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グラン&グルメ~器用貧乏な転生勇者が始める辺境スローライフ~  作者: えりまし圭多
第十二章

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閑話:俺ただの偉大な亀さん

誤字報告、感想、ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

 カメェ……。

 俺様はただの偉大な亀さんである。

 その正体はすごく偉大で格好良くて強ぉぉぉぉい古代竜のクーランマラン様だが、たまには気分転換でただの偉大な子亀として酔っ払って寝落ちしたい日もあるのだ。


 そう、今の俺様はただの酔っ払って寝落ちした偉大な子亀。

 子亀だから、ここにいる奴らがどういう奴らかなんて知らないし、酔っ払って寝ているから奴らの話している内容も聞いていない。

 そうそう、酔っ払って眠りこけている赤毛が寝ぼけて俺の耳を押さえているから俺は何も聞こえない。

 偉大な俺様は耳を塞がれても周囲の音を聞き取るくらい簡単だが、今はただの子亀なのでそんなことはできないということにしておこう。


 偉大で賢くて勘のいい古代竜の俺はわかっている、今は寝たふりをするが最善策だと。


 この世には、決して触れてはならぬ存在というものがあるということを。


 そしてまさにそれが今ここにいるということを。


 そう、知らぬ方がいいのだ。何も知らぬまま、人間に許された短い時間に目一杯つきあってやるのだ。


 何も知らぬふりをして、このぬるま湯のような日々を続けるのだ。


 赤毛が俺様の正体に気付かぬようにしているように、俺様も赤毛の正体には気付かぬことにするのだ。


 偉大で賢い俺様は知っている、平穏は時に積み上げられた嘘の上に在るものだと。



 ベルゼブブ――うちの爺さん、それからあのおっかないヴァンパイア婆さんの祖父と並び、創世の神が世界の始まりの時に作り出した最古の神の一柱だった者。

 うちの爺さんも、パンパイア婆さんの爺さんも、このベルゼブブって奴もとっくの昔に神を辞めて、ただの元神となり好き勝手に生きている故の過去形。

 

 冷静に考えれば爺さんの兄弟なので親戚ではあるのだがベルゼブブという元神とはあまり接点はなく、遥か遥か大昔に爺さん経由でちょこっとだけ会ったことがあったようななかったような程度である。

 そもそもうちの爺さんは海の底に引き籠もっているので、他の兄弟とあんま接触しないからな。接触すると十中八九面倒事に巻き込まれるらしいから。


 そんなうちの爺さんに聞いた話によると、このベルゼブブという元神、いつもお兄ちゃん風を吹かせて非常に暑苦しくて面倒くさい奴らしい。

 そもそも爺さん達最初の三柱はほぼ同時期の生まれで誰が長兄というわけではなかったらしいが、お兄ちゃん決定戦とかいう実にくだらない争いの果て、実にしょうもなく、実に汚い手段を使ってベルゼブブが勝利し、勝手に一番上のお兄ちゃんを名乗り始めたという話をうちの爺さんに聞いた。


 うちも爺さんがよく三柱の中で最も常識に溢れる我こそが一番上のはずなのにと言っていたが、偉大で賢い俺様はわかる……わかるぞおおおおおおおお!!

 あの爺神三柱はきっと似たり寄ったり、間違いなく全員自分が一番上のお兄ちゃんだと思っているに違いない。

 爺さんはベルゼブブだけが実にしょうもなく実に汚い手段を使ったかのように語っていたが、勘の良い俺様にはわかる――間違いなく三柱とも実にしょうもなく、実に汚い手段を使いまくった泥沼の戦いを繰り広げたに違いない。

 おそらく、きっと、間違いなく、周囲に絶大な迷惑をかけながら。


 伝説に残る神々の戦いは、だいたいそういうやつだと思っている。

 あの世代の神……いや、神という奴らはだいたいそういう迷惑な奴らだ。



 そしてリリス――――――…………………………………………………………ま、まぁ、キンピカラグナロックに引っ張り回されていた時期に、うっかり関わっちまって酷い目にあったからな。

 うむ……おっさんにあの箱庭に閉じ込められる前の話なので、記憶もおぼろげだからあの托卵女のことは思い出さないでおこう。


 あれはこの世で最も関わってはいけない奴だ。

 見た目がどんなに良くても、たまぁに見せる憂いの表情に思わず庇護欲を掻き立てられても、気まぐれだが気が向いたら神々の知識や技術を教えてくれることがあっても、他人に興味がないだけのサバサバ感が意外と居心地よくても、やることなすこと無茶苦茶で思わずフォローをしたくなっても――結局振り回されて利用されて最後はポイ捨てされるだけだから。

 知識の亡者テムペストはあの女の持つ知識に釣られ盲目的な信者になってしまったが、俺は釣られないぞ!!



 そんな奴らが、俺様達のすぐそばにいる。

 色々言いたいことはあるが、今は寝たふりをすることにした。


 ちくしょお! あのド派手な赤毛がベルゼブブだとすぐ気付いていれば、さっさと赤毛を連れて海の底まで逃げていたのに!!

 赤毛がその辺の妖精と話すような感覚でナチュラルに話しているから、俺様としたことがリリスが現れるまで全く気付かなかったぜ!!

 なので、手合わせで全く歯が立たなかったのは仕方ないということにしておいてやる!! ちくしょうめぇ、後うん十万年後には勝ってやる覚えていろよ!!

