クーベリカの朝
ヴォイヅェルトが10歳になって一月過ぎた辺りでぼんやりと転生の間でのことを夢に何度も見始めた。更に一月立つと知らないハズの記憶を夢に何度も見るようになった。不思議な体験だった。妙に懐かしく悲しく悔しい感情が毎日襲ってきたのだ。だが11歳に近づくにつれて夢の頻度が減っていた。
11歳になる一月前に在り方や才能を占う風習がこのクーベリカ村には、あった。クーベリカ村は、国では、ないが町でもない。そして犯罪者は、寄り付かない。来たとしても悪事を働けば人が人らしく死ぬということも出来ないのだ。この村には、いろいろな人種が住んでいる。クーベリカの朝は、寒い。四季は、あるが常に朝は、寒いのだった。そんな寒い中5人の子供が自主訓練をしていたのだ。ヴォイヅェルトも勿論参加していた。
ヴォイヅェルトは、魔法と大鎌に長けていた。魔法は、全属性適性、想像力、自然との親和性、魔力量、魔素還元力全てが高かった。父も母も魔法に長けていた上に両親の魔法の才能全てをしっかりもらったようだ。
ただし、武術は、平均的で武器に関しては、剣が平均的以外まるでダメだった。魔法使い専用武術、杖闘術すら平均的だった。武器にという武器全て試したかまるでダメ。
そんな中たまたま杖に木の枝が引っ掛かりそのまま振り回して見たらしっくりきたので大鎌にたどり着いた。
それ以来この村ただ1人の大鎌使い(仮)になっていた。
ヴォイヅェルトは、メガネをかけた女の子と剣で打ち合いをしていた。2人とも剣術は、平均的だったのだが毎日模索中も打ち合っていたせいか明らかに平均的では、ない。
「僕もヴォイヅの言ってたみたいにだんだん夢を見なくなってきたよ」
女の子がヴォイヅェルト話し掛けてきた。どうやらヴォイヅェルトと同じく転生者らしい。
「それでクレアは、どう?」
「なんか気持ち悪いしムカつく感じよ。あまり説明したくないし」
「俺も説明してないし内容は、いいよ。感情に訴えかけられるけど他人ごとだし」
「そうなんだよねー。ものすごく胸くそ悪い他人ごと」
「夢の内容は、最初意外なんか違うみたいだな」
「だろうね。ヴォイヅは、Aだったみたいだけど、
僕は、Iだったからね」
2人は、話ながら剣を打ち合うスピードをあげていた。2人とも身体は、かなり動く方だが頭の回転は、大人でも舌を巻くほどだった。
創造神は、チートを作らなかったハズなのにナゼこんな10歳が育ってしまったか……
明らかに遺伝の関係で飲み込みの速さが以上なだけである。
更に転生時のちょっとしたスキルが高い才能を底上げしてしまった事故なのだろう。
クレアと呼ばれた女の子。名をクレアルージュ・バンドリカといい、錬金術師で魔術師の母とドワーフで鍛冶師兼工芸細工職人の父を持つ。父譲りの器用さと母譲りの頭脳を持つ。
「クレア、後でまた魔道具考えよう。そして疲れたから終わりにしよう」
「了解でーす。僕たち頭脳派なのに何で剣術を?」
「今更」
「「「………」」」
他の3人は、ジト目で「俺達よりも強い癖に頭脳派?」と思っていた。怖くて言えないけど。
「やっぱり2人は、学校に行った方がいいよ。強いし。それぞれ魔法と錬金術の天才だし」
一番年上のジェスロが話した。ジェスロは、2つ上で魔人と狼獣人のハーフである
「2人次第じゃないかしら?そこのところは、どうなの?」
2人より1つ年上のアスカができれば通った方がいいという風に話した。アスカは、ダークエルフと猫獣人のハーフで一番背が小さい。
「それよりお腹空いた。一度解散して、後でチビらも集めて勉強なんだな」
このぽっちゃりさんは、デルコである。純粋な猪獣人。猪突猛進じゃない猪獣人で面倒見がよく周りのことをよく考えて行動できる。学校のことは、2人も考えているがあまり言われたくないのをよくわかっているので本音と要求を放り込んでフォローした。
「2人とも、また言って悪かったな。とりあえず一時解散」
ジェスロの合図で解散した。
「「にーに、おかえりー」」
ヴォイヅェルトには、双子の妹がいる。初めて夢を見たとき双子全裸ミケランジェロが出てきて妹ズにビクッとして泣かれたのは、できれば早く忘れたい。
妹達の名前は、フランシスカとプラムシリカである。
「ただいま。フラン。プラム」
2人は、7歳になり少したったので強制的に勉強会参加になる。とはいえブラコンの2人は、クレアルージュに兄を取られないようにすでによく参加している。頭は、いい上に要領もいいのでそれなりでは、ある。が武のセンスがマイナス方向に存在しており壊滅的通り越して誤爆システムそのものだった。そしてヴォイヅェルトの治癒魔法は、上達した。
「ヴォイヅおかえり。ご飯だからきれいにしなさい」
ヴォイヅェルトは、魔法で綺麗にしたあと食卓についた。特に会話は、ない。なぜなら今日は、朝食前の生き血の日である。それを察してかフランシスカとプラムシリカも硬い表情になった。
勿論父のダンヘルドも硬い表情だ吸血族の血が入っているが全員血が苦手である。それでもいざとなった時のために月に一回生き血を飲むのだ。純粋な人間の母ナスタ以外。本日の血は、ウサギである。4人は、血の入ったグラスを持ち覚悟を決めた。
飲み終わった4人は、しばらく放心した。戻ってきたら叫ぶ。
クーベリカ村では、よくある朝の日常である
今回もダンヘルドの叫びは、妻に対する深い愛だった。
クーベリカ村は、今日も平和である。
ちなみに今回、ヴォイヅェルトは、極大殲滅魔法の構想を叫んでしばらく大人達に恐れられることなった。
子供達は、「カッケー」と目をキラキラさせていたがナスタの極大殲滅魔法の話をダンヘルドが流して「ヤバい」と察して子供達の中で極大殲滅魔法の話は、でなくなった。
ナスタの極大殲滅魔法を知る大人達は、ヴォイヅェルトとナスタの間の血の濃さを感じて「効果は、ヤバいがキレイな魔法」と心の中で思った。ナスタは、夫の行動をよく理解しているため怒らなかった。
夫の愛の深さも理解しているため、自分の話で鎮静化を図ったのでなく「息子は、妻に似て天才だ」と自慢したためだ。
度々起こるクーベリカの名物。
話の内容に反して平和な日常である。