決勝戦③
和俊はβテストの特典の一つで、武器【聖魔剣：イグザシオン】を手に入れた。
この武器の特徴は、魔力を常時纏わせておく事が出来ること。そして、一時的な全攻撃無効、全攻撃貫通だ。この武器の能力ををβでも人前で使った回数は片手の指で数え切れるほどでしかなく、知っているのはパーティメンバーとキートだけだ。
現在戦いで使っている武器の片方は、正式にサービスが始まってから手に入れたものだが、生産職のプレイヤーで一番上手とされている『カト』が作ったもので、そこらで取れる武器とは一線を引く強さだ。
全攻撃貫通とは対象の防御を無視するということで、盾や鎧は簡単に貫けるが、そもそもの問題攻撃が当てられない相手に使っても意味がない。
確かに和俊の剣捌きは普通の人から見れば脅威だ。しかし、その攻撃は見えてさえいれば、はじくことは造作もない。事実、レイズに対して攻撃は一度も当たってないし、先程のキートとの試合でも、一太刀も浴びせることは敵わなかった。
つまるところ、和俊を攻略するのに一番手っ取り早いのが、動体視力を上げる、または、自身のＡＧＴを上げることだ。動体視力が優れていても反応できなければ意味がないので、自身の身体能力の強化は必ずに必要になる。
和俊がレイズに勝つためには、レイズの防御の突破が必要不可欠だ。そこで躓いている時点で、和俊の勝利は絶望的なのだろう。
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レイズは和俊の猛攻を退けながら、和俊の作る隙を覗っていた。
今までの試合でもそうだが和俊は、二回目の剣を振った後に微小ではあるが隙が生じていた。しかし、極稀にその隙よりもより大きな隙が生まれることがあった。
今までの試合ではその隙はそこまで大きなものではなかったが、レイズを相手にしている和俊にとってその隙は致命傷になりえた。和俊にとっても、その隙は殆ど判らないものでしか無かったが、ここに来てその隙の危なさに気づかされることになるだろう。
和俊が大きな隙を作るときには、必ず体の支点がずれていた。
レイズがねらったのは、その中でも最も大きくずれ、失敗すれば一発でお陀仏な、振り上げた直後だった。
