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老人に忍び寄る、心優しいこの女の狙いは?

作者: 七瀬








私の元で、若い女性ひとが一緒に住む事になった。

孫ほど歳の離れた女性ひと

すまない、私の名前は木辻 清彦78歳、妻は18年前に

先立たれてしまう。

妻は、頑固な私によく尽くしてくれた。

妻が亡くなる最後に、“今までありがとう”と言えて良かったと

心からそう想えた。

妻も泣きながら、私に“貴方で良かった”と言って亡くなった。

妻の最後は、安らかな笑顔のまま亡くなる。

私は、妻が大変な子育ての時には仕事で殆ど家には帰らず

子供と一緒に遊んだ記憶もない。

だから今でもたまに実家に帰ってくる子供達とは、ぎこちない会話になる。

きっと、私を恨んでいるんだと思う。

妻をずっとほったらかしにしたのは、私だと思ってるはずだから...。

それでも、私は【幸せ】だったと言える。

最後の最後、たった10年ではあったが妻との有意義な時間が過ごせたからだ。

私のわだかまりも、この時になくなっていた。

妻の最後を、看取れて良かったと...。

妻に今までの感謝を伝えれて良かったと...。

私の人生は、順風満帆とはいかなかったが、妻と出逢えた事は宝物のように

今でも想っている。





・・・あれから、妻が亡くなって8年。

私はスナックに、元会社の同僚に誘われ通うようになる。

今までは、仕事人間でこんな癒しの場があるなんて想像もしなかった。

田舎にあるお店は? 夜になると、どんどん閉まっていく。

そんな中、1軒だけあるスナック。

夜遅くまで、電気が明々とそこだけついている。

私はまさか、自分がスナック通いをする人間になるとは思ってもみなかった。

そこで働いてる一人の女性ひとを、私は気に入ってしまう。

彼女の名前は、寺岡 陽菜乃 26歳、シングルマザーでこのスナックで

働いているそうだ。

都会に疲れて、田舎で子供と一緒に暮らしたいと思い田舎ここ

3歳の男の子と一緒に引っ越してきたらしい。

私は、頑張っている彼女に惹かれてしまう。

まだ若いのにしっかりしていて、礼儀や作法、気遣いのできる女性ひと

だった。

私は、どこかで亡き妻の面影を彼女に重ねていたのかもしれない。

若い頃の妻に、どことなく似ている彼女に【恋】をしてしまったのだ。

年甲斐もなく、孫のような彼女に恋なんてと思われるかもしれない。

それでも、私は殆ど毎日のようにあのスナックに通い始めた。



『あら? 清さん、また来てくれたの?』

『・・・あぁ、』

『清さんの“本命は、陽菜乃ちゃんだもんね!”』

『・・・えぇ!? い、いやいや?』

『そんなに恥ずかしがる事ないじゃない! 顔が真っ赤よ!』

『・・・・・・』

『もう少し待ってね! もう直ぐ、陽菜乃ちゃんが出勤してくる頃だから。』

『それまで、ワタシが清さんのお相手をしていいかしら?』

『・・・い、いや? 陽菜乃ちゃんが来るまで一人で飲んでるよ。』

『あら? 断られちゃった! それだけ、陽菜乃ちゃんがいいって事よね!』

『・・・・・・』

『じゃあーあと15分ぐらい待っててくれる?』

『あぁ、分かった!』





私は、陽菜乃ちゃん一筋なんだと思ってもらいたかった。

【浮気はしない!】

私の、誠意を彼女に知ってもらうためにも、、、!

私は彼女が居ない時は、誰かについてもらう事を拒否していた。

そんな私の気持ちを陽菜乃ちゃんは知っててくれたのだろう。



『あら? 今日もわたしを待っててくれたの、清さん?』

『あぁ! ずっと陽菜乃ちゃんを待ってたんだ!』

『ごめんなさいね、子供が熱を出しちゃって! 預けてくる場所に

時間がかかっちゃったのよ!』

『お子さんは、もう大丈夫なのかい?』

『えぇ! わたしが出て行くまでには、熱は下がっていたから。』

『あぁ~良かった! 子供は直ぐに病気や怪我をするから、心配だね!』

『そうね! さあさあ~飲みましょう! 清さん、ビールでいいかしら?』

『あぁ!』

『じゃあーカンパーイ!』





 *




私が、スナック通いを始めて半年後。

彼女は、子供を連れて私の家に引っ越してきた。

家賃を払うお金が省けるし、節約して息子の為に何でも買って

あげたいという彼女には、私の家で一緒に住む事は当時の彼女に

とってプラスしかなかったのだろう。

私にとっても、一緒に住む事で老人が一人で暮らす寂しから解放された。



『ねえねえ、清さん! 今日の晩御飯は何がいいかしら?』

『柊の好きな物でいいよ。』

『じゃあーカレーでいい?』

『あぁ、私はそれでいいよ。』

『ありがとう、清さんのおかげで貯金も随分と貯まったのよ。』

『そうか、柊に好きなモノをいっぱい買ってやれるな!』

『そうね!』






 *




彼女と一緒に暮らし始めて3ヶ月後。

私は、既にこの世にはいなかった。

彼女が、私に多額の保険金をかけて殺したのだ。

まさか!? そんな女だったとは、微塵も感じていなかった。

だが息子の柊の為には、多額のお金が入った事で何不自由ない

生活が送れる事になったのかもしれない。

それなら、私の人生もこれで良かったのかと、、、。

それに! やっと、亡き妻の所に行けるんだから嬉しいことだよな。





最後までお読みいただきありがとうございます。

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