王都にいきたい俺
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◤漆黒と真紅に染まる王都の空!! 王都上空に超大型黒竜と赤竜が飛来!!◢
◤天変地異の予兆!? 王都上空に巨竜出現で魔力障害多発!!◢
◤シュペルノーヴァ? リーベルタース? 王都に巨竜襲来! 特集、ネームド古代竜の謎に迫る!!◢
◤天恵!? 王都周辺に竜性植物大量発生!!◢
◤地震! 雷! 火事! 噴水! 貴族街火災続報!◢
◤【新種?】各地発見、リュウノナリソコナイ【怪異?】◢
「何々、先日王都上空に現れた二匹の巨竜の影響による混乱は今なお続いており――だよなぁ~、あんな超魔力の塊みたいな巨竜が頭の上で暴れてたらそうなるよなぁ……しかも二隻。あの魔力の影響で体調を崩す人も多そうだが、魔導具関係も影響を受けてそうだよなぁ。あ、でもあんだけ暴れたらドラゴンフロウとか生えまくってそうっていうか、生えまくってるのか! 今、王都の冒険者ギルドにいくとめちゃくちゃ稼げそうだし、俺の素材コレクションが増えそう! 今すぐ王都――ぐあっ!!」
「カーーーーーーーーーーッ!!」
カリュオンが買ってきてくれていた新聞を広げ、俺が意識を吹っ飛ばした後の出来事を確認していると、俺の右肩にいたカメ君からちょっと大きめの氷が飛んできて頬に当たった。
もしかして病み上がりの俺のことを心配してくれているのかな?
カメ君は優しいなぁ……いたっ!
うんうん、でも欲望が湧いてくるってことは元気になった証拠……いたっ!!
心配してくれるのはいいけれど、氷をぶつけすぎいいいい! いたっ! いたたたたたたっ!!
「チビカメ、もっとやっちゃって。どうせ俺の転移魔法がないとすぐには王都にいけないけど、欲に目が眩んだグランは何をやらかすかわからないし、悪い意味で不可能を可能にしてしまうからね。それよりカリュオン、他に知ってることあったら教えて? それとクッキーのおかわりちょうだい、ずっと寝てたせいでお腹がすいて仕方がないよ」
アベルめぇ……もっとやっちゃって、じゃない!
俺が不可能を可能にするすごい男だとしても、病み上がりに氷マシンガンをけしかけるのはやめろ!!
「んー、俺もこっちに戻ってきてからは、王都の情報はピエモンの冒険者ギルド経由だからなー。ま、あそこのギルド長さんは情報通だし、こっちの事情も知ってるからそれなりに情報は貰ってるけど、さっき話した通りだな。後はバルダーナギルド長に貰ってきたピエモンとその周辺の町の新聞くらいだな。ドリーにはお前等が寝込んでたことはギルド経由で連絡をしておいたから、アベルとグランの体調が戻ってから事情を話してくれればいいってさ。アベルに兄貴もそれで納得してるって」
「ん? アベルの家族も心配してそうだし、早めに実家に顔を出した方がいんじゃないか? 俺も王都まで一緒にいってやるから、早めに家族に顔を見せてやれよ」
「すごく俺のことを気にかけてくれているように聞こえるけど、グランと付き合いの長い俺は騙されないよ。グランは王都にいって、あの古代竜達の影響で生えてきたドラゴンフロウとかリュウノアカネとかを採取したいだけでしょ!」
「チッ、ばれたか。これだから勘のいいアベルは……いてっ! つめたっ! いてっ!」
俺と同じであの日からぐっすり眠っていたアベルは、家族にちゃんと無事を報告して安心させてあげないといけないよなぁ?
って、わけでアベルに実家に戻るように促したらチビッ子から木の実やら氷やら小石が飛んできた。
コラーーーーー!! 病み上がりの俺に何をするーーーーーー!!
