4.interrogation
ウォルチタウアー刑務所長はソファに座っていた。
テーブルには葉巻とティーカップ。
ブリウスは冷めた横目で受け流す。
ウォルチタウアーは薄ら笑いで言った。
「座りたまえ。ブリウス・プディング君」
しばらく突っ立っていたがブリウスは開き直って座ることにした。
葉巻に火を着けるウォルチタウアー。
「君もどうかね? 舶来の上物だぞ」
「いえ。結構」
「紅茶でも飲みたまえ」
「いえ。嫌いなんで」
ウォルチタウアーは睨み、舌打ちした。
「どうも態度が悪いな。……まあいい。呼んだのは他でもない。訊きたいことがあってな。ジャック・パインドのことで」
「彼は死んだ」
「知ってるとも。あれは警察側のミスだ。若い命を、殺すことはなかった」
ウォルチタウアーは目頭を押さえ肩を落とす。
その下手な芝居にブリウスは虫酸が走り、顔を背けた。
「ブリウス君、君はあの一連の窃盗で主に運転手をしていたというが金は二人で山分けだったのだろう? それとも他にも仲間がいたのか?」
ブリウスは答えない。
「セントラスト銀行の私の預金で何を買うつもりだった? 高級車か? 豪邸か? ああ?」
ブリウスは顔をしかめて言い返した。
「……あんな汚れた金じゃ何も買えない」
ウォルチタウアーの口が尖った。
「ほぉ! 言ってくれたな! 君は模範囚だと聞いていたが、どうやら違っていたようだ」
「何だってんだ? ジャックのことだろ?」
「……九年前、ジャックは私の使いの男から金を奪った。知ってるはずだ」
「さあ」
「二億ニーゼ。特殊なスーツケースに入っていた」
「知りませんね。ジャックから聞いてたのはあんたの裏の顔は奴隷商人だってこと。それだけだ」
ウォルチタウアーは葉巻の火を揉み消し、立ち上がった。
そして懐に手をやり、拳銃を取り出した。
ブリウスは右肩を撃たれた。
それは野望の渦に追いやる麻酔弾――。