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真っ白な淡い光の中から、男が草原に降り立った。
「・・・ここが異世界?・・・」
「いや、この光景は見た事あるぞ!!!カルスト台地!○吉台!山口県か⁈愛媛県⁈」
でも、道路無いな、売店の様なとこも。
探すか?
いや、待て。さっき神様が異世界に送ったんだよな?慎重にしないと「死」があるのか。
絶望感は余り感じないな、不思議だ。
今は空腹感も、喉の渇きも特に感じない、休み休みに体力を使えば、20キロは行けるか・・・
職業のありがたみを,初めて感じる。ありがとう陸上国防隊!地球に帰れたらもっと頑張って働きます!多分・・・
・・・水筒無いな、服は私服、以上・・・
この手の話はラノベでチェック済みだ、ステータスチェックとか、大量の物が入ってる袋とか、チートな魔法とかスキルとか!まずわ神頼み!
「神さま!銃が欲しい!何も無いのはあんまりだ!小銃と拳銃とナイフをください!お願い!水と背負える2リッターの水筒とレーションとバックパックも!」
声は,草原の涼やかな風に消えていった。
「反応無しか・・・部隊で教わったサバイバル能力も物があってのサバイバルだからなぁ・・・そして銃無いと、ナニかに会った時、戦う事も逃げる事も困難だろ・・・」
3メートルはあろうかカルスト台地?の岩にもたれながら、少し、考える事にした。
「周囲は見渡す限り、草原と岩。起伏はところどころ激しい、人や動物はいないな、カルスト台地の様な地形なら、水で浸食があって、下は洞窟の様になってるのか?鉱物か溶け込んで安全かはわからないが水はありそう・・・」
空を見上げる、雲がゆるやかに流れている。地図も無く自分の位置は不明。太陽もあるが、後どのくらいで日没か・・・
風下と雲が流れる方向は若干ずれているが、見渡す限りでは・・・オッ、1番高い丘が見える。どのくらいかかるかわからないが行ってみよう。
俺は靴紐を少しだけキツく締めて、歩き出した。
体感で1時間ぐらいだろうか、丘の上についた。
空身とは言え、運動したら水分は欲しい。この状態で連続して行動するのはギャンブルに等しい、少し舌打ちして、丘の上から全周囲を見渡す。
「ほとんど同じで変わり映えの無い光景だ、マズイな。」
「・・・餓死は避けたい。⁈歩いて来た方向に虹が見える!川か湖?何故さっきは気がつかなかった?」
戻るか・・・そして虹の方向に歩きだした。
太陽が先程より低い位置に動いていた。
「更にマズイな、気温はどのくらい落ちる?身体が冷えて動かなくなる」
『・・キン!・・・ギャン!!』
「⁈ん?金属音?あっちか!」
深く考えずに凹地目指して走っていった。
凹地を覗くと、大きさ穴になっており10メートルくらい下で、槍を持ったイカツイ人影と巨大な紺色の犬?猫?
が横たわっていた。
「何奴⁈姿を見せろ!」
不用意だった、大きな槍を向けられ血走った視線をあびた。
「あーいや、金属音がこの穴から聞こえたので・・・確認して見ようと」
「金属音?フン!この狼を仕留めたのだ!」
「音が出たのはこの狼がコレを持ってたからだ!」
イカツイ男は槍で今度は刃物の様な物を指していた。
紺色の狼の肩には折れた刃が残っていた。ゾイ○ワイルドかよ?
「貴様は、何物だ?名を名乗れ?」
槍を再度向けられ威圧しながらイカツイ男は言う。
「待ってくれ、俺の名前はクスキ・タク、・・・迷って気がついたらここにいた。槍を向けられて恐怖を感じてる、あんたに敵意は無い、まず槍を収めてくれ。」
俺は相手を刺激せず、自分の保身を保つ回答がベストと思い淡々と言った。
槍の切先を外しながらイカツイ男はこう言った。
「ふむ、黒髪で黒目の種族は初めて会った、俺はハーラだ、元騎士で・・・今は獣や魔物を狩り素材を売るのを生業にしておる。」
「して、クスキタクは迷ってるのか?1日歩けば街に行ける、俺も頃合いだ。明日、街に一緒に行っても良い。」
「え?ソレは願ったり叶ったり、ハーラさんそれで頼む!何も持ってないけどいつか御礼はする!」
「あと、クスキは姓で名がタクだ、タクと言ってもらって構わない。」
「ふむ、ならばクスキタクよ。礼はいらぬが素材を運ぶのを手伝え。それと質問だが姓があるな、貴族の者か?領主の近縁者か?発明等で利益を得た商人か?」
「あー、お偉い様では無い、以前住んでたところは沢山人いて、区別をつけるためか姓は皆もってる。そんなところに住んでただけだ。」
「あいわかった。いや、色々わからぬ・・・」
「ホッ!」
ハーラは動かない狼を、担いだ。
「クスキタクよ、もう日が暮れる。拠点までいくぞ。ついてまいれ」