 ギンギラギンの魚も白くて長い野菜も美味かったので、今日はこのくらいにしておいてやる!!


 どんなに俺様が偉大で強くても絶対に勝てない奴ら。

 そんな奴らですら赤毛に誑し込まれている――いや、話を聞いている限りだとおそらく大昔の赤毛に。



 生き物は死しても魂は滅せず、いずれ新たな生命として生まれ直す。

 以前とは姿形を変え、以前の記憶を失い、魂だけが同じの全く別の存在として。


 姿形は変わり記憶も真っ新にされるが、ほんのわずかに前の生の面影と魂に染みついた記憶の欠片が残っていたりすることはある。

 中には前世で持っていた力の片鱗を残している者も。

 更には極稀にだが何かの間違いで、前の生の記憶をはっきりと持っている者もいることも。


 とくに本来は死とは程遠い存在の者であるほど、以前の生の影響を生まれ直しても残している傾向がある。

 例えば神、例えば古代竜、例えば神獣。


 だから、この偉大な俺様をちょっぴり惹きつけ、俺様以外の古代竜達も、古の神獣も、あの女神に連なる三姉妹も、ヴァンパイアの婆さんも惹きつけてしまう赤毛の昔はきっと、ちょっぴり特別な存在だったのかもしれないとは思っていた。

 そしてあの手慣れた誑し込み癖は間違いなく魂に染みついたもの。うっかりと非常識と一緒に魂に刷り込まれたものだろうという、謎の確信があった。


 更には先日の非常識古代竜おじ達騒動の真っ最中に現れたアレ。

 赤毛だが、赤毛ではないナニカが赤毛の体を動かしていたアレ。

 それが謎の確信の正体だと確信した。


 確信があったのだが……いやいやいやいやいやいや――やっぱ、考えるのはやめよう。

 今の俺はただの子亀さんである。


 魂が巡り生まれ直し根本は同じ存在だとしても、このグランという赤毛は今ここにいる唯一無二の存在だから。


 何度巡ってもグランという赤毛は、ここに存在するこの赤毛だけだから。


 過去の赤毛が何であったとしても、そして遠い未来また生まれ直すとしても、グランという人間はこの生だけなのだから。


 たとえたくさんの面影を持って生まれ直しても、もうそれはグランとは別の存在だから。


 過去が何だったであれ、今はグランという存在だから。俺様にとっての赤毛はグランだから。


 だから過去も未来も考えない。たとえグランという人間に許される時間が百年にも満たない短い時だとしても。


 だが百年なんて俺様にとって瞬き以下ほどの一瞬。俺様だけではなく神にとっても一瞬。


 一瞬ならば良いじゃないか、何もかも忘れてぬるま湯に浸かっても。


 そう一瞬だけだから――何もかも知らぬふりをして、そのぬるま湯のような毎日に浸かるのも悪くない。


 その一瞬がずっと続くのも悪くないと思いながら。



 ずっとずっと続けばいいのに――それは決して望んではならぬものなのに。




 コチョ。




 仄暗い願いが心の奥底で蠢き始めようとした時、俺様の耳を塞ぐ赤毛の指がコチョコチョと耳の後ろを掻いた。

 ぬわーーーー、赤毛は寝ぼけて何をやってるんだーーーー!!


 って、微妙に心地の良い感覚で、休眠期以外睡眠を必要としない古代竜の俺様が心地の良さに眠くなってきただと!?

 何なんだこの赤毛は!?


 はっ!? まさかこれが赤毛の魂に染みついたコチョコチョの技術!?

 あ、ダメだ……コチョコチョが気持ちよくてマジで眠い……たくさん食べてたくさん飲んだ後なのでなおのこと。


 だんだん体がポカポカしてきて、ぬるま湯の中に浸かっている気分になってきて睡魔が押し寄せてきたぞ。

 ああぁぁぁぁ……こんなことで眠ってしまったらただの子亀になってしまうぅぅ……。

 ああ……今の俺様は子亀のふりをすることに決めたんだった……じゃあ子亀のようにこのぬるま湯のような心地よさに身を委ねていいか……。


 そうだな、ぬるま湯のような心地よさに身を委ねてもいいじゃないか。

 俺様も、赤毛も。


 だから赤毛ももうコチョコチョはやめて大人しく寝落ちをしておけ。

 俺様がカメカメの子守り歌を歌ってやるから。


 そして俺様も赤毛も起きたら、全て忘れたことにして日常に戻ろう。


 どうせ偉大な俺様ですらこの非常識な古代の神には敵わぬのだから、もはや寝ていようが起きていようが関係ない。


 それにこいつらは、非常識ではあるが赤毛に対して友好的すぎるみたいだから問題ない。


 なのでスヤァ……寝て起きたらこのことは夢ということにするためにスヤァ…………。


 いつもの非常識で騒がしい日常に戻るために、今はスヤァ……………………俺様がちょっぴり気に入っている日常に戻るために、スヤァ…………………………。






お読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
最近グラングルメの【グルメ】がなく寂しいです。
グランの周りはチョロ員が多いですね(笑)
偉大なはずのカメ君…。もはやただの可愛い子亀になってるカメ君…。グランさんにコチョコチョされて気持ちよく寝ちゃって可愛い…けど、何か切ない! にしても、三大面倒くさい神様w自称常識人で自称自分こそ長男…
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