神に愛されたスライム?
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「ラピ、ラピスライム、属性は聖。最高品質のラピスラズリの持つ聖属性の魔力を取り込んだスライム。神の悪戯――あああああああ……このスライム、なんか変なギフトが生えてるよおおおおおおお!! これってどう見ても、神に愛され系のギフトでしょ!!! スライムなのにぃ!? どういうことおおお!? ええ……神や元神はアホみたいな数いるから、たまたま偶然うっかりなんとなく目に付いたものに加護を与えることもある? もしくは与える気はなくても、神故に周囲に無自覚に影響を与えることがある? 聖者の持つ神の祝福のギフトはそういう偶然の産物が大半? ――って、どっかの本で読んだことがあるよ!! もしかしてそれぇ!?」
「んあ? あー……うん、そうそうそれそれ。俺もそんな話をどっかの本で読んだか、どっかの誰かに聞いたかしたことがあるなぁ? きっとそれかなぁ? そうそう、スライムってめちゃくちゃ周囲の影響を受けやすいから、ちょこっと神様が近くを通りかかるようなことがあったら、その影響を受けちゃうかもなぁ? 神様が偶然通りかかることなんてあるかどうかわからないけど、もしかしたら気付かないだけですぐそこに紛れ込んでいるかもしれない。そう、神様ならそのくらいできてもおかしくない」
ただでさえキンキラキンで眩しい瞳を更にギラギラと金色に輝かせながらラピ君を鑑定したアベルが、一人で大騒ぎしていて煩い。
ここは俺の家じゃなくて、リリーさんのご実家なのだからもう少しお行儀良くしろ。
しかし流石アベル、騒がしいけれど博識である。
アベルが言っていることがおそらく正解だろうと、俺の転生開花も言っている。
神という者――いや、神だけではなく長く生き高等な知能と感情を持つ存在は、意外と暇で退屈をしているのだ。
故に暇潰しとして、色々な生き物の中に紛れ込み、その生き物としての暮らしを楽しむことも珍しくない。
時には人、時には獣、時には鳥、魚、虫、植物――神様だから姿形を変えることくらい当たり前のようにできる。
……リリトはつぎはぎの体だった故に神であっても魔法を使うことができず、そんなことはできなかったけれど。
そう……人々の暮らしのすぐ傍に、偉大な神々がこっそり紛れ込んで何食わぬ顔をして話し掛けてきているかもしれないのだ。
神や元だけではない、古代竜や力のある妖精や精霊、魔物だって俺達のすぐ傍で当たり前のように暮らしているかもしれない。
そしてそれは案外よくあることで、ただ単に紛れ込まれる側が全く気付いていないだけなのである。
もしかすると人知を超えた存在が、俺のすぐ隣にいるかもしれない――。
ま、俺だって転生開花なんていうギフトという姿をした過去の自分を自分の中に抱え込んでいるのだから、神様の一柱や二柱、古代竜の一隻や二隻が人間の生活に紛れ込んでいたっておかしくないのだ。
だからもしかすると近くにそういう存在がいるか、近くをそういう存在が通りかかったか。
そしてその”近く”というのはそういう存在基準の近くである。
つまりそういう存在感覚で、そのスケールから考えると、シュペルノーヴァの棲むルチャルトラはわりと近くである。
そしてシュペルノーヴァ、というか古代竜は強い聖属性を持っており、実際意識を集中するとプルミリエ侯爵邸のあるフォールカルテの町はほんのりとシュペルノーヴァの魔力を感じることができる。
故にラピ君は、ルチャルトラから漂ってくるシュペルノーヴァの魔力の影響を受けたのかもしれない。
――と考えるのが自然なのだが、シュペルノーヴァの魔力にしては暑苦しさがないように感じるのは、鮮やかなウルトラマリンブルーの体色のせいだろうか?
