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少し肌寒く、目を覚ますとかすかに光を感じた。
「朝か・・・焚き火は消えたのか」
薄暗い部屋の中で、ハーラはまだ横になっていた。
早く起こしては悪いと思い、外に出た。
近くに小川と水溜まりを見つけ、顔でも洗うかと近ずく。
「冷たい・・・」
ジャバジャバと水溜まりで顔を洗った。
飲みたいが生水か胃腸やられるかな?
迷いながら、簡単な体操とストレッチをしてたらハーラが出てきた。
「良い朝だな、そこの水溜まりは飲むのはやめておけ」
・・・野外の水だ、やはり胃腸炎にでもなるのか?
「ワレの水浴び場だからな。ハッハッハッ」
「飲むならこっちだ」
ハーラは小川に木のコップを使い飲みだした。
ハーラからコップを受け取って俺も水を飲む。
「さて、少し片付けて、それから出発だ。」
「わかった、ハーラさんこの拠点、いや立派な小屋はハーラさんだけのモノか?」
「タク、我の仲間達と訓練する時に使ってたのだ、壊れた家や木々を集めてアジトにした。ここから・・・いや何もない。」
「すまんがまた使う時もある、又狩に来るからな!水場に兎や猪、それを狙った、狼やワイバーンもいるな」
「ワイバーン?・・・デカイのかそれは?」
「首から尻尾まで、5メートルはある空飛ぶトカゲだ、ギャーギャーうるさいのがかなわん。」
「ソイツらを狩って売り物にしたりする。流石にワイバーンは1人では難しい、仲間が10人はいるな。」
「えっ?今ワイバーンに会ったらどうするんだ?怖いぞ?」
「闘いながら逃げれば何とかなるだろう。ハッハッハッ。」
「奴は兎を良く食ってる、次に猪、狼や人間は腹が減ってたらくるかもな」
野生の獣なんて腹が減ってるから獲物を探してるんだろ?狼もワイバーンも、こぇ〜。
後片付けは焚き火を確実に消して、木の食器をまとめ、小さな箱に入れた。戸口に突っかい棒を斜めに置き、コレで片付けは終わりらしい。
「タクよこの皮袋に水を入れたら行こうか、それとコイツを運んでくれ、少し重いかもしれんが、お主なら見た目、出来るだろう」
裏手から狼と猪の皮を何枚か持ってきた、30枚はあるだろう、結構な荷物だ。
「どうやって運ぶのだこの量は?」
「コレだ、この手押し車で持っていく。」
「・・・1輪車?タイヤは木か」
「なんだ知ってるのか?なら使い方はわかるな?我も手伝うから大丈夫だろ?」
「全てとは言わないが運搬は任せたぞ?」
「・・・これは重労働だな、やれるだけやるか」
1輪車の前にロープをハーラが付けた、牽引する気なのか後は手押しするだけ。
「では参るか、街まで日没までには着くだろう」
ハーラはロープを持ち、先頭を歩きだした、ロープも緊張俺も一輪車の取っ手を上げ、少し力を込めて前に進んだ。
強行軍開始だ当初の歩みだしからアップダウンの始まりだコレは少々キツいぞ。
二時間くらいは歩いただろうか森と大地の景色になっていた。ハーラの牽引の力が信じられないくらい強く、俺は一輪車の水平を保つくらいで大丈夫だった、こちらの世界の人の基礎体力は軽くアスリートを超えているな、現代に連れていけたらレスリングや柔道や重量揚げは余裕の金メダルだな・・・
「お?小川か・・・ハーラさんよ、休憩して水でも飲まないか?」
「ふむ、頃合いだな休むとするか。」
小川の水をコップにすくいながら、二人で交互に飲んだ、少し土の匂いがするが、水分は大事だ。
「ハーラさん、今向かってる街では働き口はあるかい?」
「タクよワレの事はハーラで良い、ギルドに行き仕事が貰える、商会や飯屋なんかもあるが、ワレには無理だな性格があわぬ・・・ヌッ?」
「ハハッw、ハーラは闘うのが似合って・・・モガッ!」
「・・・タク黙れ」
ハーラは俺の口を塞ぐと同時に怖い形相になり、自分の口にも指を一本立てていた。
ハーラは槍を手元に静かに引き寄せ、気配を殺していた、口から手を離してもらった俺は辺りをゆっくりと見回した。
黒い影がぬるりと木々の間を抜けていくのが見えた。
「・・・行ったか、アレは何だ?」
「まだ静かに、あれはマムシ、巨大で毒がある・・・襲われたらひとたまりもないぞ」
マムシ⁈異世界ではよく育ってるご様子で!
「・・狩るのか?」
「無理だ、やり過ごす。あの大きさはこの森のヌシかもな、幼体のワイバーンも食うぞ」
巨大な捕食者か・・・ヘビはしつこいし、ばれないのが得策か了解。
「タクよ、まずいな一輪車の皮に狙いをつけたみたいだ。」
「皮があるから一輪車が生き物に見えるのか?マムシは?」
「わからぬ、しばらく様子を見るしか考えが浮かばぬぞ」
巨大なマムシは一輪車の荷台部分の皮だけを口を開け飲み込もうとしだした、が、梱包しているロープが一輪車に強固に結ばれており、飲みこむのを邪魔していた、流石に一輪車を飲みこむ程口は開かないのと、木は飲み込みたくないらしい。
その時、小川の対岸に立派な角をつけた鹿らしきものが小川に水を飲みに来ていた。鹿は我々にもマムシにも気がついてなかった。
鹿が水を飲みだした時に、鹿の子供が1匹草むらからザザッと音を立てて現れ親に近づいて行った。