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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第十三章

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サプライズの準備

 リオ君の授業は午前中で終わって、昼食を挟んで午後からはセレちゃんの冒険者講習。


 セレちゃんは授業がない日も空いた時間で冒険者活動をしていたらしく、現在はEランクまで上がりもう少しでDランクへの昇級試験を受けられるほどになっているらしい。

 もちろん護衛付きの活動なのだが、依頼自体はセレちゃんが自力でやっているとリリーさんから聞いた。

 また剣術と体術は、周りも驚くほどに上達が早いとも。


 アベルや白銀さんの妹だと思うと何かしらギフトを持っていてもおかしくないし、王都騎士団の隊長である白銀さんの実力を考えると、その妹であるセレちゃんにも剣や拳の才能があってもまったくおかしくない。

 そういえば白銀さんも剣と拳で戦っていたな。


 確実に才能の原石。

 お嬢様でなければ、俺なんかよりずっとすごい冒険者になっていたかもしれないな。


 だけどどんなに武術の才能があったとしても、良家お嬢様ならいつかは身分に見合った家門に嫁いでいくことになり、冒険者とは縁遠い暮らしをすることになるのだろう。

 冒険者や剣を握る職よりその方が安全であることはわかっているのだが、やはり才能があると聞くと勝手にもったいなく思えてしまう。

 セレちゃんが冒険者活動も剣術も好きだと聞くと尚更。


 貴族とは自分の希望よりも、貴族としての義務が優先される生き方を求められると聞く。

 それが民から支えられて生きるということだから。

 支えられて生きているのだから、民に尽くさなければならない。自分達を支えてくれている民の生活を守り、民の生活をより豊かにしなければならない。

 民の繁栄こそが国の繁栄。

 民が栄えることこそは、その舵取りをする王族や貴族達も安定した暮らしができるということ。

 だから支配階級の者達は、己の人生を国と民に差し出す。


 平民から華やかで贅沢三昧な特権階級のようにも見え、実際それだけを考えている欲に溺れる者も少なくないのだろうが、王族や貴族達は国や民のために己の人生をかけているのだ。

 それを忘れ支配階級が己の欲望を優先し腐敗してしまった国は、遠からず滅びへ向かうこととなる。

 俺の転生開花にも種族問わずそういう国の記憶がいくつもあり、中にはそういう国と対立し戦った記憶も残っている、


 このユーラティアという国が千にも届こうという長い時間存在している大国なのは、支配階級が正常に機能している証拠なのだ。

 俺達平民が概ね平和に生活できているのは、支配者階級の正しい舵取りのおかげ。


 貴族のお嬢様であるセレちゃんも、きっといつか国や領地の利益を考慮した相手に嫁いでいくことになるだろう。

 どんなにやりたいことがあっても、どんなに自由になりたいと望んでも――国のため、民のためにと。


 俺よりも年下の彼女は、そのことをちゃんとわかっている。

 冒険者という職業に地に足の着いていない憧れを抱いて年相応の青さが目立つとしても、貴族家に生まれた自分の義務というものを彼女がしっかりと理解していることは、授業を通してみた彼女の言動から、彼女とアベルの会話の端々から、ヒシヒシと感じ取っていた。


 そしてそういう地位である彼女が、平民の生活に密着している組織である冒険者ギルドに興味を持ち、平民の生活が見える場所で平民を同じことを自らやってみてくれているというのは非常に嬉しい。

 将来人々の上に立つ支配者層の者が、俺達平民の生活を近くで見てくれたということが。

 きっとその経験は彼女が将来、貴族としての働きをする時に僅かであっても影響を及ぼすことになるだろう。

 だから感謝と期待を込めて、俺はセレちゃんの最後の授業をできる限りセレちゃんにとって楽しいものにしたいと思っている。


 そう思っていたのは俺だけではなく、アベルも。そしてリリーさんも。

 王都古代竜事件の後で俺とアベルが寝込んでしまい、リオ君とセレちゃんの家庭教師を一週休んでいる間の二人の様子は、冒険者ギルドを経由して届いたリリーさんからの手紙である程度は知っていた。


