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遥かな影-6

    * * *


 いつもと同じように学校を出てバス停に向かう途中、急に呼び止められた。はっとして振り返るとそこには、元木がいた。明るい所で見る元木は、一層うす汚く、ばさばさの髪の間から覗いている瞳は冷たかった。

 一緒にいた友達の目を気にしながら別れると、元木が招く方へついて行った。

 人目がない駐車場の片隅に着くと、元木はニヤニヤ笑みを浮かべながら美加に向き直った。

「約束通り、シメてきたぜ」

金網に背をもたれさせながら、元木は言った。

「え、何?」

「ヤキ入れてやったってことさ」

「え?」

「わかんねえ奴だな。お前に手を出さないように、話つけてきてやったってことさ」

「でも…」

「なんだ。証拠が欲しいんだろ。ほら」

元木はスマホを開くと写真を見せた。そこには、見知らぬ男がうす汚れた姿で倒れている姿が写っていた。

「これ…?」

「そいつが松下っていうチンケな奴さ。力もないくせに虚勢ばっかで」

「でも、本当に本当なの」

「あ、そうか、松下の顔、知らねえんだな。じゃあ、こっちの写真も」

次に見せられた写真には、剛が土下座していた。泣きながら何か言っているような写真もあった。唖然として見ていると、元木はにやりと笑った。

「そんな程度の奴さ。親分がやられたら、あっさり土下座さ。今後、一切、あんたにはつきまといません、とさ」

「ど…どうして?」

「簡単さ。松下の奴にシンナー掛けて、火つけてやったのさ。のたうちまわってる間に、ヤキ入れるって寸法さ。簡単だろ」

「ひどい……」

「あんたのためさ」

元木はニヤリと笑んだ。

「それより、あんた、約束。覚えてるよな。一日俺に付き合うってこと。今度の日曜、空いてるか?」

「あ、えぇ…」

「日曜の午後一時、ひばりが丘八幡の駅前に来な。いいな」

「…ぅん」

「来なけりゃ、あんたも、燃えちまう運命だぜ。なんてな。そこまでは、やんないけど、約束は約束だ。守らないってんなら、こっちもそれなりにさせてもらうぜ。覚悟しときな、いいな」

「…ぅん……」

「じゃあ、日曜。よろしく」

元木が去って美加は震えていた足をようやく動かすことができた。何故か、後悔する気持ちが沸き起こっていた。

 ―――誰か、助けて。

そう思いながら、ふらふらとバス停に向かった。


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