理器具で薪や炭を使うものは珍しい。

 家庭用のものなら薪を使うものもまだまだ残っているが、携帯用は持ち運びの面で薪や炭を使わなくてもよい火の魔石を火力としているものがほとんどなのだ。

 言われてみて思い出した。

 どうせなら燻製もできるしと、小さな薪を燃やす構造にしたのだがこれのために薪を持ち運ばないといけないな。

 現地調達にしても、乾燥させていない木を燃やすと更に煙が出てしまうので、野外はまだしもダンジョンのセーフティーエリアでは使いにくいな。

 そして世の中には燃やした煙に毒性がある植物もある。

 ううーん、ここも改善しないといけないな。素直に火の魔石を使うか。


「ところでグラン、ピザは生地だけ作ってきて具は焼く前に載せたのよね?」

「ああ、そうだな。生地だけ用意しておけばあとは現地でも楽だな。刻んで載せて焼くだけだから誰でもできるだろ?」

「でもそれ生地や具材を新鮮に持ち運べる方法が必要よね。誰でもどこでもは難しそうねぇ」

 ぐふっ!?

 シルエットの鋭いツッコミが。

 確かに材料の持ち運びの問題もあるな。生地だけ持ち込めば材料は現地調達でも可能かなーって思っていたけれど、生地も生ものだもんな。

 やはりどこでもピッツァは難しいのか!?


「わざわざダンジョンでピザを焼いて食べようとは思わないけど、食べられるなら喜んで食べるよね。俺、肉とかベーコンとかサラミがたくさん載ってるやつ。ピーマンはいらない」

 うるせーぞ、アベル! ピザは纏めて焼くから個別対応はできねぇ!! というかベーコンもサラミも肉だ!!

 というかお前貴族なのにこういう庶民料理好きだよな!?






 ぴろーーーーーん。

 ピザと言ったらやっぱりぴろーーーーーん。

 伸びるチーズはピザの楽しみである。ぴろーーーーーん。

 楽しい! 美味しい! 熱い! びろーーーーん!!

 円形ではなく楕円形のピザに食べやすいサイズに切り込みを入れてあるので、その一片を手にとって引っ張るとびろーーーーーん。

 好きなのを取ってびろーーーーーんとしてくれ。


「ピザは好きだけど、出来たては熱すぎるのよね。あぁん、魚介のピザだから早く食べたいのにー……やっぱり、あつぅ」

 ピザをフーフーして少し囓ってハフハフしているのは、あつあつが苦手なリヴィダス。

 クラーケンやセファラポッドやエビをたくさん載せたシーフードピザだ。どさくさでミミックの肉も紛れているが、だいたい二枚貝だからシーフードの仲間だし美味しいから問題ない。

「今日はあまり魔法を使ってないから食べ過ぎないようにしないと。それにしてもこっちの肉々しい方は肉の味の主張がすごいわね。うっかり食べ過ぎちゃいそう」

 シルエットは肉派。

 サラマンダーとグリードレイクの挽き肉で作ったサラミはしつこいくらい味が濃い。シルエットが食べているのはそれをこれでもかというほど載せたピザ。

 サラミなのに味だけで肉感がすごいことになっている。


「ピザっていいよねー、なんかこう罪悪感を食べる感じ? この零れそうな具材にビロンビロン伸びるチーズ、手でそのままおつまみ感覚で食べられるのに食べごたえがある」

 罪悪感を食べる感じわかる。

 あまり動いていない日とか特に罪悪感がある。アベルは今日はしっかり動いていた気がするからピザの四、五枚大丈夫だと思うぞ。

「肉に加えて更に肉! サラミとロック鳥の肉かー。その上にチーズもたっぷりでこれは食べごたえあるね」

「今日はよく体を動かしたしスキルも使いまくったから飯が美味いな」

 おう、だいたい最後の山羊団子でな。

 今日、特にたくさん動き回った三人には特別仕様の肉もりもりの食べごたえありまくりのピザだ。

 サラマンダーとグリーンドレイクのサラミに加え、ロック鳥の肉まで載せて、肉と肉と肉!

 それが今日大暴れした三人の前に、それから食べてくれとばかりに置いてある。


「まだまだ、焼けるから好きなだけおかわりするといいぞおお」

 食べながらすでに次を焼いているからこのゴリラたちが、どんなにおかわりをしても大丈夫だ。

「この肉だらけなの追加で!! 久しぶりのダンジョンだしー、このくらい食べても大丈夫~……あふぇえっ!?!?!?」

「ははは、アベルいっきに口の中に突っ込むからだ……ぐおっ!?」

「アベルもドリーも面白い顔になってるけど何かあった? ヒッ!!」

 肉肉肉ピザを食べた三人が目を見開いて口を押さえた。

 ふはははははー、どうだ、疲れも吹き飛ぶ肉も辛さもましましの大人のピッツァだ!!

 ハバンアッピというとーーーーっても辛い植物の実をチーズの下に丸ごと一個埋めておいたのだ。

 今日大暴れして体力をたくさん使ったと思われる三人のためのスペシャルメニューだ!!

 存分に味わってくれ!!

「あ、アベルはおかわりいるんだっけ?」

 グラスの水をガブのみしているアベルに声をかける。

 そういえばアベルは辛いものは苦手だったな。

「なんでこんなに辛くしたの!?!? 辛いやつ抜きの肉にくニクでお願い!!」

 予想通りの反応でちょっとニヨニヨしてしまう。

「く、少し辛いが許容範囲だ。これはエールが欲しくなるな」

「だなー、このくらい刺激があってもいいかも」

 この近接ゴリラ二人にはこのくらいは耐えきったか。脳ミソだけじゃなくて、味覚も筋肉質だな。……ハバンアッピ増量するか?




 この後めちゃくちゃピザを焼きまくって、セーフティーエリアが煙とチーズの臭いまみれになってしまい、さすがに申し訳ないのでご近所さんにピザを差し入れして謝っておいた。

 トラブル回避には賄賂が一番!!

 人は少ないけれど、全くいないわけではないからな!!


 野営でピザを焼きまくろうと思ってピザ生地たくさん作ってきていたけれど、煙がすごすぎてピザ窯を改良しないと他の人のいるところでは迷惑になりそうなので、今回のダンジョンではもう封印!!

 残ったピザ生地もピザにしてご近所さんにお裾分け!!

 もっくもくさせて申し訳ありませんでした!!





お読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
乾燥させていない木・・・ グラン君、分解で木材と水分に分別すれば良いのでは?・・・あっ、言っちゃった。
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