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冷酷勇者と獣人少女。  作者: いぬはしり
二章 王都奪還
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三 勇者パーティの凱旋②

 そうして場所は王の間。

 勇者パーティはダッカール国王の下にひざまずく。


 その勇者パーティの人数を見て、王は少し訝しげな顔をしたが、とりあえずのねぎらいの言葉を送った。


「まずはここまでの旅路、大変だったであろう。ここに感謝の言葉を告げる。そなたらの活躍はとうにこの町全体に轟いておるぞ。なんでも、魔王軍四天王の一人を討伐したとか」


 王の言葉は無機質な物であった。

 パグラは黙って、深く頭を下げた。


 そして、王は勇者パーティを一通り眺めると、言いにくい疑問を声にした。


「レーティと勇者が見当たらないようだが……」


 勇者パーティの心臓に鞭打つような衝撃が響いた。

 なんと言うべきか……いや、既に言う事は決まっていた。だが、やはり言いにくい。

 下手すれば俺達の首が飛ぶかもしれない。


 パグラはひとつ深呼吸をして、慎重に言葉を選んだ。


「レーティは……四天王との戦いにて、お亡くなりになられました」


 王は顔色ひとつ変えず、少しの沈黙を置いた。


「そうか……。レーティは勇ましく戦い、逝けたのであろう?」


 王の言葉に、パグラは少し迷った。


 無論、魔王軍の幹部、四天王との戦だ。無傷で勝利するなどと思ってはいない。

 犠牲が出ても仕方がない結末だと、パーティの誰もが思っていた。


 しかし、実際にレーティを殺したのは勇者だ。そんな結末など、レーティは認めたのだろうか。


 ああせねばならなかったと言うのはこのパーティの誰もが分かっている。


 だが、もしかしたらレーティが助かる道だってあったかもしれない。

 そんな道を探そうともせずに勇者は殺した。だから追放した。


 ……なんて言うのは詭弁だろう。


 結局何が正しくて何が悪いのか、あんな状況の中では誰だって判別できない。

 それをあの勇者はいとも容易く決断を下し、自らの剣でレーティを殺した。それが怖かった。


 あの勇者の行動が、人間の俺達の理解には及ばず、それがどうしようもなく怖かった。


 昔からそうだった。あいつは何もかも出来すぎた。頭脳も肉体も思想も、俺達をはるかに超越していた。

 まるで自分達と同じ人間とは思えない異質さに、俺は恐怖していたのだろう。


 だから勇者を悪者に仕立てあげ追放し、なんとか自分達が()()できる結末にしたかった。


 この勇者に対する申し訳なさに憎悪と恐怖。様々な気持ちが入り乱れ、どうしようもなくやるせない思いでいた。


 やがてパグラは、静かに王の言葉に頷いた。


「……なら、安心した。彼女は全世界の英雄だ。せめて天の世で安らげるよう、私からも祈ろう」


 パグラは、いや、パーティの全員が唇を噛み、涙を圧し殺していた。


「それで、勇者はどうしたのだ。まさかあのような者まで死んでしまったのか」


 パグラは息を飲んだ。


「……勇者は」


 言いかけて、パグラは周りの仲間に目を向ける。

 やがて意を決し、抑揚なく声を張った。


 ーーーーーーーーーーーーーーー。

 

 その場にしばらく静寂が残った。

 王は指を額に当て、何かを考えていた。

 その一刻一刻がパグラ達にとっては心臓に悪い。


 やがて王は口を開いた。


「明後日頃に、宴を開こう。各国の貴族がそなたらと話をしたいと、今日もこの町に集まっておる。今日はしっかり休んで、英気を養え」


 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


 場面は移り変わり、元勇者リリィとラヴラ。

 朝方のモフィラは相変わらずの幻想的な景色を醸し出していた。


 昨日は、霊脈を操り枝を光らせる事に成功したラヴラが調子に乗り、新しいおもちゃを与えられた子供のように光らせてはしゃいでいた為、ごっそりと体力を持っていかれてかなり疲れた様子でいた。


 一日が経っても疲れがとれなかったのか、いつも弱気なラヴラが更にか弱く見えた。


 そんなラヴラに向かって、俺は言う。


「明日、王都へと向かう」

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