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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第十三章

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こだわりVS効率

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

 一般的なポーション用の瓶には時間魔法の一種である”停滞”という中身の時間が停滞する効果が付与されている。

 ”停止”ではなく”停滞”なので、ゆっくりとは時間が進む。つまり中身の劣化速度が非常に遅くなる。


 ポーションを長持ちさせるための”停滞”だが、ほぼ完全に時間が止まる”停止”の下位互換で、要求される技術も魔力も停止にくらべかなり緩く、その分コストも抑えられるため一般的なポーション用の瓶には”停滞”の効果が付与されている。


 停滞の効果は一般的なもので三ヶ月から半年、値段は張るが高品質なもので年単位、安価なものなら一週間から一ヶ月――値段相応である。

 当然ポーションのコストに直結するものでもあるため、長期間保存の利くポーションの方が値段は高く、高性能のマジックバックや収納スキル持ちでもない限り自分の経済状況と行動の傾向によってポーションを使い分けることになる。


 今回リリーさんが料理を詰め込んだのは、そのポーション瓶の中でも安い半月程度しか効果が保たないもの。

 下手にケチると生命に直結することにはなるが、戦い方によって無駄なポーションの消費を減らすことはできる。

 しかし食事はそうはいかない。

 生きていれば必ず腹は減る、体を動かせばもっと減る、魔力を使えば更に減る。

 なので確実にポーションよりも消費のサイクルは速い。


 そこに目を付け、コストを抑えるために半月程度で効果が切れるものを使用したらしい。

 いずれは長期保存の利くものも売り出したいらしいが、まずは出先で簡単に美味しく食べられる携帯食が認知されることを目標として、ちょっと試してみようかなという価格で提供できることを優先したそうだ。


 瓶に入っているため、調理方法も封を切ってそのまま沸騰した湯で温めるだけ。

 少し大きめではあるがポーション瓶なので、小型の調理器具や金属製のカップで温めることができる。

 ゆくゆくは種類を増やしていく予定だが、まずはそのまま食べてもよし、他の食材にかけてもよし、アレンジ調理も手軽でバリエーションもあるという理由でミートソース。


 キルシェとセレちゃんが食材を確保してくるのを待ちながら、俺とリリーさんは瓶詰めミートソースを使い実際にミートソースパスタを作っていた。

 のだが――。


「え? 折っちゃうの!? う……わかる。その方が効率いいことはわかるんだけど……ほら、ロングパスタって長い方がつるんって食べる心地よさとか、フォークに巻き付きやすさとか……う、効率を考えたら折った方がいいんだよなぁ。そもそも収納スキルがなければ持てる荷物限界があるし、パスタはロングより場所を取らないショートのが人気なんだよなぁ。でもなぁ……ミートソースといえばやっぱロングだし、ロングパスタを折るのは邪道だよなぁ!」


「あら、意外ですわ。ロングパスタを折るのは邪道というのはわかりますけど、冒険者の方はそのあたりは効率重視だと思っておりましたわ」


「いや、わかるんだ。わかるんだけど……いや、これは俺が荷物の量を気にしないでいいから言えることでもあるのだが――うおおおおおおおおお!! やっぱりロングパスタは長い方がいいいいいい!! でも折っちゃう? 折っちゃうよね? ぐぬぬぬ――」


「う……あざと……でも、そんな目で訴えてもダメです。一般的な冒険者が携帯している鍋のサイズを考えると、ロングパスタは半分に折るもしくはショートパスタ系が良いでしょう。今回は一般的な冒険者を想定した調理と試食ですので、今日はグランさんのこだわりはスルーでボキイイイイイイイッ!!」


「あああああああああ……折った!! ロングパスタを折ったああああああああ!! ていうか、三人前くらいのパスタの束を纏めてボキッていくってやば……お嬢様やば……これは確実にゴリ……」


「あ? 何かおっしゃいやがりました?」


「いやいやいやいやいやいや、何も! 何も! そうだな! 今日は商品の試食だからパスタは折ってもいいかな!?」


 

 一般的な冒険者が携帯するような小型の鍋で効率良くロングパスタを茹でるため、パスタを半分に折ろうとしていたリリーさんの行為につい口を挟んでしまった。

 そうですね。今回はより美味しく食べるためではなく、一般的な冒険者が手軽にできる範囲の調理での試食でしたね。

 すみません、ついできるだけ美味しくと思いこだわりすぎました。俺が目的を忘れていました。

 なので、パスタの束を軽々と折りながら迫力のある超笑顔で圧をかけるのやめてください。逆らえば、そのパスタの束のようにポッキリ折られるのではないかって気分になります。

 ひえええええええ……お嬢様こわ! パスタ三人前くらいの束を簡単に真っ二つにしてしまうお嬢様こわ! 間違いなくゴリラお嬢様!


