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8.freight train
二人は民家で服と食料を盗み、貨物列車に飛び乗った。
陰鬱な影にやがて朝陽が射し込む。
流れる景色に目をやりながら彼らはしばらく黙っていた。
ライセンスが訊いた。
「ブリウスよ。お前はどこまで行く?」
「うん。ヘヴンズフィールドへ。俺の彼女がいるんだ。クリシアを連れて、どこか遠くへ逃げる」
ライセンスは鉄下駄のような顎を突き出して頷いた。
ブリウスが返す。
「あんたは? どこへ?」
「……あ? ああ、そうだな。俺には身寄りもない。さてどうするかな。その町で、俺も降りることにする」
「二人だと、この先足引っ張らないか? 互いに」
「いや。二人だから互いに知恵も出し合える」
「……そうか」
「ここまでは俺が先導した。ここから先はお前さんに頼む。いいかい?」
盗んだ水筒をブリウスに渡してライセンスは言った。
「ブリウスよ。うまく逃げきろうじゃないか」
「あ、ああ。そうしよう」