 セレちゃんが実直に冒険者活動を行っていること、それに伴い冒険者としての知識も多く身に付け、それだけではなく冒険者活動をしながらフォールカルテに暮らす人とふれあい平民に対する解像度をどんどん上げていること、体力や武術の面でもしっかりと成長していること。


 だから今日は以前セレちゃんと約束したことを叶えると、最初から決めていた。


 昼食を終えた後、アベルはその準備のために一度プルミリエ侯爵邸を離れ、セレちゃんの授業は俺とカリュオンで行っていた。

 セレちゃんのために、こっそりとサプライズの準備にいったアベルが不在のことを上手く誤魔化しながら。



「シュペルノーヴァはユーラティア王国に縄張りを構える古代竜で、性格は熾烈、しかし思慮深く他種族に対する理解も深い、故にこちらから不義理不敬を働かなければ無関心。不義理不敬を働けば――シランドルの南にある砂漠は、大昔にシュペルノーヴァを激怒させた国が焼き尽くされた後のできたもので、現在でもそこは強い火属性が蓄積し植物が育ちにくい大地だということ。などという伝承も残っていますが、義理堅い一面があり、受けた恩は古代竜の名にかけて何倍にもして返すという話も――と、フォールカルテ近郊で冒険者活動をするならシュペルノーヴァの存在は切り離せないものだと思いまして、冒険者活動で近隣の集落を回るついでにシュペルノーヴァに纏わる伝承を集めてみましたわ。思ったよりもたくさんあって、シュペルノーヴァ以外の古代竜の伝承も集めてみたくなりましたわ――っと、せっかくシュペルノーヴァと周辺地域の関係を冒険者視点で纏めた文書を作ったのですが、エクシ……アベルお兄様がお腹を壊してトイレに篭もられているなんて!!」


 アベルがセレちゃんの授業に参加できないことは上手く誤魔化しているぞおおお!!

 それとシランドルの南にある砂漠の国は、シュペルノーヴァの仕業になっているがだいたいベリアル兄さんの仕業だって、俺の転生開花が言っている。

 シュペはとばっちりを食っただけなのだが、まぁシュペは昔からやらかしが多かったので冤罪で悪行が一個追加されたとこでも今更だし、グランがそんなことを知っているわけがないのでここはだんまり。


「まったく、セレちゃんがシュペルノーヴァのことをこんなに調べて纏めたっていうのに、アベルの奴がうんこから戻ってこないなんて……。各地を回り、その地に伝わる話を集めるのも冒険者の醍醐味だね。これで古代竜や各地の伝承に興味が湧いたなら調べてみるのもいい。その地の歴史や固有の風習から伝承を考察してみると、思わぬ答えに行き着くこともあるんだ。そして恐いもの見たさで、それを確認にいくのも冒険者の醍醐味――でも一歩間違えると……この世には気付いても知らないふりをした方がいいことがたくさんあるんだ。冒険者活動をしていると特に、そういうのを見極める勘が生死を分けることもあるんだ。って、アベルおっせなぁ~。ま、どんなにイケメンでも生き物はうんこをするものだし、腹を壊すこともある。アベルは食い意地が張ってるから仕方ないなー」


「生理現象は仕方ないですわねぇ~。アベルお兄様は昔からお腹が弱くて、トイレの妖精になることが多かったですし」



 アベルがサプライズの準備でここにいないことは上手く誤魔化しておいてやったぜえええええええ!!







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― 新着の感想 ―
全体の奉仕者って日本国憲法に在る言葉が統治者の在り様の一面を示す至言よね(明後日の方を見ながら 昔のトイレの妖精は毒殺未遂のせいなんやろな
上手く誤魔化せて無い!wわざとですか!?w後でアベルさんにブチ切れられるのではw?今のところホッコリ!
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