「食へのこだわりの面で折りたくないのは理解しておりますが、今回は効率重視ということでご容赦お願いいたしますわ。そして効率ついでに、ミートソース入りの瓶はこうして温めれば速いですわ」


「ああああああああああーーーー!! リリーさああああああああん!! 百歩譲ってロングパスタを折るのはいいとして、それは猛烈に頂けないいいいいいいい!! パスタを茹でている鍋と同じ鍋に、ミートソースの瓶を突っ込んで一緒に温めるなんてさすがにダメでしょ!? 一つの鍋で効率的かもしれないけど、瓶を洗うか浄化魔法をかけてしまえば衛生面の問題はクリアできるかもしれないけど、むしろ冒険者ならその程度の面は気にしてないかもしれないけど――いやいやいやいやいやいや、やっぱらめええええええええ!!」


「え? 調理器具を多く持ち歩くことができない冒険者は鍋とコンロは一つずつしか持ってないでしょうし、でしたらこの方法が時短もできて洗い物が減って一石二鳥……いえ、こちらでは一岩二竜でしたわね――ではないでしょうか? もちろんお店ではやりませんけど、プライベートの時でしたら昔からこのやり方ですわ。ええ、昔から」


 うおおおおお……パスタを半分に折っただけではなく、パスタを茹でている鍋の中にミートソース入りの瓶を投げ込もうとしているうううう!! ていうか、止める間もなく鮮やかに投げ込んだああああ!!

 これはアウトーーーー!! 俺的にはアウトーーーーーーー!!

 リリーさんって意外と大胆! 大雑把! ずぼら!!


 …………ん?


「ああ~、ごく自然にパスタを茹でている鍋の中にミートソースの瓶が~。その手慣れた仕草、これは常習犯! って、昔から? これって今回開発した商品ではなくて?」


 んん? 昔?


「え? あ、昔! そう! 昔から! おっほほほほほほほほ!! 趣味でやっております喫茶店で、余ったミートソースを小分けにしてポーション瓶に詰め込んで保存して、プライベートでこうやって消費しておりましたの! ほほほほほほほ、今回の商品もそこから思い付きましたことですの! おっほほほほほほほほほ!! というわけで、まずはミートソースですがホワイトソースやドミグラスソース、いずれはカレーなども瓶詰めの携帯食として売り出せたらと思っております。できれば瓶よりも持ち運びやすい袋型も考えておりますが、こちらは袋の開発に苦戦しておりますのでまだ先の話になりそうですわ。ほほほほほほほほ、というわけでホワイトソースとドミグラスソースの試作もございますわーーーー!!」


「なるほど! え? 他にもあるの? いずれはカレーも! いいね、いいね!! そしたら、温めるだけですぐ食べられる米とかナンも――……」


 なるほど、そういうことか。

 そうだよなぁ。食品関係はフードロスがつきものだし、こういうアイデアに繋がるのか。

 しかもホワイトソースとドミグラスソース、カレーまで! それに袋型も開発中!?

 すっげー! さすがリリーさん!


 袋入りになるなら瓶よりもかさばらないから、値段次第で需要が爆発しそうだなぁ。

 てか袋入りになって、湯で温めて食べられるソースとかカレーとかマジで前世のレトルト食品だな。

 そうなるとすぐに食べられる炭水化物系も欲しくなってくる。


 ああ~、想像したらテンションが上がってくる~~~~!!


「ちょっとぉ! グランとリリーさん! 声が大きすぎてセレ達の食材が逃げていくよ!」


 リリーさんとの話にテンションが上がり、つい声が大きくなってしまっていたようだ。

 ごめんごめん、あまり大きな声を出しちゃうとキルシェとセレちゃんが食材を捕まえる邪魔になっちゃうよね。

 

お読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
コッチの世界だと大炎上事案ですな。というか、貴族のお嬢様がパスタ茹でるんかい! 例の喫茶店メニューも裏でこういう事をやっていると……
一石二鳥!大岩で竜!? リリーさん、前世出てる!リリーさんとグランさんが前世の話題で盛り上がるのは何時の日になるやらwこのまま、ずっと知らないままも面白いですけどねw
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