ラピ君の体色はラピスラズリ由来のもので、それ以外から影響を受けた何かの影響ではないと思われるのだが、なんとなぁくシュペルノーヴァじゃない気がするんだよなぁ。
全く根拠はないのだが、俺のするどい勘がシュペルノーヴァは関係ないと言っている。
他に何か影響のありそうなものは――――――その辺に紛れ込んでいるナニカの存在なんて、ただの人間の俺にはわかんないな。
リオ君のスライム育成に手をかしている俺の中にも、転生開花っていうリリトから連なる記憶があるが、あくまでただの記憶。俺の魔力は、グランという俺のものだから関係ないはず。
だよな?
歴代俺というか、リリトは俺くらいスライムが好きだったようだが、俺はグランでリリトの体自体はあそこにあるから、やっぱ関係ねーよな?
あのダンジョンでリリトの体に会ってちょっぴりリリト臭が付いてしまったかもしれないし、箱庭でちょっぴり転生開花が開きかけた後に家庭教師にきてスライムを触ったりしたけど関係ないよな?
うん、関係ない。きっとどこかの知らない神様が通りかかったに違いない。
もしかしたらスライム大好きな神様が、愛情たっぷりで丁寧に育てられたスライムに祝福を与えたのかもしれない。
よくわからないから、そういうことにしておこう。
それに他にも要因はたくさんありそうだし。
「でもさ、スライムにラピスラズリを与えただけでこうなるなら、とっくの昔にスライム研究所で研究されて聖者の石は量産化に利用されてるはずだし、スライムの生えてきたギフトの影響で間違いないよね? うーん……聖ねぇ……聖……リオの適性にも関係してそうだよねぇ。リオって聖属性だけなら俺よりも適性が高いし、俺みたいな規格外の天才じゃないにしても魔力もそこそこ多いし、ギフトもそっち系だし、その影響? リオ、スライムに何かやった? って、こんなスライムが表沙汰になると色々面倒くさいことになるから、どちらにせよディオ兄上にぶん投げちゃえ」
最初は俺に尋ねる風だったが、だんだんと表情が険しくなり独り言になっていくアベル。
確かに聖者な石を作り出すスライムなんて、金の卵産むガチョウみたなものである。
深く考えなくても、欲深い者に知られればリオ君もラピ君も危険な目に遭うかもしれない。
早めにお兄さんに相談して、権力で保護してもらうのが間違いない。
侯爵家というリリーさんの実家に預けられているという状況、ひょっこり白銀さんが現れた時のリリーさん達の態度を考えれば、アベルの実家はそれだけ地位のある家門だと思われる。
もちろん詮索する気なんてない。
俺だって転生開花という爆弾を隠している。
お互い知られたくないことは気付かないふりをして、この緩い毎日を許される限り続ければいいのだ。
きっとお互い秘密を打ち明けても、ギクシャクすることなく受け入れることはできると思う。
それくらいにはアベルと親しい仲だと思っている。
でもわざわざ触れることもないから。お互い何かの切っ掛けでお互いの秘密を打ち明け合う日がくるまで、見ないふり。
「うん、そう思ってラピの育成記録とラピが作り出したものとラピのスライムゼリーを、ディオ兄様に届ける準備はしてあるよ。ラピに何かやったかって? 何もやってないよ? 普通に餌をやって、一緒に遊んで、一緒に勉強をして、剣術や魔法の練習の時も一緒で、一緒にいる時はたくさん話をしてー……っていうか、一方的に話かけて? そしたらラピも反応をしてくれるから、楽しくてまた話かけて? ふふ……ラピにはね、身分なんか関係ないからね――」
「それだ!!」
アベルとリオ君の話で、頭の中でピコンと音がしたような気がした。
ラピという名前を貰ったラピスラズリのスライムのラピ君が、ネームドであることを考慮しても予想外のスライムに成長した理由が二人の会話の中にあった。
きっとそれが他の要因と絡み合ってこうなったのだろう。
その理由は――。
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