美味しく腹が満たされたの後は、俺が意識を吹っ飛ばしていた間のことをカリュオンとジュスト、そして俺よりも長く意識を保っていたアベルの話を聞いていた。
時々チビッ子達から色々ぶつけられながら。
あの日、俺が意識を吹っ飛ばした後、二隻の古代竜――シュペルノーヴァとリーベルタースはどこかに飛び去っていき、アベルはチビッ子達に力を借りながら意識のない俺を連れて地上に戻ってきたらしい。
そしてもう限界だから後で連絡するとドリー達に伝えて、俺達を連れて家に転移したところで力尽きて眠ってしまったらしい。
それから五日間、俺とアベルはぐっすり眠っていたらしい。
その間みんな心配してくれて、ジュストは三姉妹と一緒に森の奥に入って薬草をたくさん採ってきてくれていたし、ラトはで森の住人から薬草酒を貰ってきてくれていたし、チビッ子達も海の幸や南国フルーツや木の実や石ころをたくさん持ってきてくれていた。
彼らだけではなく、俺とアベルが寝込んでいることを知ったフローラちゃんや毛玉ちゃんも薬草や謎のヘビを差し入れてくれたとか、タルバとクーモも鉱物を手土産にお見舞いにきてくれたとか、それからドリュアスの長老のミッシィアニエルや変態ドリュアスのイクリプスまで見舞いを持ってきてくれたとか。
ハイエルフの里で色々貰ってきてくれたカリュオンは、それ以外にもワンダーラプターに乗ってピエモンへ通って冒険者ギルド経由でドリーに連絡を取ったり、新聞を手に入れてきてくれたりと情報収集もしてくれていた。
マジでカリュオン頼りになる。
カリュオンが持って帰ってきてくれた情報は、ここが王都から離れた地方のこともあり、新聞の内容は情報ギルドを始めとした各種ギルドから発表された内容に基づいた憶測混じりのものが多かったが、それでもこんな地方まで数日で王都の情報が届いているというのは、あの日の出来事がそれほどの大事件だったことを物語っていた。
大きな町の役所やギルドには遠方と少ない時間差で連絡を取ることができる魔導具が配備されており、近年ではその普及率もかなり上がっているとか。
人口のそう多くない田舎町ピエモンの冒険者ギルドにもその手の魔導具は配備されているようで、おそらくバルダーナに頼んで王都のドリーに俺達の状態を伝えてもらったのだろう。
きっとそこからアベルの家族にアベルの状態は伝わっていると思うが、やはり早く元気な姿を見せてあげる方がいいと思うんだ。
もちろん俺もアベルに付き添って王都までは一緒にいく……うわああああああああ! 氷や木の実や石ころをぶつけるんじゃなあああああああい!!
俺とアベルが寝ている間にカリュオンが集めてきてくれた情報と新聞の内容によると、王都では古代竜の絶大な魔力の影響により体調不良者と魔導機器の不具合が多発し現在大混乱中らしいが、国が迅速な対応により比較的早いうちに混乱は収拾するだろうとのこと。
そんな中、貴族街で極地的な地震が発生したらしく、更に運が悪いことにその中心となった貴族家に突然の落雷。そして落雷からの出火なのか火災発生、ダメ押しのように地震で陥没した地面から水が噴き出し水浸しになったとかなんとか――世の中には運が悪い人もいるんだなぁ。
どこの貴族家かまでは新聞には書かれていなかったが、不幸中の幸いなことに被害は地震の中心となった貴族家だけで済んで負傷者はいても犠牲者は出なかったらしいが、あまりの恐さにそこの貴族家関係者は悪夢にうなされるようなったとかなんとか。
王都の上空でとんちき古代竜が暴れていたから、周囲の魔力バランスでも崩れて運が悪い貴族様の敷地に吹き溜まって最悪な連鎖でも思ったのかなぁ?
それとも王都の混乱に乗じた物取りの犯行か、貴族にありがちかもしれない陰謀か。
ま、新聞の記事も憶測や不確定情報も混ざっているし、話半分くらいに斜め読みくらいでちょうどいい。
しかしそれより何より、俺が最も気になる情報は、今回の騒動の影響で王都周辺に生え散らかしているという竜性植物――ドラゴンフロウ、リュウノアカネ、リュウノコシカケのような竜の魔力が濃い場所にいつの間にか生えてきて、竜の魔力がなければ育たない種の植物。
強い力を持つ竜が近くにいれば唐突に生えてくるため、竜の魔力が具現化した植物をもいわれており、それらはどれも優秀な調合素材で値段もお高い。
それが生え散らかしているという王都周辺は、きっと竜性植物の採取で大賑わいに違いない。
やだーーーー! こんなところで寝ている場合じゃなあああああい!! 俺も竜性植物のビッグウェーブに乗りたああああああああい!!
つべたっ! いてっ! ぐあっ!
コラーーーーーー!! チビッ子達はどうして俺に氷や木の実や石をぶつけるんだあああああああ!!
「ゲ……ゲ……ゲ……ゲ……」
「ホント、変なものをぶつけてこないのはサラマ君だけ――って、サラマ君? 何をやってるんだ? 壁に頭突きしてるとたんこぶができるぞ?」
新聞片手にカリュオンの話を聞きいている俺がカメ君と苔玉ちゃんと焦げ茶ちゃんに色々ぶつけられている部屋の隅っこで、サラマ君がコツコツと壁に頭を自らぶつけていた。
どうした、サラマ君!?
お読みいただき、ありがとうございました。