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ヘビは温度で獲物を見分けるのだったか?
さっきの皮は太陽であっためられたからかな?
動物の生態のTVや動画を思いだす。
「・・・体温か?・・・」
「・・・ハーラ、小川に体を沈めてやり過ごそう。」
「・・意味はあるのか?」
「・・・後で話す」
俺とハーラは静かに全身を小川に沈めた。マムシは皮を飲み込もうとするのを諦め、小川の大きな石の間を進み、鹿を狙っている。
途中マムシと自分の距離が数メートルの時は心拍数が跳ね上がった。
鹿の親子は水に入った時の音で一瞬俺たちを見るが、気にせず水を飲んでいた。
鹿の方を見てみたいが、音をほとんど出さず進むマムシはかなり恐怖だ。
刹那・・・
「ピュイ〜!」
マムシが小鹿を襲った
小鹿の右後ろ足に最初の噛みつきが決まった様子、小鹿は跳ね上がるが、6歩くらい走ると毒の効果か倒れた。
マムシは小鹿の頭に狙いを定め再び噛み付く、頭より少し大きな小鹿だ、顎を外しながら丸呑みする気らしい。
「好機!」
ハーラが槍を構えてマムシに向かって飛び出した!親鹿は逃げだした、俺は・・・立ち尽くしていた・・・
が、意を決して狼の折れた刃物を持ってハーラを追っていった。
「ヌン!」
「キシャー!!」
ハーラは槍で頭に近い胴体の部分を一突き、人間で言う喉元だろうか、マムシは痛みで小鹿を吐き出すと同時にハーラをぐるぐる巻きにしだした。
流石、軍人?チャンスは逃さずか、そして好戦的だが、少し無謀か?と思ってたら、めちゃくちゃピンチだ!
「ハーラ!」
声をかけ俺も闘わないとと思うが、ここから躊躇してしまう、ハーラの手足は見えるがマムシにぐるぐる巻きにされており、絶対絶命だ!
槍はまだ刺さったままなのが目についた!
「槍をねじ込む!」
折れた刃物をマムシの目に目がけて投げつけた!目には刺さらなかったが、マムシが頭を少し引いた。
隙を見せる事なく、無我夢中で槍の端に飛びつき、全体重を槍にかけてみた!
「キシャー!!!!!!!!」
貫通した!槍の穂先が現れ砂利に刺さってる。
刺した所からは血が滲み出ていた。それでもまだ、マムシはよろよろと鎌首を持ち上げようとしていた。
こちらも全力で槍を地面に抑えつける。
マムシが弱った影響でハーラもぐるぐる巻きから辛うじて脱出した。
「ッ!タク!槍を倒して、マムシの頭を裏返せ!」
「了解!」「こうか!!!」
マムシの頭がひっくり返り、俺も地面にねっ転がり槍に腕と足を絡めしっかり槍を離さないでいた。そうするとマムシの腹側が見えた。
と同時にハーラが大きな岩を持ち上げ近づいてきた。
「ヌン!」
マムシの頭に俺の胴体くらいの岩を叩きつけた!
俺は倒した槍を離さず持っていたので振動が伝わる。
ハーラは先程より小さな岩を持ち上げ、何度も何度も、マムシの頭に叩きつけた岩へ更に叩きつけていた。何個か岩が割れ、とうとう、最初に叩きつけた岩も割れた。
最後と言わんばかりにハーラが岩を持ち上げ、頭に叩きつけた。
マムシの胴体は暴れていたが、やがてぐったりと動かなくなった。
『レベルか上がりました』
「・レベル⁈・・・ハハハ、映画かよ、でもリアルな戦闘は泥臭い終わり方だなぁ・・・心底肝が冷えた・・し、大蛇なんてたまげたぞ・・・」
俺は緊張、恐怖、その他諸々で槍から手が離れなかった。
「タクよ助かったぞ、危うく、丸呑みにされる所だったわい」
「・・・ああっ生きてて良かったよ、それよりも、槍に岩があたって痺れたのか、怖かったのか、色々あって手が離れない・・?、槍をとってくれ。」
俺は震えながら言った。
ハーラは優しく、俺の手から槍をとりながら、
「フム、マムシと一戦交えるとはな、此奴は隠蔽が上手く、噛まれた時の毒が厄介だが・・・倒す事ができて良かった。して映画とはなんだ?リアルとは?それにその服装・・・」
「俺はこの世界の住人では無い、木や石等の景観は一緒だが、こんな人を丸呑みする様な大蛇は知らない、狼も遠くの国にはいたが、肩に刃など生えていない・・・全てが驚きなのだが・・・兎に角冷静にならなきゃと思ってる・・服装は俺の世界のものだ化学繊維と綿からできている。」
「確かにタクの様な黒髪、黒目は珍しいしその目立つ服装も少し納得できる。我が生まれて50年、不思議な事もあるものだ。今はあちらの世界に帰る術は無いのか?」
「フ〜少し落ち着いてきた、心臓の鼓動がわかりよ。そうだな帰る事はできるが、こちらで寿命を全うしてくれと神様に頼まれたよ。」
「神だと?何らかの使命を帯びてこちらにきたのか?」
「タクが成さなければいけない事は何だ?」
「それは、特に無い、好きに過ごして寿命を全うしろと神に言われた。」
「あ、そうだ、レベルって何だ?突然声が聞こえたけど、レベルが上がるとどうなるんだ?」
「ヌゥ、レベルは知らんが戦士としての格が上がったのか?」
「次の戦闘や依頼が楽になるぞ良かったな!」
「ハーラはその歳ならば、『戦士の格』はどのくらいなんだ?」