「わかった、その折れた刃は不用なのか?」
「うむ、わしの槍で折れるような刃だ価値は低い。ソレより、このエッジウルフの毛皮と魔石が有れば素材として売れる。やらんぞ?」
「折れた刃はもらって良いか?手持ちが何もないのでね。」
「好きにしろ、行くぞ。そう言えば恐怖心はもう無いのか?」
歩きながらハーラが聞いてきた。
「あ、ああ、実は槍向けられた時も距離を取って逃げる事は考えてたが、正々堂々と話をするハーラさんは信頼できると思ったのさ。そっちこそ警戒を解いてくれてる気がするよ?」
俺は立ち止まり気お付けし、頭を下げた。
「ハッハッハッ大抵の者は、我の事を恐れており話などしたがる奴は数えるしかおらん。」
「ふむ、おぬしもどこかに国に仕官していたのか?見たことないが丁寧な挨拶だな。」
「・・・記憶があやふやで申し訳ないが、確かに集団の中で働いていた気がする。」
「でも俺が知ってるとこでは無いんだ、ここは。・・・」
俺は自衛隊の事はとっさにふせた、銃や装甲車、パソコンなどなど説明ができない・・・
「何か秘めているか、他国の特命か、呪いか、神の奇跡かは知らぬがお主も『男』ならば、今後覚悟を決めて生きていくしないだろう」
「そうか、覚悟か必要だよな、ふわふわ生きてたら死ぬよな」
「あっそれと魔石って何でしょうか?金になるなら宝石みたいなもの?」
「うむ、魔石は魔物にあり魔力を帯びた石だ、生物につけば魔物に、道具につければ魔道具に燃料になるな。生まれつきに持ってるものも居るらしいが見た事は無い。やらんぞ?」
「助けて貰っておいて、物乞いはさすがにできない。必要なら自分で探しにいくと思います。」
「そうか、この槍でタクを刺さないようにしてくれ」
「・・・勿論です。」
1時間弱は歩いただろうか、人より少し高い木々と小川がある場所についた、先程の虹はこの小川からと予測する。
「クスキタクよ、ここが拠点だ。」
隙間が沢山ある色々な木材を使った簡素な小屋が見えた。小屋につくとハーラは中央の石で囲まれた焚き火している場所をいじっていた。
「タクよそこにある、枯草をとってくれ火をおこす。」
薄暗い中から、手探りで集積されてある草の束を掴みハーラに渡した。
「ハーラさん、どうやって火を起こすんだ?」
「これだ。」
「種火を残してたのか」
ハーラは灰の中から炭になったものを探し出し、乾燥した草の束をパラパラとかけていった。
すると、簡易な草の束が煙を出し、ゆっくりと燃え上がった、ハーラは手際良く、枝、小さくなった木をゆっくりと足しいった。
ハーラは先程の狼の腹辺りを切り、適当な大きさの肉の塊にして、串に刺し、何かを振りかけ、燃える薪に串を立てて並べていった。
ハーラは奥から皮の袋の様な物を取り出し、栓を開け、グビリと飲み出した。
「ほら、おまえも飲め。」
俺は皮の袋を、受け取り、口に持っていく。
喉に強烈な熱い何かが通る。
「!酒?か?何かから蒸留した?珍しい味・・・酒は全く飲めないなんだが・・・」
「・・・コレを食え以前取れた獣の肉だ、腹も空いただろう?」
「ありがとう何の肉?でも美味そうだ、ック‼︎」
めちゃくちゃ筋っぽい肉で固く塩味だけのワイルドな味だったが、食べ出したら大きな肉だが、数分後には骨になっていた。
「一晩の宿に、食事、ありがとう。とても助かった」
「気にするな、以前は俺は小隊を率いていた、仲間は大事だ」
ハーラはそれ以降殆ど喋らず、ぼんやりと肉を食い、酒を飲み、薪を足していた。
肉も酒も無くなった頃に
「クスキタクよサンコウとフーオーとヒルトの内戦は知っているか?」
「ハーラさんその内戦は知らない、国の名前も領地の名前も知らないんだ・・・それと、俺の事はタクでいーよ。」
「そうか、我はサンコウの騎士団におった、サンコウは大臣をよく輩出した地であり、海洋の資源が豊富、又、燃える石が採れる。我は騎士の家に生まれ、武芸、学問を子供の頃から叩きこまれたものだ。」
「ある日から騎士団の中で裏切りや逃亡者が出て混乱していった中隊の元で働いていた俺は自分の小隊をまとめて、再構築してる最中にフーオーとヒルトが攻めてきて、砦で我が部隊は散り散りになった。」
「部隊が無くなり、途方にくれた頃に帝都からようやく使いの者が来て。帝の命令で内戦は終わった」
「今やサンコウの領主は変わり、平和になった、だが、戦った者達は生死を問わず民から疎まれている。残念なものだ。」
「語り過ぎた、すまんな。」「ワシは横になる」
「あ、ああ、本当に大変だったな。何て言うか・・・お、俺も寝る」
焚き火はそのままで自分の今後はどうなるか少し不安になったが、肉を食べ、酒を飲んだせいか、横になると意識が落ちていった。