和俊side
これは俺が零斗と出会った頃の話だ。
当時俺はまだ小さく、幼少のころからずっと周りには褒められて育ってきたせいだったのだろう。
親は確かに偉かったが、俺は偉かったわけでもないのに親の威光に縋って好き勝手やっていた。
当時はそれをかっこいいとすら思っていたし、特段おかしくもなく当然のことだと思っていた。
子供が親の権力に縋ることなど珍しいことではなかったのだろう。教師はそこまで俺に厳しいあたりはしなかったが、特に俺に対し何か言ってくることもなかった。
所謂放任主義だったのだろう。
その学校には未来を担うとされる子供たちが多く集まる学校だった。
もちろん一般生徒だってたくさんいたが、同じ教室棟などではなかった。
そんな時だったんだ。
俺が零斗と出会ったのは・・・
その時の零斗は特別目立った子供ではなかった。
クラスの中心にいる人間というわけでは無かったが、その頃から運動能力は高かったように思えた。
勉強も確かにできてたが、その頃はまだ小学校の低学年だ。周りに比べて特別にできていると思われることは無かった。今でこそあいつは全国でもトップクラスの学力と言われていて、学校でも有名人物の一人だが、小学生ではそこまで有名になりうる人間ではなかった。
そしてあいつと初めて話したのは偶然だった。
それは当然だ。あいつは一般生徒のクラスにいたんだからな。
元々俺達に接点などは皆無だった。偶然どっかのボンボンが零斗に突っかかっているところに、俺が通りかっかただけだったんだ。
何があったのか気になり、そのボンボンに話を聞いたところ、零斗がボンボンのやつに偶然ぶつかって難癖付けられていたらしかった。まあ、原因はボンボンが廊下を走っていたことらしかったのだが、当時の俺には一般人が謝るのが当然だと思っていたのでおかしいとは思わなかった。
そして俺は何故謝らないのかと聞いた。
するとあいつはこう答えた。
「何か悪いことをしたか?」
そこから、ボンボンとの口論に発展した。
「ぶつかっただろうが!」
「ぶつかってきたのはそっちだ」
「お前が良ければ何も問題なかったんだ!お父様に言ってお前の家族が、この街にいられなくしてやるぞ!お父様は凄いんだぞ!」
「はぁ・・・凄いのはそのお父さんであって、お前に関しては何の権力も持たないただのガキだと。何でお前が威張ってんだ?」
その言葉は俺の心にすとんと落ちてきた。
そのあと零斗のお父さんもかなり大きな会社で高い立場にいる人間だし、お母さんの方もモデルとして物凄く人気のある人だと分かった。
それが分かった後は何となくあいつに付きまとうようになっていき、最終的には幼馴染兼親友という立場に収まった。この後は兄という立場になる可能性もあるな。あとは上司か?
まあ、俺はこうしてドラ息子から周りにも人気のある生徒へとはなったが、心の底から慕える友達を持った。
だからこそ今回は、今までのお礼もかねて、全力で勝ちに行く!